第68話 真理の求道者
トレントの森入り口。
ダンジョンを要塞化するために配置した
ウォールジャイアントの居住区内リビング。
あれ以来王国の攻撃はない。
そういえばギルドの話し合いもどうなったか聞いてないな。
たぶん瘴気のゴタゴタで話が進んでなかったんだろう。
何て事をボーッと考えながらお食事中。
料理はクローンにお任せです。
遺跡や鉱山跡に潜らせていたクローンからの報告を聞こう。
遺跡は聖母龍に仕えた龍人族の遺跡だった。
(ドリさん情報。)
内部はダンジョン化しており
古代の魔道具なんかもバラバラに点在しているみたい。
魔力の大きいレアな魔道具は
ダンジョンの深い層に沈むそうだ。
つまり、深く潜れば
レアな魔道具が手にはいるってことだ。
龍人の魔道具か。楽しみがひとつ増えたね。
早速持ち帰った魔道具をチェック。
指輪系が多いな。
念話の指輪…二つ一組の魔道具。
対なった指輪でそれぞれ身に付けることで
離れた場所でも会話ができるようになる。
癒しの指輪…生命力の回復を助ける(小)
力の指輪…筋力を強化する(小)
透視の指輪…障害物や壁などの向こう側を調べることができる(30cm)
炎の指輪…炎属性の強化、炎耐性(小)
エルフの短剣…風の加護(微小)を受けた短剣。
敏捷が上がり魔法や矢などの攻撃を僅かに逸らす。
ナイトの籠手…剣技が上達する(小)
うん。微妙だ。
普通に考えれば冒険者だったら
喉から手が出るほど欲しい物かもしれない。
微妙だと思うのはクローンがあるからなのだろう。
あっと驚くレアな魔道具を見てみたいって言うか。
全くの興味本意だよね。
役に立つなら冒険者やギルドのみんなや
ジーノさんに譲ってもいい。
あ、ロズ隊長とか、アルさんとか。
そう考えると結構意味はあるかもしれない。
生息する魔物は死霊系で、
ジーノさんの新しい仲間も見つかるかも。
鉱山の方はロックゴーレムや、
アイアンゴーレムが徘徊していた。
こちらもドリさん情報によると
「古代の文明人が採掘に利用していたものだろう」
と言うことだった。
ゴーレムは小人族の秘術を用いて
作られていたようだ。
その場にあるものでゴーレムを作り作業させる。
かなり効率的かもしれない。
小人族は製鉄や鉄工の技術を持たないと言うが、
跡地周辺には高度な技術水準の
崩落した鉄骨の建築物が立ち並んでおり、
ドワーフ族と小人族の共存の様子が窺えた。
その頃は獣人達とも交流があったようで、
ドリさんも多少情報は持っていた。
いずれも、災厄と呼ばれる魔物に滅ぼされたとか。
その災厄も勇者によって滅されたが、
今もガルガドのどこかで魔力を蓄え、
目覚めの時を待っているのだと言う。
そんな凶悪なやつがいるんかい。
「今世界樹攻められたらマズいんじゃない?」
て言ったら。
「ヒトシさんがいるから大丈夫。」
だって。どう思いますか、こう言うのって?
じゃあ聖母龍はいないのかと言うと、
「頂上に居ると言われているけど、
誰も見た者はいない」
と。誰も見たことがないのに
どうしているって分かるんだろう?
なんだか不確かな情報ばっかり。
ドリさんも森から遠くへは行けないし、仕方ないかな。
ずっと昔のことみたいだしね。
なんにしても探索する以外の選択肢はない。
最悪、災厄に遭遇しても
逃げれるように準備はしておかないと。
「そういえば真っ黒な男にあったんですけど、
なにか心当たりはありませんか?」
「真っ黒な男ですか?
ちょっと精霊達に聞いてみますね。」
ドリさんは、目を瞑り
周辺の世界樹の精霊達と念話をしている様子。
「ああ、どうやらトレント周辺で
何度か見かけられていたようです。
ドッペルゲンガーとは少し違うようですね。」
「そうですか、ドッペルに詳しいような口ぶりでしたし、
これ以上ドッペルを取り込むなと言われました。
こちらの動きも知られているようでしたし。」
「関係はあるのかもしれませんね。
でも忠告してくれたのでしょう?」
「本当かどうか。」
ドリさんは真剣な顔になり
「恐らく本当です。
生命力を取り込むと言うこと、
危険だとは考えたことはありませんか?」
「危険、ですか?」
「はい、魔力は取り込みすぎると危険ですよね。
生命力も一緒です。いえ、生命力の方が危険です。」
「拒否反応、ですか?」
「はい。
いきなり他人の生命力を体に取り込むと、
体が異物と判断し排除しようとします。」
「でも勇者を倒したときはなにも…。」
「生命力は実体を司ります。
普段肉体は生命力が溢れていて、
水を吸ったスポンジのような状態です。
多少生命力を失っても、変化はありません。
しかし、スポンジが乾き吸うモノがなくなると
スポンジ自体を吸収し始めます。
つまり、100%吸収してしまうとどうなるか?」
「相手の体ごと取り込んでしまう?」
「そうです。そうなると体に急激な変化がおき、
ショックで死んでしまうでしょう。」
「ドリさん達は大丈夫なの?」
「私たちは徐々に分解して、
吸収するので問題はありません。
しかしヒトシさんは倒したときに
一気に吸収するでしょ?
それが危険なんです。」
(ドリアード様のおっしゃる通りです。
魔力で強化された今の状態ならば
多少の無理は効きますが、
続けていると体に負担がかかり、
いずれ拒否反応が起きます。
我々を通せば問題ありませんが。)
最後にさらっと、すごいこと言ったよ。
クローン使えば解決できるってことじゃん。
つまりスライムスーツで倒して
吸収すればいいんだし。
解決されてますよね?
(その通りですが、万が一のことを考えると
今の状態がベストかと。
お望みならばクローンに生命力吸収のスキルを付けて
100%回収することも可能です。)
それでいいじゃん。
(ですが実体ごと吸収するので、
素材としての回収は不可能になります。)
確かに。
(また生命力が50%を切ると
素材としての品質が低下し始めます。)
じゃあ50%がボーダーラインだったのか。
え、ちょっとまって?
でも、敵倒す時って
生命力を“ゼロ”にしなきゃいけないんだよね。
矛盾してない?
(これは考察なのですが、生命力にも魔力にも
二つの種類あるのではないかと考えております。
生命力は、生命力と経験値、二つの呼び名があります。
経験値の方は基礎、または深層生命力。
体を構成する体の元になる生命力です。
生命力は活力または表層生命力。
その名の通り活動や生命維持によって消費される生命力。
我々が吸収出来るのは深層生命力の方かと考えます。)
確かに、その考え方が府に落ちる。
どちらも根本は生命力だから混同しがちだけど
性質が全く違うんだ。
『≪称号≫「真理の求道者」を獲得しました。』
頭の中に聞き覚えのある声が響いた。
真理の求道者です。




