第63話 サキュバスの誘惑
怒りのダンテをドラゴン肉で買収し、
事なきを得た俺は再び森へと足を踏み入れていた。
ギルマスチョロいなんてコレポチモオモテナイヨー。
まだ“あれ”が残り三体もいると思うと気が気じゃなかった。
あの夜の恐怖はまだ俺を捉えて離さない。
見つけられるより先に見つけ出し、回収してやる。
瘴気の中に潜んでいたか、それとも弾かれて近付けずにいたか。
「そうだ、クローンに生命力を持たせればそっちに食いつくかもしれない。」
クローンばら撒き作戦だ。
接触したクローンが魔力奪われても面白くないから魔力は最小限で。
次々とクローンを生成し最大数近くまでクローンを作り森に溢れさせる。
これじゃ囮にならないな。人海戦術ってやつだ。
ま、見つかればいいか。
クローンも森の加護の影響を受けているのか、動きが機敏だった。
生成したそばから一瞬で森の中に消えていく。
さて、ここで俺が動くのも下策か。
そうだ一ヶ月放置状態だったクローン達の成果を聞こう。
(報告いたします。
スライムの巣、最奥にメタルスライムと同種の金色スライムを発見しました。指示待ちです。
オークの巣、リザードの沼、変化なし。
トレントの森、探索完了。奥地に謎の扉を発見。解析不能です。)
世界樹もドリさんも心当たりがないという。
ダンジョンの主も知らない扉。そんなことってあるの?
後で調べなきゃ。
(ガルガド山麓方面。一つ目、ドラゴンの巣を発見。
二つ目、古代文明のものと見られる遺跡を発見。
三つ目、鉱山跡地を発見。
ガルガド山は探索指示待ちです。)
俺がいなくてもしっかり探索を続けてくれていたようです。
クローン優秀すぎる。俺要らなくね?
(そんなことを言わないでください。マスターあっての我々です。)
なんだかクローンに慰められた。
俺、頑張るよ。マスターとして立派になって見せるよ!
決意表明したところで、あることを思い出した。
銀緑亭とれいちゃん。どうしてるかな?
お腹空かしてるよねきっと。
ドッペル見つけたら連絡してもらうことにして、少し様子を見てこよう。
-銀緑亭、自室-
部屋に戻る。
もう日は落ちて部屋は薄暗かった。
部屋の隅、なにかがうずくまっている。
「…あ、うぅ。……た。」
何か呟いている。
「お…た。」
なんて?
「わかるでしょ?お腹空いたって言ってんの!
魔力が枯れるまで全部吸い付くしてやる!」
「あ、待って、ヒョロちゃん。」
ベッドに押し倒された。
「ヒョロ?誰のせいだ!絶対に許さないんだから!」
とっても元気じゃないですか。
首筋をちゅうちゅう。
「あふぅん。そ、そこはダメ、弱いんだからぁ。」
と、悩ましげな声を出す、
…俺。
ムクリと顔をあげるレイちゃん。
「ごめんなさい、変なこと言いました。」
でも吸血鬼じゃないんだから首を吸うのはやめておくれ。
「お、おいしい!なに、なにこれ!?何でこんなに美味しいの?」
「えと、汚れなき精神を手に入れたからかな?」
「そんなわけないでしょ。」
「あら、ハッキリ言うわね。
フフフ、ならば教えて進ぜよう。
それは、我輩のレベルが上がったからである!
…きっと。
それともドッペル吸収したからかな?」
「はっきりしないわね。」
「色々あったのよ。あふ。だから首筋ちゅうちゅうやめなさい。」
て言うか密着しすぎ。
ベッドの上でこの状態は危険ですぞ。
チュチュッ、ツー。
舌先が首筋を下から上に這う。
アムッ。
あん、耳たぶはダメっ!
レイちゃんは上体を起こし、服を肩からスルリと外す。
ポロンとあらわになる二つの房。
「ヒトシさん、こういうのがいいんでしょ?」
それを上下に揺らしハリのあ曲線をアピールしている。
レイちゃん、俺の生気を吸って、元気になり過ぎて
サキュバスにクラスチェンジしちゃったの?
「さわっても、いいよ。」
前傾になり覆い被さる。
わお迫力の大画面。じゃなかった。
眼前に迫るボリューミーなそれ。
ああ、もう我慢できない。
「なんつって。
お前、誰だ?」
ピクッ。
「レイちゃんはレイスだから触れないぞ。
触れるかどうかは怪しいところはあるけど。
少なくとも俺は触れない。」
言ってて悲しくなってきたな。
「こいつがレイス?はっ、ふざけんじゃないわよ。」
あの、目の前でゆっさゆっささせないで。
小さめの先端のピンク色の目印が、目の前で上下する。
本能的に飛び付いちゃうから。
なんの拷問ですか?
「たかだかレイスに憑くのに私が魔力の半分も使うわけないでしょ。」
幽霊にとりつくとはまた。奇っ怪な。
「さっきから魅惑ばっかりかけてきますけど、
この体はレイちゃんのものなんだよね。
やめて欲しいな。」
腕をつかみ、レイちゃんを回収。
現れたのは、背中にコウモリの羽根を生やし、
小さな角が二本生えた小柄な悪魔だった。
ショートの少しウェーブがかたった黒髪にクリッとしたつり目。
可愛らしい鼻にプリっと赤い唇。
小さめお胸の全裸の小悪魔ちゃんが跨っていた。
「なんともまた、セクシーキュートな悪魔もいたもんだ。」
「う、うるさい。胸が小さい悪魔で悪かったわね!」
「いやいや。そんな引け目に感じることはない。素晴らしいものをお持ちですぞ。」
「そんな手に乗るか!」
「何をおっしゃる。最高のバランスではないですか。
その姿で誘惑されていたら、危なかったかもしれません。」
「ほ、ほんとに?」
「もちろん。もっと自信を持ってください。
それが更に貴女の魅力となるでしょう。
おっと、敵だと言うのについつい博パイ主義者ヒトシが顔を出してしまった。
我が名は博パイ主義の紳士ヒトシ。お見知り置きを。」
「博パイ、主義…?私はもっと自信をもっていいのね?」
「はい、私が保証しましょう。
誰の命令かは分かりませんが、そいつは貴女の魅力を分かっているのですか?
いいや、分かっているはずがない。
貴女の魅力を最大限に引き出せるのは貴女だけだ。
レイちゃんに乗り移って色仕掛けなんて勘違いも甚だしい。
貴女のその魅力的なしぐさは、貴方自身の体で表現しなければ意味がない。
…ふう。少々おしゃべりが過ぎましたな。」
「…私を、あなた様の下僕にして下さい。
ヒトシ様に支配されたいのです。
どうかこの、リフエムをお側に置いて下さい。
そして、ヒトシ様が言う魅力が私にあるならば全て捧げます。」
「リフエムちゃん。」
「はい、ご主人様。何なりとご命令を。
このままご奉仕ですか?」
あ、うん、いや。腰をクイクイしないで。
おいらのベルセルクが半飢餓状態になっちゃうから。
「取り敢えず上から下りてなにか着ようか。」
何故だ、何故こうなった?




