第51話 聖剣の勇者
俺はダンテさんの手紙を届けるため、兎人族の村へ向かう事にした。
ダンテさんの考えは兎人族の族長に会い、兎人族の置かれている状況を理解してもらい、
兎人族の悪用を食い止めることにある。
恐らく兎人族にとって掟と言うものは絶対だ。
純粋で、人の事を素直に信じてしまう彼らでも、掟だけは絶対に破らない。
自分たちの命を守る為、先人たちから受け継がれてきた大切なものなのかもしれない。
そこにダンテさんは目を付けたんだ。
兎人族の今の状況を憂い、悪事に利用されることを防ぐ為の項目を書き加えてもらうつもりなんだろう。
俺はその大事な手紙を預かり兎人族の村へ向かう。
タルトは、「自分は連れていけません」と申し訳なさそうにしていた。
でも、俺には森の加護がある。
ドリさんに教えてもらった通り、世界樹の気配を辿って行けば着けるし、
大体の場所も教えてもらってるから問題ない。
そう伝えると、タルトは驚いていたけど、付いて行くと言ってくれた。
ギルドを出てそのまま町の外へ向かう。
相変わらずスラムの建設ラッシュは続いている。
スラムの様子を見ながら、森を目指す。
スラムを抜け、森に入ると人気の無さそうな茂みを探す。
さてさて、ドザエもんの「どこでも窓」で一気にトレントの森まで行きますか。
「貴様、ヒトシだな。」
呼び止められた。
金髪の逆立った髪の毛に、キリっとした眉毛と青い瞳のイケメンだ。
装備は白で統一されていて、筋の装飾が施されていた。
そして何より目を引くのが、その手に握られた光り輝くスッと真っ直ぐ伸びた刀身の両手剣。
「俺は聖剣の勇者、アーク。」
来た、来ましたよ!モノホンの勇者来ましたよ!
しかも聖剣もちですよ。もしかして、幸運なんてスキルも持ってますか?
「なぜ、黙っている?
貴様はヒトシかと聞いているんだ!」
なんだかご立腹の様子。ボク何かしましたっけ?
「イイエ、チガイマス。ヤダナー、コワイナー。」
「ウソをつくな!国王の密命だ、貴様を討伐する!」
今度は大臣じゃなくて国王かよ。
しかも密命でしょ。言っちゃダメ!
勇者は構えると一瞬の間もなく切り掛かってきた。
不味い。
必死でバックステップするが、ダメだ肩を切られた!
タルトの件で分かったことだけど、ステータスの割に防御力が圧倒的に低い。
タルトは?ダメだ早すぎて反応できてない。
今までの余裕が一気に焦りに。
初めて直面した死の恐怖に足が震える。腰に力が入らない。
顎がガクガク震え出し、体が思うように動かない。
不味い、不味い。
本能が生命の危機だと警鐘を鳴らし続ける。
働け俺の頭。動け!動け!
周りの景色が徐々にゆっくりになり始める。そして最後に止まった。
いや、ゆっくりと流れている。高速思考が発動した。
恐る恐る勇者を見る。
俺は無意識に右手を突き出していたようだ。
そして右手からは魔力の波動が白く鋭く突き出て、勇者の胸を貫いていた。
しかし聖剣は振り下ろされる途中だ。止まっているかのような聖剣を振り払い、
ゆっくり流れていた時が動き出す。
聖剣は吹き飛び、勇者は血を吐きそのまま息絶えた。
波動は消え、勇者の胸には大穴が開いていた。
力なく膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れた。
返り血が滴っている。生暖かい。そんなことをぼんやりと考えながら立ち尽くす。
勇者、さっきまで生きてたんだよな。本当にもう動かないのかな。
違う、早く生き返らせなきゃ。
早く!アサシン!
蘇生魔法が発動し、胸の穴はみるみる塞がる。
「ゴポッ!ゲホっゲホっ!」
帰還に詰まっていた血を吐き出し、目を覚ます勇者。
「よかった。」
「ひっ?生きてる…あれ、夢?
胸を触ると、鎧には大穴が開き血が滴っていた。
夢じゃない。…何をした?俺に何をしやがった?!
化け物が!いや、白い悪魔!
聖剣なんて通じやしない。これが悪魔の強さなのか?
こんなの敵う訳ないじゃないか。助けて!殺さないでくれ!」
勇者の顔が恐怖に染まる。
勇者は腰が抜けてしまったのか、四つん這いになり必死の様子で逃げて行った。
「ふぅ。何とか無事生き返らせることが出来た。」
けど、可哀相なことをしたな。勇者って言うくらいなんだから、
きっとみんなに期待されて悪と戦ってきたんだろうな。
これに挫けず頑張ってくれるといいな。
肩の傷は白い魔力で覆われ既に血は止まっていた。
そして徐々に肌色の皮膚が再生し、傷跡を覆い始めていた。
『レベルアップしました。』
久々の謎の声。いや、少し違うか。違いの分かる男ヒトシ。
けどそんな事はどうでもいい。レベルアップ?今更?
ステータス
Lv.49
49?
その下に
魔力Lv.2411
????
レベルが二つ…。
元々のレベルに魔力の文字が付いたのか。
しかもステータスが格段に上がってる。これがいきなりステータスが上がる成長点ってやつ?
「タルト。」
いまだに訳が分からず固まっているタルト。
「タルト、君のレベルを教えて?」
「あ、はい。僕のレベルは28です。」
「じゃあ、魔力レベルは?」
「へ、魔力、レベル?魔力レベルは、すいません聞いたことがありません。」
聞いたことがない?どういう事?魔力レベルは存在しない?
じゃあ、俺のこれは…。クローンスキル特有のもの?
いや、この魔力レベルって言うのが、皆の言う成長点ってやつなのか?
そうだ、俺は今まで本体で敵を倒したことがない。
これが初勝利。そしてこれが普通のレベルアップなんじゃないか?
基本ステータス
Lv.49
経験値 589,651/600,000
魔力Lv.2411
総魔力 602,800,000/603,320,000
各ステータス 72,330 → 3,544,170
49倍だ。基本成長値(30)×レベル×魔力レベル。てことか。
基本ステータスは300万越え。
なんだこれ。
大して強くなった気はしないんだけど。強くなってるのかな?
確かに体に力が馴染んでくる感覚はある。
今までスカスカだったスポンジが水をぐんぐん吸って中身が詰まっていく感じか。
軽いジャブを打ってみる。
ボッ!っと音を出し、空を切る左腕。
うん、確かに強くなってる。
今度は強く踏み込み腰の入った渾身の右ストレート。
どこまでも力が込められていくのが分かる。
バン!と言う破裂音。
音速は超えたな。
ふぅ、太陽が眩しいぜ。もう昼近くか?森の中にまで日差しが降り注いでいる。
勇者との戦いでそんなに時間が経っていたのか。
それにしてもやけに景色が開けてる。見晴らしがいいな。
「あ、俺か。」
俺は森を消し飛ばすほどの右ストレートを手に入れましたよ。
[レベルアップによる生命力の上昇により、
クローンのスキルレベル上限が解放されました。
それに伴い各種派生スキルのレベル上限も解放されました。
上限レベル 10→ 12]
どうりで最近全然クローンレベルが上がらないと思ってた。
レベルが上がったことでスキルレベルの上限も上がったみたいです。
めでたし、めでたし。
スキルクローン Lv.10 200,000(4000)
派生スキル
自立思考 LV.10
思考加速 Lv.10
魔力転送 Lv.10 10,000/秒
増殖 Lv.8 100体まで
ジョブ Lv.10
スキル Lv.10
統率 Lv.10 生成数50倍クローンステータス500%
加護 Lv.4 クローンステータス200%
魔力回路 Lv.3 本体へのステータスフィードバック3%




