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第61話 黒き狂人

「みーつけた。」


くぐもった低い声。

真っ黒な俺はニヤっと笑った。黒くて見えないけど確実に笑った。


嫌な感じ、以前もこんな事あったかな?いや、思い出当たらない。


手をぬっと伸ばしてくる黒い俺。松明に照らされてもなお闇は照らされる事はない。


避け様に振り払う。

その腕に実体はなく、振り払った腕は空を切った。

闇から伸びた手は霧散し闇に溶ける。そして広がる闇。

松明の明かりすらも飲み込み、辺りは黒い靄で覆われた。


これは覚えがあるぞ。あれだ、魔力漏れの時の。

クローンにダンジョン攻略させたまま寝落ちした時、

クローンから転送されてきた魔力を吸収しきれなくて、

黒い靄に覆われたことが何度かあった。

あのときと同じ感覚だ。


このままじゃ不味いな。


全身に魔力を込め、一気に解き放つ!

白い魔力に吹き飛ばされ、黒い靄が霧散する。


カプリ。


腕に噛みつかれた?!いつの間に…。


「アァハァ、かたいー。かたぁいーー。」


レベルが上がって防御力も上がったみたいで、噛み痕すらつかなかった。


「でも、うまそぅなぁにおぃだぁな~。」


なんだこの喋り方は、普通の喋り方じゃない。狂っている。


「やっと見つけたー探したサガシター。」


俺の放った魔力をクンクンと吸い込みながら息を荒げて興奮状態だ。


「くいたい。くいたいなー。お前を食いたいんだー。」


段々と口が大きく裂けて、耳の下までガバッと広がった。


ヤバイこいつ!


顔面に一撃。ずぼっと頭が消し飛んだ。


カプリ!


痛っ!くはないか。でもさっきよりも強力になってる。


「うまいー!あぁーあぁんぁーうまいー!」


なんだ?ダメージは無いはずだけど。傷も無いし。

…魔力を食われたか?


「こいあじー、のーこー、あひゃ。」


何なんだホントこいつ。手応えも無いし。

気持ち悪いからさっさと倒してしまいたいのに、どうにもできない。

多分こいつは俺の魔力体だ。魔力漏れの時にできたんだ。

魔力に効くモノと言えば、聖剣か?

ドザエもん、聖剣だ!

あれ、返事が無い。え?


「うまいぞー。この変なのもうまい。」


俺の後ろでは、何もないところをパクパクと咀嚼しては、

食い千切るかのような仕草をしながら口が動いていた。

まるで何かを貪ってようだった。


ドザエもんが食われた?不在付けて見えないはずなのに?


「でもー、やっぱりなー、お前がくいたいなー。」


頭のてっぺんから縦にヒビか入り、ミチミチと言う音を立てながら首の辺りまで裂け広がった。


「食いーだぃ、コヒュ。あやぐぅー。カヒュ。」


これ口か?どんどん大きくヤバくなってる。

このままだといずれ食われる?

いや、あの体はフェイクだったか。

すでに、飲み込まれている…。

足元からは黒い泥が沸きだし、一瞬にして俺を飲み込んだ。

暗闇で息も出来ない、魔力も吸われているようだ。

しかし薄れ行く意識の中、俺は右手を包む優しく広がるものを感じていた。


暗闇の中、俺は覚醒と気絶を繰り返していた。

一体どれくらいの時が経ったのか。一時間か。それとも一年か。それとも…。すでに…。

体は動かず、苦痛ばかりが続く。気が狂いそうだった。


それからさらにどれくらいの時間が経ったのか。


どこからか、声がする?


『…ヒトシさん!』

『ヒ、ヒトシさん!』

『おにいちゃん』

『ヒトシ!目を覚ませ!』


声がする。暖かい声だ。元気が出る。

手のひらだ、手のひらにいつの間にか木の実が握られていた。

癒しの力を感じる。ドリさんたちだ。

『良かった。遅くなってごめんなさい。』


『うん。でもどうやって?』


『ヒトシさんにあげた加護がやっとヒトシさんの中で芽を出したの。

 これでドッペルゲンガーの吸収を阻害できるわ。

 吸収なら私たちも得意だもの。』


『そうか植物だもんね。』


ドッペルゲンガー。あの黒い俺か。俺はあいつに飲み込まれたんだ。


『あれは純粋な魔力の塊にヒトシさんの生命力が僅かに混ざる事で

 自我を持ってしまったのね。

 だからヒトシさんの体と生命力を渇望するの。

 すべて奪って、成り代わるつもりです。』


『そういうことか。ほとんど実体を持たない魔力体だから本当の体が欲しいんだ。』


『そういうことです。』


『だけど何で今さら。』


『ヒトシさんレベルアップして生命力が上がりましたよね。

 だからそれに反応したのかもしれません。』


『美味しそうな匂いを嗅ぎつけてやってきたわけか。

 でも目を覚ましたのはいいけどこのままじゃ外に出れない。』


『すいません。私たちが出来るのは魔力の吸収を阻害することだけ。

 そっからはヒトシさんの力で何とか出て来てもらわなければなりません。』


『わかったよ、考えてみる。魔力体。俺から漏れた魔力。

 俺と同じ姿。これってクローンに似てない?』


てことは、…回収。


手のひらから魔力が流れ込んでくる。

クローンフィードバックでステータスが大幅にアップしてるから魔臓はほぼ底なし。

無尽蔵に魔力を吸える。それにしてもこいつ、俺からどれだけ魔力吸ったんだよ。


(一ヶ月で約5億です。)


ん、一ヶ月?


(一ヶ月捕らわれていました。)


マジか。よく生きてたな。


(我々クローンがマスターに魔力を供給し続けて生命力の吸収を阻害していました。)


そうなの。何て優秀なクローン達。


(お褒めに預かり光栄です。)


あれ、クローンてこんなにしゃべるっけ?


(自立思考のLvアップに伴うものかと。)


そうなんだ、凄い知性を感じるよ。


と、あとどのくらいで吸い尽くせる?


あと十秒ほどです。…5、4、3、2、1。

視界が開かれる。


終わったのか?


辺りを見渡すと、森は枯れていた。

クローン情報によると、トレントの森付近まで瘴気が及んだようだ。

さらには王都からもその様子が窺えたと。


樹霊術。


ドッペルゲンガーから回収した魔力を大地に大量に注入する。

森にみるみる生気が戻る。


樹霊術が使えてよかったよ。ドリさん達にも助けられたし。感謝感謝だね。


あれ、あそこに何か転がってる。黒く光る結晶、宝石?

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