第32話 トレントの森
俺は、冒険者として稼いだお金を使って装備を整えていた。
ロズ隊長が紹介してくれた鍛冶屋で武器、防具を買い、
鍋や、食器、衣服など、生活に必要なものをそろえた。
全部ドザエもんのポケットにしまい込んだので、
特に手荷物もなく手ぶらで出発の時を迎えた。
ロズ隊長や隊員の皆さん。宿の女将さん。ギルドマスターとシェロルさん。
王都で知り合った人たちに挨拶を済ませ。宿の部屋から移転魔法で姿をくらませた。
東の森最奥。トレントの森入口。
俺はとりあえず拠点作りから始めることにした。
まずは、生活スペースを作らないとね。
建築の知識もないのに、家を作れる訳もない。
なんということでしょう。俺は匠ではないのだよ。
しかし、俺には一つの万能能力がある。
イメージを形にする力。物質を作り出すことはできないけど、要は使い方次第。
つまり、物質の特性を生物と組み合わせればいいのです。
例えば、剣を作り出したいとする。剣は物質だけど、魔剣と名づければどうだろう。
たちまち上から目線のおしゃべり機能付きの強力な剣の出来上がりである。
あ、クローンは自立思考のレベルが上がって言語の能力に目覚めたよ。
これで一人でも寂しくないね!何かあればヘイシリ!の呪文で、お喋りしてくれるよ。
違った、ヘイクローン!だった。
と、言った感じで、少しひねってジョブを作ると物質の特性を持った生物を作り出せる。
そこで考えた。住処を作るにはどうすればいいのか。
そこで考え出されたのが家ガメ「ハウスタートル」である。
全長5メートル高さ4メートルの甲羅を持った大きな亀ちゃんの誕生である。
そこにスキルを付与する。間取り。
うん、もう何でもありさ。ジョブは制限があるくせに、スキルは無制限だよね。
で、亀の甲羅の中は、なんと空洞になっており、その中に入ることが出来るのです。
そして、そこで間取りのスキルを使うと。
このスキルは部屋の間取りを自由に作り変えることが出来る能力です。
どんな能力やねん。
さっそく頭の中でイメージして。
入口通路にキッチン、その手前にトイレ付バスルーム、それから残りをリビングにして。
ワンルームハウスタートルの完成である。
天上が丸くてかわいい感じのお家になったよ。
そこに我が癒し。クローン社製スライムベッドを入れたら、あらステキ。
貴方だけの快適空間に早変わり。
キッチンはカマドなので亀の甲羅から煙突が生えてます。
なんてファンタジー。
甲羅の中で薪なんて使ったらすぐ酸欠、煤だらけになりそうだけど。
そこで役に立つのがこれ!スライムベッドです。
スライムベッドには浄化と空調のスキルが付いております。
つまり空気清浄機の機能付きと言うことですよ。これはお買い得ですよ奥さん。
現代の日本の住宅事情に合わせた省スペース多機能設計でございます。
ハイ!これでエアコン、空気清浄器、加湿器、除湿器、ベッド、ホニャララ(封印中)
の機能まで付いて今ならなんと…。
おっと、危ないハイトーンボイスのジャパネさんには自重して頂いてと。
危うく通販番組が始まるところだった。
分割金利手数料無料になるとこだった。
…。
とにかく拠点は完成した。
俺はここで寝泊まりしながら、トレントの森の攻略に取り掛かる。
トレントの森。生息する主な魔物は、トレントという木の化け物。
全長は2メートルから4メートル。
木に擬態しているため、気付かず通り過ぎると、
後ろから木の枝を振り回して奇襲してくる。
けど、クローンの魔力視には白く光って見える。
頑張って擬態してても、バレバレなのである。ごめんね。
さらに言えば火魔法を使うとパニックを起こして逃げ惑うので、簡単に見分けがつく。
つまり、魔力視が無くても、松明や、火魔法を使えれば簡単に見つけられる。
しかも、ただ木の枝をぶん回してくるだけなので、簡単に躱せるし。
あ。倒すとき火魔法を使うと素材がいたんで、価値が下がるから、お勧めしません。
斧戦士に、木こり、伐採のスキルを付けて根元からズガンと、一刀両断。一斧伐採である。
後から考えたら木こりもジョブだよね。第二職業ですか?
良質な建築材料になるので、それなりの値段で買い取ってもらえるんだけど、運搬が大変。
ギルドにも運び込めないから。今のところは一銭の価値もありません。
無限収納の中に大量に在庫中。使い道もないから薪に使ってますよ。
ある種のトレントは火付きがよくて重宝してます。
あ、このよく燃える奴は需要あるかも。ダンテさんに相談してみよう。
たまに果実や木の実を付けたトレントがいるんだけど、
そいつらから収穫して食料を確保した。リンゴやナシとは違うけど、
赤色でシャリシャリとした食感の甘い果実が手に入った。
木の実は、薬の調合なんかで使えるみたいだから、無限収納行。
あとは、もう要らないのでダンジョンの肥やしになってください。
魔力量は小さいヤツで500、大きいやつで1000も手に入る。
トレント林は50体くらい、
群生地に行くと3、400体はいるので結構な量の魔力が手に入る。
トレントの森は空も見えるし、屋外のダンジョンのようだけど、入口は一か所。
そこ以外からはどうやっても入れない。異空間になってるのかな?
リザードの巣もそうだけど、入口が一か所だけあって、
他の場所から入ろうとしても、結局ダンジョンには入れず、
通り過ぎるだけになってしまう。
不思議だよね。無限収納みたい。
探索2日目いくつかのトレントの群生地を抜けさらに奥へとマッピングしながら進む。
先行している探索組から連絡が入る。
(大型トレント発見。解析結果、エルダートレント。数10。)
言語なしでも連絡は取れるんだけど。なんとなく言葉のほうが落ち着く。
一人だってのもあるんだろうけど、やっぱり長年の習慣が一番しっくりくる。
結局は一人しゃべりなんだけどね。
個性とか付けちゃうと愛着湧いちゃって合流できなくなっちゃうよねきっと。
クローンも俺の成長に合わせて成長するシステムだったらいいのに。
おっと、エルダートレントだったね。
奥に進むにつれて段々と木が樹齢を増して太く、高くなっていく。
そして、少し開けた場所に高さ50メートルはあろうかと言う大木が10本。
もしかしてこれがエルダートレント…。デカい。今まで見た度の魔物より巨大だ。
こんな大木が枝を振り回してきたらさすがにクローンでも耐えられないんじゃない?
だって幹の太さ2メートル以上あるよ。枝も丸太くらいの太さだし。
そんなん振り回されたらさすがに、近づけなくない?
ここはあれだ、トレントの苦手な火魔法でいこう。素材はしょうがないよね。
まず、倒すことが優先。
と言うわけで。ここで遂に魔王様のお出ましです。
大魔導の魔法より強力な、禁呪と言われる大魔法を持つ(設定の)強力なお仕事です。
ローブを目深にかぶった2メートルはあろうかという大男。
ちゃっかり立派な巻ヅノも生えてますよ、流石魔王様。
ここは大先生。一気にやっちゃってください。
魔王が掌をかざすと、直径2メートルはあろうかという
薄紫色に光る魔方陣が描かれていく。
ひょー、これはかっこいいぞ。いいないいな魔方陣。
大喜びの俺。
魔方陣からは炎が流れ出し、形を成していく。
巨大なひしゃげた角を後ろに生やした炎の魔獣が現れる。
召喚魔法だ!炎の魔獣イフリート!
全身を炎に包んだ魔獣は宙に浮き、大きな咆哮を上げる!
「グゴォォォ!
トレントたちは怯えているのか、枝を下に垂らし、弱々しくなっていた。
イフリートは力を貯め、弾けるようにトレントに突撃していく!
ものすごいスピードの炎の塊がトレントに衝突する。
パン、ともパキンとも言いえない、炸裂音。トレントの上半分が弾け飛び、
残った部分も炎で焼け落ちていた。
威力絶大ですね。しかし、地響きが起こり、メキメキと地面から音が聞こえ始めた。
次の瞬間、ボコッと土が盛り上がる。地面から飛び出してきたのは無数の巨大なトゲ。
トレントの根か?!一瞬の、出来事。とげは魔王に突き刺さる!ことなく止まった。
引っ込んでいく。イフリートだ。エルダートレントの株を引っこ抜いている。
みしみしと音を立てながら引き抜かれていくエルダートレント。
どんだけ怪力やねん。両腕を幹に深くぶっ込んでそのまま抱えるように引き抜いていく。
ぶちぶちと音を立てながら根を切られエルダートレントは息絶えた。
残り9本もイフリートに引っこ抜かれて討伐された。
木って根が生きてればそっから芽を出して再生してくるもんね。
少し驚いたけど、全然危なげなかったな。
流石魔王、そして炎の魔獣イフリート。
これ、メッチャいい。かっこいいっす。魔王様。
瞬く間にエルダートレントを討伐した魔王様は次の贄を求め、森の中をさまよう。
うん、カッコよく決まった。満足満足。




