第5話 クローン情報共有始めました
魔力容量に余裕があるやつを殿にして、撤退を開始する。
機動力のあるスライムだけを相手にしながら、一気に撤退。
これ以上はクローンレベルを上げて数を増やさないと、魔力が溢れて無駄になってしまう。
ここは異世界。この先何が待っているかわからないのだから、
少しの魔力も無駄にはできないのだ。
クローンのスキルLvアップ条件は、いまいち分からないけど、
合流した時に上がってることは間違いないから、おそらくは合流した時の魔力量かなんかだろう。
とりあえず何回か合流してみて様子を見よう。
そっからまた生成しなおせば、クローンのステータスの底上げもできるし。
吸収された魔力は、最大値を一時的に超えるけど、その後は最大値まで徐々に減少を始める。
先に魔力の多い奴を回収してしまうと、今の俺の最大魔力値だと魔力が溢れて無駄になってしまう。
貯蔵量の少ない順に一列に並ばせて俺がレベルアップして最大魔力値を上げてから貯蔵量の多いやつを回収だ。
俺の前に一列に並ぶ白い俺(無表情)
…なかなかシュールですぞ。
世間話でもしててくれればいいのにね。
ぼーっとしてる間に最大値を超えた魔力が徐々に減っていく。
魔力がもったいないので、手早く合流と生成を繰り返し、
3体目を吸収した時、クローンのスキルレベルが上がった。
声『スキル<クローン>のレベルが上がりました Lv.5
最大生成数 20 →50
魔力回収率 90%→95%
最大魔力 25%→25%
操作性 80%→100%
「結構な数になったな…。」
でも、50体も管理できるんだろうか?
クローンたちは勝手に連携というか、
手分けして洞窟内を探索してるみたいだけど。
全然無駄がないんだよな。
情報も共有してるみたいだし。
そう考えると本体の俺だけ仲間はずれみたいになってない?
声『……。
クローンと思考をリンクさせますか?』
今の一瞬の沈黙はなんだったんだろうか?
感情は籠っていないはずなのに、
「やれやれ」とか「はぁ」とか聞こえてきた気がする。
わかってますよ。
あれでしょ?
チュートリアルを途中で中断して、
スライム退治に出かけたから。
「これだから」とか「子供じゃないんだから」とか
思ってるよね絶対。
確かにクローンが複数になるなんて思わなかったし、
その時の扱い方も聞いてなかったよ。
すいませんね。とりあえずリンクお願いしますよ。
バツっ!!!
「ぐあぅ!」
思わず一瞬でリンクを切った。
なんだこれ?こんなの人間に使える能力じゃない!
20体分の情報量。
それが一気に脳内に流れ込んできて頭がショートしそうだった。
……こんな途轍もない負荷に耐えられるわけない。
一瞬の判断でリンクを切らなきゃぶっ倒れるところだった。
これ、わかっててやったよね謎の声さん?
おそらく3体になった時点で試してれば、
そう問題はなかったはずだ。
例えるなら右手と左手で違う文字を文字を同時に書いたときのあるある。
「あれ?同じ動きになっちゃった」
程度で済んだはず。
意趣返しですか?
意外といい性格してますね…。
でもクローン同士では平気でリンクしてそうなんだよな。
クローンはこの膨大な情報量をどうやって処理してるんだろう。
俺より優秀な思考回路を持っているのだろうか。
自立思考レベル1にして俺より優秀なのだろうか……。
声『クローン同士は単純な思考しか持っていないため、
マッピング機能や、敵の位置情報のみを共有しています。
管理者はそれ以外にもすべての情報を統括、閲覧できます。』
確かにクローンを操作した時は、
マッピング以外の情報は入ってきてなかった。
だからわざわざほかのクローンに意識を移して、
魔力量を確認してからレベルアップさせたんだ。
そういうことなら、全体的には必要な情報だけ取り出して、
(マッピングとか敵の位置情報とかクローン同士の連携とか)
あとは個別にアクセスして詳細を見ればいいってことか。
声『派生スキル<思考加速Lv.1>が発現しました。
クローンとリンクしたことにより、
クローンの自立思考の未使用部分の
使用が可能となりました。
本体の情報処理能力の補助を行うことによって、
高速思考を可能にします。
思考加速はクローンの数に比例して能力が上昇します。
なお、自立思考のレベル上昇に連動し、
思考加速もレベルが上昇しさらなる高速思考が可能となります。』
凄いのきたね。
でも、本当はクローン複数体作れるようになった時点で、
手に入れるスキルだよね、きっと。
隠してたよね、絶対隠してたよね?
それっていいの?有りなの?「運営に報告しました」するよ?!
反応なしですか?!
それともあなたが運営側ですか?
まあいいか…
でもこで、さっきクローンの情報処理出来るんじゃ?
バツっ!!!
無理でした。
さすがにね、いきなりは無理さ。レベル1だしね。
でも今の感覚だと4,5体はいけるかな。
思考加速して、頭の良くなった俺には分かる。
この思考がアホっぽいけど…。
―――――――いけた…。
少し不安定だけどもなんとなく5体の動きが理解できる。
そうか。何チームかに分けて、
それぞれまとまった行動をとらせれれば、
50体でも100体でも管理することができそうだ。
こんな有用なスキルを隠してるなんて。
むしろ、このスキルがなかったら管理なんてできないし。
ていうか、俺が気付かなかったらもっと困った状況の時に、
「ふふんっ!どやっ!」
て感じで出す気だったろ。
声『………。』
だんまりですね、ということは図星と判断しますけど?
それでかまいませんね?
声『スキル<自立思考>がLv.2に上昇しました』
「はい~、いつもとスキルレベルアップのアナウンスが違う~!
動揺してる~。俺の勝ち~。」
声『……スキル<思考加速>のレベルがあがりましたLv.2』
「説明お願いしま~す。」
声『複数の命令を同時に実行可能になりました。
行動が矛盾する命令は無効です。
また、統率者を指定してグループ管理を行えるようになります。』
ほらきた、やっぱりチーム分けして管理する便利なスキルじゃないですか。
とりあえずどれくらい同時に行けるかな?
俺は意識を集中する。
試してみたところ10体までは行けそう。
クローンが50体になれば、比例して20体近くはいけるかも。
それだけ一気に思考速度が上がったということか。
これならクイズ大会とかでバンバン問題解けそう。
…それは知識が伴ってなきゃ無理か。
とりあえず3体ずつのチームにして、魔力の管理なんかをリーダーに任せよう。
レベルアップとか魔力の転送とか撤退とか。
そこらへんも各自の判断でできるように命令を組もう。
組織図を頭にイメージして各チームの情報を表示。
よしよし、これでぐっと管理しやすくなった。
さて、各自出発。
「じゃんじゃん魔力を集めてくれたまえ!」
とりあえず、合流することでスキルレベルが上がるみたいだから、
魔力転送は一時中断して、魔力がたまったら撤退して合流することにした。
ん、なんだか脳を酷使したせいか、意識が朦朧としてきた…。
まずい、このままじゃ無防備なまま放置されてしまう…。
バリアが張られているとはいえ、
どれほどの強度があるのか試したわけじゃない。
もしかしたら申し訳程度のものかもしれないし。
3体だけ見張りように残して………。
そこで意識は途切れた。