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第33話 ドリアード

エルダートレントを討伐したクローンは次の目的地へと向かう。

奥に向かうほど、巨大で凶悪なトレントが存在している。

極めつけはアイアントレントと言う鉄のような硬度を持つ魔物。


炎の魔法も効き目が薄い。倒せないわけじゃないけど。

全長20メートルの巨木の重圧が次から次へと押し寄せると、

流石の魔王様でも、押し返されてしまう。


そりゃ魔王様一人じゃどれだけ強くても多勢に無勢。

何か策を考えなきゃと。


そして考え付いたのが、鉄を切るスキル斬鉄。

大戦斧を振り回し、バリアントの斬撃がアイアントレントの幹に食い込む!

ガキンガキンと、木を切る音とは思えない金属音。

魔王の土魔法で作られた全長10メートルのゴーレムが、

アイアントレントの重い一撃を受け止め、

その下で、バリアントの一撃が、大木を両断する。

切られた大木はゴーレムによって押し倒され、先へ進む道を作り出す。


何とかアイアントレント戦も形になってきたな。


いよいよトレントの森の攻略も佳境。

奥に進むにつれ徐々に姿を現した、空を覆うほどの大木。

あれがただの大木な訳がない。最終目的地(ダンジョンマスター)だ。

魔力が白く覆っているから間違いない。


あれと、戦うの?



樹齢何千、いや何万年なの?

大木の高さなんて見当もつかない。

何百メートル。いや、千メートル級か?


あれは無理でしょ?ムリゲーですよ。

ピンク色のなんでも吸い込むぷにぷにした星のまん丸君が

リンゴを吸いこんで勢いよく吐き出してもビクともしませんよ。


て言うかあれ動く?動いたら大参事ですよ。カタストロフィですよ。


むしろあいつ。魔王じゃないの?

きっと世界を終わらせるためにその時を待つ最終兵器ですよ。


これは攻略不可能、ラストダンジョンに違いない。


あるよね。

スタートして間違った方向に行くといきなり全滅しちゃうゲーム。

それだきっと。これは進んではいけない道だ。引き返そう。

俺の魔王様はまだまだ強くなる。今はまだその時ではない。

とりあえず近くまでは行ってみるけどね。


と、いうわけで、カタストロフィさん、略してカタさんはほっといて攻略を続けましょう。


まだ遠くに見えてるだけで、全然距離あるしね。


(新種トレント発見。霊樹トレント。幻覚魔法を使って撹乱し、進路を妨害してきます)


確かめてみると、通路に木が生えて道を塞いでいるのが分かる。

何故かわかる。何故ならその幻覚魔法が白く光って見えるから…。

魔力視の力だよ。


まるで正解はこっちだよって言ってるみたい。

隠すつもりが逆に導いちゃってますよ。

いや、これが罠か?

とりあえず進んでみるか。


幻覚は触れようとするとすり抜けた…。進もうか。


また分かれ道だ。いや、幻覚魔法で一本道になっている。

右まがりだけどその手前に白く光る木が左に続く道を塞いでいる…。

うん、左だね。


何度か、同じようなことを繰り返す。

ていうか、霊樹さんあなた隠れてるのバレバレですからね。

隠し通路を発見するたびに霊樹さん慌てて次の分岐点に向かってますよね。

おっと、今度は全方位幻覚魔法で固めてきましたか。

普通なら進む道も戻る道も分からなくなってパニックになるんだろうけど。

ごめん、全部見えてるから。


そして逃げてくあなたの姿もね。そして逃げてく道もね。

逃げ道を隠すために魔法かなんかで草を生やしてるんだろうけど。

逸れ、魔力が残ってはっきりと白い道が出来てますよ。


と、そろそろ鬼ごっこも終わり。


クローンが先回りして、霊樹の進路を塞ぐ。


すると驚いたように、霊樹はびくりと体を震わせて止まった。


そして、木の幹からムニュムニュと顔らしきものが。


怖いです。ホラーです。木の幹から顔が出てきましたよ。何を始める気?!


「ここは神木の聖域。今すぐ引き返せ!さもなくば彷徨い朽ちてトレントどもの糧となるぞ。」


「…幻覚のこと?あれ、効かないよ。」


「え?どうしよ…」


霊樹さん困惑。威厳のある喋り方のキャラが早くも崩れてますよ。


「別にどうもしませんよ。ただ探索させて欲しいんです。」


「ダメ、この先に入っちゃダメ」


うん、もう威厳キャラには戻らないのね。一瞬だったね。


すると、霊樹の中から背の高い緑の髪で肌が茶色い女の人が出てきた。


て、裸なんですけど。全部丸見えなんですけどおねいさん!

お洋服、木の中に忘れてきたの?それともトレントのコスプレだったんですか?

着ぐるみならぬ、木ぐるみ。ぷぷ。


…。


そんなことを言っている場合じゃない。霊樹のおねいさんは、ドリアード。

森の精霊だった。


そして何やら呪文らしきものを唱え始めた。

足元からツタが伸びてあっという間に手足を縛り拘束してきた。

そういうことか。コスプレの次はSMか?!

つるのムチとか茨のムチとか草系の技で快感を与えてくるのか?

ソフトな方でお願いします。


じゃなかった。このままじゃ動けない!事もないな。こりゃ。

手足を動かし無理やり引きちぎる。


「え、うそ?」


「それじゃダメみたいだね。」


「森のトレントたちよ。集いて私に力を…。あれ?」


ドリアードさん。ここらのトレントはあらかた倒してしまいました。


「あ、まだアイアントレントは残ってるみたいですよ。」


「アイアントレントは言うこと全然聞かないから嫌い!」


ドリアードさんは目に涙を溜め始めた。


「そうなんですか。森のせいって言うのもなかなか大変なんですね。」


「あなたのせいよ!幻覚も効かないし、樹霊術も効かないし。

アイアントレントは言うこと聞かないし。もう嫌。」


なんだかスネちゃった。そしてトレントの中にお戻りになられました。

俺のせいで引き籠りさんになってしまった。ごめんね。


「ごめん。悪いことしに来たわけじゃないんだ。

ただ、この先に何があるか知りたいだけなんだ。

あの大きな木のこととか。神木の聖域って言ってたけど。」


「?!」


トレントさんが幹から顔を出した。


「あの木が見えるの?」


「そりゃ、あんなに大きければ見えますよね。すごく立派な木です。」


「そ、そうおもうでしょ」


なんだか今度はすごく誇らしげである。少しは機嫌直してくださいね。


「あれは世界樹。私たちの生みの親で、この聖域の守り主よ。

でも今は…。アイアントレント見たわよね。あの凶悪な奴よ。」


「はい、凄く硬くて倒すのに苦労しました。」


「…。あれを、倒す?あなたが、どうやって?」


「あ、倒すのは俺じゃなくて。なんて言うか、仲間と言うか、斧でガキン!と。」


「ほんとに?」


「ほんとに」


「ホントに、ホント?」


疑り深い人のようだ。人じゃなくて精霊さんか。


「うん、硬いけど、斧で切れないほどじゃないし。二分もあれば一体は切り倒せますよ」


「あの…。長老に、世界樹に会って欲しいんだけど。だめかな。」


あれ。さっきはダメって言ったのに。なんだろう、この変わりよう。

きっと何か困っている事があるんだろう。


「いいですよ。案内してもらえますか?」


「はい!こっちです着いてきてください。」


ドリアードさんの進む先の木々が避ける様に左右に分かれていく。

なんだこりゃ?!こんなんありですか?


一直線に進み1時間足らずで世界樹の元へ到着する。

来ちゃったねラスボス。ネオでエクスなデスよ。

まだなんのジョブもマスターしてませんよ。ここはすっぴんでいくか。


『ドリアードよ。無事で何より。そちらの白き者を導いてきたのだな。』


なんだか謎の声に雰囲気が似ている気がする。


「はい長老様。こちらの方はアイアントレントを倒すほどの力の持ち主。

 問題を解決する力を持っているはずです。」


『儂もアイアントレントの消滅は感じておった。そなたの力であったか。

 異世界の者よ。』


?!


「なんでそれを知っているんですか?誰にも話したことないのに。」


『ほほ、それは、まだ秘密じゃ。後々に本人から説明があるじゃろう』


なんか、秘密にされたんだけど。そして本人て、だれ?全く意味が分からない。


「それで、問題ってなんですか?」


とにかく今はそれを聞かなきゃ話が進まないよね。


『うむ、アイアントレント、あれのことじゃ。

 ちと、説明が長くなるが、構わぬか?』


俺は首を縦に一度振った。


『よし。儂は人々の信仰の象徴として悠久の時を生きてきた。

 人々に緑の恵みを与え、生命力と、魔力を与えてきた。

 しかし、いつからか人間たちは儂を信仰することをパタッとやめてしまった。

 信仰の力を聖域に集め、聖域を育て、

 その生命力と魔力を人々に還元していたのじゃが。

 信仰がなくなったせいで循環が途絶えてしまって。

 魔力を失った森はやせ細り、儂の力も衰え、制御できなくなった力が

 アイアントレントとして暴れだしたのじゃ。

 それは、儂の限界が近いということを意味している。

 この聖域を維持できなくなってきているのじゃ。

 今では聖域の生命力を集めることすら難しくなってきておる。』



「つまり、制御できないアイアントレントを倒せばいいんですね。

 あと、生命力はどうやって集めればいいですか?」


『なんと、話が早いの。そうじゃの。

 儂の根元にトレントたちの体を持ってきてくれればええ。

 トレントを吸収し。生命力に変えよう。』


「わかりました。」


とりあえず俺は無限収納にしまってあるトレントの素材を

世界樹の根元に全部出した。


『おお、これは。』


光の粒となって消えていくトレント(素材)。すべて世界樹に吸収されたみたい。


『なんと、すでに用意していたとはな』


「たまたま集めていただけですよ。」


『それにそれは空間魔法じゃの。どうやら、高位の魔導士とみえる。

 これは幸運じゃ。だがこれ以上は今の儂の力では吸収できぬ。

 ゆっくりと悠久の時をかけて徐々に癒していかねばならぬようじゃ。』

 

「俺は悠久の時を生きられないかもしれませんが、出来る限りトレントを運んできますよ。

 その代りと言ってはなんですが、ここで自由に行動する権利をもらいたいんです。」


『うむ、願ってもないことじゃ。

 アイアントレントのことじゃが、一度崩れた生態系はなかなか元には戻らん。

 明日になればまた、アイアントレントは復活しているだろう。』


「わかりました。毎日見回りして、アイアントレント倒しておきますね。」


『何から何まですまんの。とにかく、この森では自由にしてくれて構わん。

 とにかく感謝する。ありがとう。』


「それじゃ、また明日。トレント持ってきますね。

 違う姿で来るかもしれませんけど、白い奴は俺ですから。」


『分かっておるよ、儂には真実のそなたが移っておるからな』


へぇ、そんな風に見えてたんだ。


「それじゃ安心です。ではまた。」


俺は世界樹と別れ、探索を再開することにした。


また明日もトレント収めに行かなきゃいけないしね。

今のうちにたくさん狩っておこう。


探索を再開しようと歩き出す。


「まってください。」


あ、裸の精霊。じゃなかった、森の精霊ドリアードさん。


「いろいろとありがとうございます。これで長老も何とか命を保つことが出来ます。

 お礼にあげられるものはないんだけど…。」


ドリアードさんはゆっくり近づくと、突然の口づけ!?


い、いけません。俺には一生を捧げると誓った大切な人が、特にはいないけど…。


声『森の加護を授かりました。

  回復力中アップ

  再生力微アップ

  森の中の移動力が上がる

  森の中の探索力が上がる

  森ガール

  植物の育成が得意になる


森ガールは意味わかんないけど。


と、不意に瞳からこぼれる一筋の涙。


「あわあわ!」


慌てるドリアードさん。


「ごめんなさい…。

 人の真似をして感謝を伝えたつもりだったのですが、

 何か間違っていましたか?」


「いえいえ、嬉し涙です。嬉しかった時に人は喜びのあまり

 感動の涙を流すのです。」


「そうなのですね。よかった。」


「ありがとうございます。これからも宜しくお願いします。」


ドリアードさんにはあとで素敵な服をプレゼントしよう。

何せ素敵なおねいさんは、すっぽんぽんなのだから。

スタイル良すぎて、おじさん、理性を保てる自信がありません。

きっとそのお胸には、森の豊かさがたぷたぷと詰まっているのでしょう。


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