第41話 明るい笑顔
さてと、情報漏えいの方は片が付いたし。
次は大臣か。
とりあえず謁見の許可を取りましょうか。
取らなくても、一度執務室までは行ってるから。移転でどうとでもできるんだけどね。
でも大臣を追い込むにはまだ証拠が足りないし、いくらでも白を切り通せる。
懲らしめるだけなら簡単なんだけど、ちゃんと失脚してもらわないと、
後からまた報復でも考えられたら困る。ちゃんと根から絶やさないとね。
なんか最近考えがダークな方に向いている気がする。
暗黒面に落ちてしまったかな。フフフ、何せ、白い悪魔ですからね。
奴らにとって本当の悪魔になってやるのも良いかなと。
ダンテさんにお願いして、ギルドマスターとして正式に謁見したい。
まあ、会ってくれないようだったらもう移転で、ね。
-冒険者ギルド長室-
「…いいぞ、いいぞ。そこ、すごくいい。なんてお前たちは可愛いんだ。俺のマイハニー」
俺の、マイ、ハニー?文章おかしいですよ。
「ダンテさん」
「…なんだ。」
また筋を愛で、肉と語らってたんですね。
「ダンテさん、俺、大臣と謁見したいんですけど。」
ダンテさんのポージングを完全に無視して話を進める。
無表情でゆっくりとポージングを解いてゆくダンテさん。
「…うむ、その件についてだが、謁見の要請をさっき出したところだ。
おそらく明日には許可が下りるだろうから、また明日出直してきてくれ。」
「やっぱりダンテさん。伊達にギルドマスターしてないですね。」
「お世辞はいい。それより、さっき連絡があったんだが。
オークとリザードのダンジョンに白い悪魔が出たそうなんだが。
心当たりはないか?」
「はて、何のことでしょうか?」
とりあえず、とぼけてみる。
「しかも今度は、本当に悪魔の姿をしていたそうだ。
リザードの方は見たこともない魔物と言う話だ。
なんでも頭に皿を乗せているとか。
白い悪魔どもは国と戦争でも始める気なのか?
物騒な話だ。」
「ははは、そんな馬鹿な奴はいないですよ。
国と戦争?そんなことして何を得ようって言うんですか。
国を潰しても誰も得なんてしませんからね。
あ、隣国辺りが得をするか。タダで領地が増やせるんだから。
まぁ、国の腐った奴らを懲らしめたい、ってトコじゃないですかね。
悪魔の考えることなんてわかりませんけど。」
「それは悪魔のすることか?それだとまるで正義の騎士様だな。」
「正義?悪魔に何を言っているんですか。」
「それもそうだな。」
「正義の騎士様の悪魔退治を見てみたい気もするが。
話があべこべになって来たな。
そうだ、ヒトシに引き渡してもらった、
大臣の息のかかった冒険者の名前を伝えておいたから、
間違いなく謁見に応じるはずだ。」
そう、決闘の後クラン「真紅の翼」内に大臣との内通者がいないか調べた。
カインと大臣は直接接触していなかったから、
ダンテさんもなかなか尻尾がつかめなかったようだ。
暗殺者に任せたら、一瞬で調べがついた。どうやったんだろう。
ホント最近のクローン達って、何考えてるか分かんないわよね。こわいわー。
「ついでに緊急だとも伝えてあるからな。
何だかんだや、のらりくらりの雲隠れも許す気はない。
まぁ、傲慢で、自信家だからな。逃げることもないと思うが。
おそらくそこら辺も悪魔様の思惑通りなんだろうよ。
悪魔ってのは狡猾だからな。」
「悪魔って恐ろしい奴なんですね。」
あは、白々しいセリフって面白いね。
「そうだ、極上のオーク肉をエサに、人間に悪魔の契約を結ばせて配下を増やしてるらしいぞ。」
「はは、そんな話誰から聞いたんですか?」
「それは言えんなぁ。誰が聞いてるか分からんしな。例えば悪魔とか。」
それって、アルさんの事だよね。まだあれから二日しかたってないけど。
トレントの森からそんなに早く帰ってこれるものなんだろうか。
「アルさんとも知り合いだったんですね。」
「あぁ。国がらみの依頼や、この間のスタンピードの時にな。
ちょくちょく顔は合わせる。
竜騎士様には毎度世話になっている。」
今、今なんと?
竜騎士?アルさんは竜騎士なの?
まさかのここにきて竜騎士登場ですよ。
竜を駆る者ですよ!
「3-1隊は竜騎士隊ってことでファイナルアンサー?」
「フ、ファイ、なんだ?
そうだ、王国軍竜騎士隊。その隊長がアルスだ。」
「じゃ、じゃあ、ロズ隊長も?」
「もちろん、元竜騎士だ。」
ぐぼぁ。畜生、あの野郎隠していやがったな。
竜騎士に憧れ、槍を装備し、ジャンプダメージ2倍、二刀流で4倍だ!
をしていた俺を陰で自慢げにプゲラしてたんだろう。
性悪リアル竜騎士め!
おっと、心の中で嫉みと妬みの暗黒の感情が渦巻いてしまった。
ロズ隊長がそんな奴なわけがない。同じ焚火のオークの肉を食った仲じゃないか。
女性の神秘について語った中じゃないか。そんなヤツを疑うなんて俺ってヤツは、畜生。
おっと、竜騎士と聞いて相当取り乱してしまった。
「お前、本当にドラゴン好きだな。竜騎士と言ってもワイバーン種だがな。」
「何を言っているんですか。ドラゴンと聖剣は男のロマンですぜ、大将!」
「そ、そうなのか?」
「だから東の森からこんなに早く帰ってこれたんですね。」
「ヒトシがそのうち訪ねてくるから、とだけ伝えて去っていったぞ。
あと、悪魔の契約の事とな。
我々はすでに白い悪魔との契約を済ませ、支配下に入ったなどと
訳の分からないことを言って、楽しそうに笑いながら帰っていったぞ。」
うぐっ…。あの人は何を余計なことを言ってくれてるんだ。
「別に、害がないならオーク肉の販売をギルドであっせんしてやってもいいんだぞ。」
「そっちの方は自分の力で地道にやっていくつもりです。
楽しみでもあるんで。やれる自信はありますよ。」
ま、ともかく、3-1隊は俺ともギルドとも敵対するつもりはないって事だろう。
-ノック-
アヤさんだ。ダンテさんに対して、なんだか少し気まずそうだ。
「アヤさん。お肉は好きですか?」
「お肉ですか?好きですけど…。」
「じゃあこれ、美味しすぎて元気があふれてきちゃいますよ。
一人で多かったらギルドマスターに差し入れ何てどうですか。
多分独り身だから手作りの味に飢えてると思うんですよね。」
俺は小声でささやく。
そう、アヤさんは何も悪くない。俺もダンテさんも責めたりなんてしない。
ただ、俺はアヤさんの気持ちに気づいた。アヤさんは、ダンテさんが。
シェロルさんに聞いたら、恐らくそうじゃないかって。
でも最近はそんな素振りもなくなったから少し変だとは思ってたらしい。
あの笑顔をダンテさんに一人占めさせるのはなんだか悔しいけど。
アヤさんがまた元に戻るためにはきっと必要なことなんだ。
だったら、お節介かもしれないけど、応援したい。
「…でも、受け取れません。」
フフフ、そんなこと言ってますが、これを目の前にしても
同じことが言えますかねぇ。
俺は、王都の屋台のおねーさんに頼んで作ってもらった、
オーク肉サンドを取り出した。
甘辛く味付けられたオークジェネラルの肉。
もともと旨味の強い高級肉にさらに味を付けるなんて。
しかし、それを新鮮野菜で包みふっくらパンでサンドする。
肉の旨味とタレのコク、それが野菜に絡みパンにしみ込み。
究極の逸品となる。
無限収納に入れてたから、肉もジューシー野菜も新鮮。
くきゅる~。
可愛らしく、しかし、確かな音がアヤさんのお腹から聞こえた。
あれから何も食べれてないってシェロルさん情報があったから、
おねーさんに無理を言って作ってもらったんだ。
やはり、この肉の魔力の前ではいかなるものも無力なり!
さぁ、貪り付くがよい!
あ、アヤさんの後ろに勢いよく振られた尻尾が見えるようだ!
目をキラキラさせて、サンドに釘付けだ。
ほれほれ、目の前に差し出すと、アヤさんは恐る恐る受け取り。
端っこに噛り付いた。
「はむっ!…ん!?
なにこれ、おいしい!はむっ!はむっ!
美味しい!すごく美味しい!」
何とも可愛らしい食べ方ですなぁ。おじさん、その姿を見るだけで幸せになります。
「なにこれ、こんなの初めて!美味しすぎて溶けちゃいそうだよ!」
大層気に入ってもらえたみたい。
その後もおいしいを連呼しながらぺろりと完食した。
「さ、こちらの肉はいかがしますか?」
ここですかさず悪魔的スマイル!
俺とダンテさんを交互に様子をうかがう。なんだか子犬みたいで可愛い。
ダンテさんが笑顔で頷くと。
ありがとうございます、と遠慮がちに受け取った。
お肉を抱きしめニッコニコになったアヤさん。
よかった。いつもの笑顔が戻って来たみたいです。
と、不意に真面目になって。
「ギルドマスター。大臣から返信です。
至急登城するように、とのことです。」
「わかった、行ってくる。
行くぞ、ヒトシ。」
「はい、お願いします。」
俺とダンテさんは部屋を出た。
「ヒトシ、助かる。アヤの事だ。俺にはどうしていいか分からなくてな。
ありがとう。」
ダンテさんは振り返らずにそう言った。
竜騎士槍装備ジャンプダメージ2倍+二刀流が好きです。




