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第36話 ドラゴンの価値

「ふぅ。」


大きな前掛けと手袋を付けた美人受付嬢さんたちが、せっせせっせと、

ドラゴンの査定をしてくれています。


ドラゴンの素材は大きくて重いので、女の人に重労働は無理だろうと思いきや。

100kg以上ありそうなドラゴンの翼や、心臓なんかも軽々と運んでいる。


「二人とも逞しいですね。」


頑張っている女性方に声をかける。


「ヒトシさん。それ、褒め言葉じゃないですからね。」


え、そうですか?


彼女たちが重い素材を軽々持ち上げられるのには、理由がある。

ギルド所有の魔道具。パワーリスト。

筋力を上昇させる効果があり、女性でも軽自動車位なら持ち上がるほど。

もちろんこの世界に軽自動車はないけれど。


あ、ダンテさんは素の腕力でやってます。

そりゃ普段から見せびらかしてる筋肉ですもの。

ここぞというときに役に立たないのでは意味がありません。


「ん、なんだヒトシ。俺の筋肉もほめてくれるのか?」


「そうですねー、すごいすごいー。」


適当である。


「ふふん、ま、まあな。」


ご満悦ですね。


彼はおいといて、一生懸命汗を流しながら働く女性の姿って、とても素敵ですよね。


にこにこしながら見ていると。


「これは相当な額になりますよ。楽しみにしていてくださいね。」


なんだかシェロルさんは自分のことのように嬉しそうに話してくれた。


「シェロルはヒトシさんといる時はいつも楽しそうだね。

 他の人にももう少しだけその優しさを分けてあげてほしいぞ。」


と、アヤさんのイジリが入る。


「そ、それは。だって、冒険者さんて、乱暴な人や、

 自分勝手な人が多いから、つい身構えちゃうの。

 何回か危ない目に遭ってるし。」


「私もあるわ。そのたびにギルドマスターに助けてもらってるけど。

 そういえば、シェロルもヒトシに助けてもらったことがあったわよね。」


俺が冒険者になりたての頃、シェロルさんがクランのリーダーに逆恨みされた事があった。


「あのときはほんとに…。」


シェロルさんはあの時のことを思い出したのか、涙ぐみ、そして耳を赤くした。


「ホント、無事でよかったですよ。」


するとアヤさんが小声で


「そりゃうちの看板受付嬢も、ほの字になる訳ですよ。」


何やらニヤニヤしながら、シェロルさんに耳打ちしていた。


「ちょっと、やめてよ~。」


さらに耳が真っ赤になった。何を言ったんだ?


「否定はしないのね。」


何かわからないけど、恥じらう乙女。いいですなぁ。


「ん!とにかくヒトシさんのために一生懸命頑張りますから!」


何やら宣言された。


「はい、お願いしますね。」


2時間後。


結局クローンや、なんやかんや、俺も手伝って査定は終わった。

一番の筋肉ダルマ。ダンテの野郎は、いつの間にか姿をくらませていた。

一番楽しみにしてたくせに、面倒臭い事は人任せって、どうなのよ。

ぷんぷん!である。


あ、戻ってきたぞ。ここはガツンと、


「肉と革と牙と爪の売り先はほぼ決まった。

 あと内臓と骨は錬金ギルドと交渉中だ。量が量だけにな。」


ギルマスの仕事をしっかりしてくれていたようだ。流石ギルマス。その筋肉は伊達じゃない。

出来る男ダンテ。

どっかのクローンの本体とは出来が違いますものね。

見習わせたいものですよ、ホント。


「この量をもう捌けたんですか?

 さすがです。」


「ほんと、やるときはやるわね。」


「これで一安心ですね。ヒトシさん。」


「ああ、ここでやらないで、いつやるんだ?俺の腕の見せ所だ。」


オジサマ。惚れてしまいましたわ。今夜私はあなたのモノになりますわ。


「各取引先からの支払いが済み次第。預り金に足しておく。」


預り金いくらあるか正直知らないんだよね。興味あんまりないから。でも、


「で、今のところいくらになりそうですか?」


「錬金の方が上手くいけば、金貨でざっと5000枚ってとこか。」


よく分からん。えと、金貨一枚で200万円だったかな。

で、十枚で、百枚で、千枚で…。円換算で、100億円?


「ドラゴンが1000枚で。残り4000枚がレッサードラゴンてとこだ。」


ドラゴン一匹金貨千枚。ひぇ~。


「ギルドとしてもデカい取引だ。こっちでも色を付けさせてもらうよ。」


「いいですよ。お世話になってるんですし。倉庫も建ててもらってるんですから。

 皆さんのボーナスと、ギルドのために使ってください。」


「倉庫の方はトレントの素材の利益ですでに回収済みだ。」


結構稼いでたのね。


そしてそんなトレントの森から連絡が。


(侵入者あり。ドリアード捕獲されました)


ドリさんが?!


「すいません、トレントの森に侵入者が。ドリアードさんが捕えられてしまいました。」


「なに?!おそらく王国軍だ。くそ、そんな情報入っていなかったぞ。

 どうなってる?」


「すぐに調べます。」


シェロルさんが出ていった。


「俺も一旦戻ります」


「ああ、すまない。力になれなかった。」


しかたない。でもギルドの情報網に引っかからいのも不自然だけど。


「いえいえ、では急ぎます。」



俺は急いで引き返した。


ハウスタートルでは、攫われるところを助けるのは無理だったか。


トレントの森の中に入ると王国軍と遭遇した。


「トレントの森及びドリアード、世界樹は王国領内に存在する為。所有権は国にある。

 今まで隠蔽し、独占してきたお前は王国法に照らし合わせ、国家反逆罪とする。」

 

王国軍は1000はいるか。


俺は魔王を引き連れ、敵の前に立ちはだかる。


「イフリート召喚!」


俺は大声で叫び、敵軍全員に分かるように力を見せつける。


イフリートの咆哮!


体の奥まで震える。恐怖を呼び覚ます咆哮だ。


「全体一時撤退」


イフリート相手に役不足だと判断した隊長は撤退の合図を出した。


「本体が来たか。」


今度は5000もの軍隊。


炎だと、みんな焼け死んじゃうから。死なない程度に。

マイナス30度のブリザード。そして、ブラッディレイン。

凍りつく寒さと、言い表せない恐怖。もう士気は保てない。


「こちら側には、こいつがいることを忘れていないか?」


大将らしきやつが、ドリアードを盾にして、降伏を迫ってきた。

 

さ、ジョブ暗殺者、スキル不在。神をも欺く(設定の)隠蔽スキル。

隊長が崩れ落ちる。5000の軍隊は散り散りに撤退。

ドリアードが解放され、俺の元に来た。


「ヒトシさんごめんなさい。私のせいで。」


「いや、俺が原因みたい。迷惑かけます。でもすぐ追い払いますんで」


ドリさんを世界樹の場所まで運んで、トレントの森入口をクローンで固め、侵入を防ぐ。


俺はハウスタートルに移動し。戦況を窺う。


さっきのが本体じゃなかったのか?

さらに20000の進軍が明らかになった。


そして、別動隊か?森に隠れて見えないはずなんだけど、なんでここに居ることがバレた?


とにかく、自分で迎撃するしかない。


俺の脚は小刻みに震えていた。

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