第46話 悪意への報い
「あの兎人、本当に殺ったのか?」
「はい、確認しましたが間違いなく死んでいます。
頸動脈をスッパリですよ。」
男たちが見下ろしながら死体について話している。
扉が開きさらに数名の男が入ってくる。
「おお、もう来たのか。早かったなガザニ。」
「暗殺に成功したと聞いたら、そりゃ飛んでくるわ。ちゃんと解析は掛けたのか?」
ガザニと呼ばれた男が聞いた。
「はい、間違いなく死亡状態です。」
「ふひ、ふひひ。大臣でも殺せなかった悪魔を葬ってやったわ。
やはり兎人族の暗殺術は特殊だった。
俺の考え方は間違ってなかった。」
「ああ、まさか本当に始末してしまうとはな。だが、探すのには苦労したぞ。
誰も情報を漏らさぬのだからな。しらみ潰しに王都の中を探し回ったわい。
だが、これで大臣の事を出し抜くことが出来たな。」
「ふひ、奴が仕留め損ない、発言力を落としている今が立場を逆転する好機。
今まで散々好き放題されてきた借りをかえせるわ。」
そうだこの気持ち悪い笑い方のガザニと呼ばれた太った男。
どこかで見たことがあると思ったが、初めて大臣との謁見の時、
俺の前に大臣と謁見して、真っ赤な顔で起こって帰って行った奴だ。
商人ギルドのギルドマスターだったんだな。
話から察するに、大臣とはお互いに利用し合う関係だったみたいだな。
「それで、大臣には連絡してあるのか?」
「ああ、あと半時もすれば来るであろう。
これならあのダンテの馬鹿者も葬れるのではないか?」
「ふひひ、良いことを考えるな。
まだその兎人は押さえてあるのだろう?
こいつの死が知れ渡る前に差し向けるか。」
「ああ、ワシも早い方がいいと考えていた。
ついでに大臣も…。」
「あひ、おいおい、さすがにそれは気が早いぞ。
あれはまだ利用できるからな。」
「おっとそうだな、つい逸ってしまったのう。
老い先短い身なのでな、悠長にしていたらワシの方に死神が先に迎えに来てしまう。
だが、これで国の中枢に食い込む切っ掛けが出来たかもしれん。」
「ふひ、恐ろしい奴だ。俺は遠慮しておく。
貴族様のお堅くて、高慢な社会には興味がないのでな。」
「お前は金にしか興味がないのか?」
「馬鹿を言うな、金の力で動かせんものはない。
金の力を使って好き放題するのがいいんだ。
ただの金の亡者と一緒にするな。」
「何が違うのか。ま、ワシの知るところではない。
いずれ傲慢大臣と組むよりも、ワシがいい目を見せてやるぞ。」
「ふひ、楽しみにしていますよ。お大臣。
入り用の時は是非このガザニめをご指名くださいませ。」
うわぁ、二人とも悪そうな顔してるなぁ。
その時、大きな音を立てて扉が開いた。
「どういう事だ、ガザニ、バンザ説明せんか!」
大臣が来た。
「おやおや、大臣騒がしいですぞ。」
「各方面への言い訳行脚はお済みになられたのですかな?」
嫌味な言い方。いや、3人とも似た者同士か。
「ほう、貴様ら。その発言の意味を分かって言っているのか?
まあいい、そんな事よりヒトシだ。この生意気なガキめ。
やりたい放題にしよって。ワシがどんな目に合っているか。
だがこうもあっさりくたばるとはな、ワシが本気を出すまでもなかったか。
で、どうやった?」
「それは、なあガザニよ?」
「ん、ふひ。ああ。」
「どいつもこいつも、ワシを下に見よって。まだワシは終わっておらぬぞ。
ワシの噂を知らぬわけではあるまい。」
噂、大臣って何かヤバいことやってるの?
「だがヒトシを捕えられなかったのは事実。」
「捕えるのと殺すのでは訳が違うのだよ。奴らは殺し専門だ。」
噂とは大臣お抱えの暗殺者集団のことようだ。
「それならばなぜ使わずにむざむざ逃がした。」
「あれはワシの切り札だ。王城内でおいそれと姿を見せるわけにはいかぬ。
まあ、ここまでされて黙っている気はないがの。
それともお前たちが先か?」
こいつ、もうなり振り構ってられない感じだな。自棄になってるんじゃないか?
「今、この瞬間、お前らの命などワシの掌の上よ。」
「ま、まあまあ、大臣殿。これがヒトシの死体ですぞ。
仕留めた我々をまずは褒めてやって頂きたい。」
「ふん、すぐに手のひらを返しおって。話をそらそうとしても無駄だ。
まあ、貴様らなどいつでもどうとでも出来る。
まずはこいつだ。」
大臣が覗き込む。
「ふん、確かに奴だ。おい、入って来い。」
ボロのローブを目深に被った白髪に白い髭を蓄えた男が入ってくる。
「やれ。」
「…。」
「大臣こ奴は?何をする気です?」
「生き返らせるのだ。アンデッドとしてな。
そしてこいつの能力と情報をすべて手に入れる。」
「し、死霊術士?!そやつは国の禁忌、さすがの国王も黙っておられませんぞ。」
「国王?この力を手に入れれば国を手に入れるなど造作もないことだ。」
ムクりと起き上がる死体。
「おお、これで白い悪魔はワシのモノだ!はは、なんと造作もない。」
「恐ろしいお方だ。」
「そこにワシらの功績ありですぞ。」
起き上がる姿に生気は無く、ただ虚空を見つめ…
ガブリ。
死霊術士に噛みつく。
首を食い千切られた死霊術士は既に絶命していた。
「な、何じゃと!お、おい誰か、大臣!何をしているあいつを止めろ!
いやだ、こっちに来るな。やめてくれ、誰か、誰か、助けて!」
錬金ギルドマスターバンザが泣叫ぶ。そこに錬金術師の長の威厳はない。
生きる屍に頭蓋を食い破られそのまま倒れる。
びくびくと痙攣し続け。やがて動かなくなった。
「おい、バンザ!バンザ?!そんな…。やめろ!こっちじゃない!待て!待て!」
商人の長の肥えた腹が切り裂かれる。
「うぁぁ、頼む、助けてくれ!」
激痛に耐えながら必死に逃げ惑う商人ギルドのマスター。
金をかけて肥え太らせた体を守るのに一生懸命だ。
「おのれ、こういう事だったか。おい、片付けろ。」
ぬるりと現れた暗殺者。
「どうした、早く始末しろ。」
反応がない。腹の真ん中に穴が空き、そこから向こうの景色が覗き見える。
「それなのに…、なぜ動いている。
いつの間に、いつの間にやられた?!
そんな、ワシの最強の切り札が!」
「さあ、お前もアンデッドにしてやる。」
「お前か!すべてはお前の仕業か!おのれ!おのれ―!」
「貴様にも不死を与えてやろう。喰らわれろ!
足から順番にだ。腕、腰、腹、心臓、最後に、頭だ。
死にたいほどの苦痛を味わいながら、頭を食われるまで死ねない苦痛に狂気の叫びを上げろ。
それでも、貴様の愚行は許されるものではない。再び蘇り同じ苦痛を三度味わえ!」
以上。幻覚でした。
クローン
ジョブ アンデッド
スキル 幻覚…幻覚を見せる・色彩偽装(クローンは白い為)
改竄…状態を死亡に偽装




