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第44話 ギルドマスターの本分

俺たちは王城から驚くほどあっさりと返された。

まるで腫物でも触るかのように、丁寧に。


「冒険者ギルドと国はいつもこんなもんだ。

 ギルドマスターはよっぽど交渉が上手い奴以外は、

 名の知れた元Sクラス冒険者がほとんどだ。

 それくらいじゃないと、今回みたいな危機は乗り越えられない。」


ギルドマスターはみんな命を賭けて冒険者の事を守っているんだ。

またドラゴン狩ったらお肉届けてあげよう。


「国からの通告の件もあるからな、さっき言ったように、

 暫くは本部から来たギルドマスター代行が業務を引き継ぐ。

 ヒトシのやったダンジョン奪還なんてのは、前代未聞だからな。

 本部でも俺を交えて話し合いをしなくちゃならないだろう。」


「実は、まだ言ってないことが…。」


「なんだ、それはこちら側にとって有利になるものか?」


「有利になるかどうかはわからないんですけど、

 俺、オークとリザードのダンジョン攻略済みです。」


「…。お前な、そういう大事なことは早く言え!

 これでクローンの有用性が証明できる。

 それも含めて交渉材料になるぞ。

 悪いようにはしない。任せておけ。」


「それからオークダンジョンのマスターです。

 正確には現在はオーククイーンのクローンがダンジョンマスターになります。」


「…またかよ。これは、人には言えない情報だ。

 人がダンジョンマスターになったなんて話は聞いたことがない。」


本当に頼りになる。

俺が出した情報の良と悪を判断してもらえるのは異世界を良く知らない俺にとっては本当に助かる。


さすが、ギルドマスター

 

 


-ギルド長室-

「と、いう事である程度の方針は決まったな。」


クローンの有用性。

ダンジョンの攻略情報。

クローンによる討伐の補助。

オークとリザードとトレントの素材の譲渡。

アイアントレントの譲渡。加工の無料化。


これらを交渉材料に、


各ダンジョンの討伐の占有権。

オーク肉の権利。

スライムダンジョンの権利。

トレントの森の管理権。


これらの権利を主張することにした。


「これで国も納得するだろう。いや、させてみせる。

 ダンジョン攻略者による素材入手の補助、

 さらには稀少素材のアイアントレントの譲渡から加工まで無償でやるんだ。

 それによって、国内の経済が発展し、交易も盛んになり国力が増す。

 国にはメリットしかない話だからな。

 ドリアードと、世界樹の権利は欲しがるかもしれないが。

 そこが俺の腕の見せ所ってやつだな。」


「一番大事なのがドリアードと、世界樹の保護なんで、

 それだけでもいいのでよろしくおねがいします。」


「わかった。つくづく欲のないお人好しな男だな。

 それを守れないようなら俺はギルドマスターを辞める覚悟だ。」


うん、やっぱりダンテさんは最高のギルドマスターだ。


「よし、そうと決まったらおれは書類作成なんかと、

 クローンによる利益の概算を出さなくちゃならない。

 もう少しクローンの情報が欲しいが、出来る範囲でいい。後で情報提供を頼む。

 とにかく、今日はもう帰れ。相当疲れた顔をしているぞ。」


「はい、なんだか簡単には行かないことばかりで。

 とりあえず今日は何も考えずに。休みます。

 申し訳ないですが、宜しくお願いします。」


俺はギルドを後にして銀緑亭に宿を取ることにした。


面倒なことばっかりでストレスがたまる。後でドレイクさんのとこに遊びに行こうかな。


銀緑亭に向かって歩いていると、何かが飛んでくる気配。

頭を右に傾けると何かが左耳を掠めた。

ズッと、擦れる音、耳の先端が切り飛ばされた。


「いつっ!」


激痛が走る!耳を押さえる。


躱しきれなかった。痛い…。あーめっちゃ血出てる…。

投げナイフか?防げなかった。


防御力だって上がってるし、クローンの防御膜だって張ってある。

まぁ、どれほどのもんかは試したことないからわかんないんだけど。

投げナイフなんかで簡単にダメージ受けちゃったよ。

不意打ちとはいえ、早すぎて躱しきれなかったし。


血は止まった。よし、とりあえず捕まえるか。


吹っ飛んだ耳の先はすでに再生していた。森の加護のお陰か。


ふっと姿を消す。巻き上がる土煙。ステータスにものを言わせた高速移動。

アサシンに索敵させて居場所は分かっている。反応のあった場所へ。


いない、逃げられたか?いや、まだ反応はある。


アサシンのスキル看破。


見えた。ここらへんか?俺からは認識できないけど、あ、何か掴んだ。


ミチミチと音を立てて何かを引っ張る。血が流れ出し、ブチっ、と嫌な音。


「ウサ耳?」


俺の手には血で染まったウサ耳が握られていた。

そして、うめき声とともに激痛に顔をしかめたウサギちゃんが取れた片耳を押さえて蹲っていた。


これは、ハウリ…。いや、兎人族。


一瞬、心の奥に封印していた記憶とジョブが解き放たれようとしている。


ダメだ!…ふぅ、ふぅ。危なかった。精神的ダメージを抱えてこっちが戦闘不能になるところだ。


ふぅ。一息。気を取り直して、姿を現した兎人族を見る。

茶髪で腰まである長い髪。目が大きくて整った顔立ち。

まるでアニメのキャラクターが飛び出してきたみたい。

兎人族はこんな美女ばかりなのだろうか。そうだとしたらそこはパラダイスに違いない。

はぁ、でも初めての獣人族が俺に向けられた刺客だなんて、これも運命なのかしら。

とても楽しみにしていただけに、とても残念だ。

いや、期待以上に美形だったから良いと言えば良いんだけど。


「誰に頼まれた?」


「…。」


うん、喋る訳ないよね。そんなに簡単にしゃべってたら話すぐ終わっちゃうもの。


「…錬金ギルドです。」


うん、喋っちゃったね。特に脅すわけでもなく。さらっと言っちゃったね。

あなた、仕事に誇りを持って。誇り高きハウリ…。兎人族よ。


あれ、今の声。低めの声だった。男?

てことはこの子は男の娘ってやつ?

いや、別に男の娘ではない。


それにしてもあっさり雇い主の名前を吐くなんて。軍曹が黙ってませんよ。

アビス的な。深淵の者が来ちゃいますよ。

必滅の…これからはそう呼んでくだせぇ。

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