第29話 クローン、繋がる
とりあえず、大王スライム改めエンシェントスライムが去った後、第二階層の大空洞制圧は任せて一度帰ることにした。
ここで一つ思いついた。ドザエもん同士のポケットをつなげることはできないかと。そうすれば手元に一人ドザエもんがいれば、ダンジョンで手に入れた素材をそのままこっちで取り出せるんじゃないかと。
でもどうやる。スキルか?いや、ポケットに転送魔法をかければ自由につなげることができるんじゃないか?ためしに宿屋で一体ドザエもんを作る。ポケットの中ってどうなっているのかと興味本位で手を入れて探ってみた。凄いてはドザエもんの体を突き抜けているはずなのにその感触が全くなくどの角度でまさぐっても何にも触れることはなかった。何もない…ん?今何か入ったぞ?なんかグニグニしたものと、薄っぺらい革のようなもの。これってもしかして、ドザエもんの肉?な訳なかった。これはオークの肉と革だ、さっそく剥ぎ取りをして、ドザエもんの無限収納ポケットの中に入れたんだ。そして無限収納は繋がっていると。何を考えるまでもなく。願いはかなってしまった。さすがドザエもん。アンアンアンとっても大好きドザエもん。ちなみにドザエもんの好きなものは人の魂である。さすがドザエもん。
ちなみに、こちらのドザエもんには透明化と陰形と隠密と不在を付けている。これで俺がどこからともなくアイテムを取り出しているように見えるだろう。ふふふ、これでわたくし、収納魔法の持ち主でやんす。これで素材の運搬の問題は解決だ。
ちなみに透明化と不在の魔力消費は合わせて25,000,000でした。うん、贅沢。なんせ神からも姿を隠せるというスキル不在(自作)。神がいるかは知らんけど、そういう設定になっていた。
あれ、部屋の隅。薄暗くてよく見えないけど。誰かいる…。
頭の中はパニックだ。あれ、鍵閉めたっけ?いや部屋のドアにカギはなかったか。
今この宿に泊まっているのは新米三人組と俺だけ、宿のおかみ?じゃない。もっとヒョロッとして
顔も青白く生気がない。もしかして出ちゃった?ここ出ちゃう宿だった?事故物件ですね。昔誰かが自殺したとか、殺人事件があったとか。ごちゃごちゃした頭の中で考えを巡らせていると隣の部屋から悲鳴が聞こえた。
ワーとも、ギャーともつかない悲鳴が三つ。新米三人組だ。そっちにも出たのか。
とりあえずクローンを2体生成。謎のひょろ君を取り囲む。こっちはクローンがいるんだからね。あんたなんかこわくないんだからね!とその瞬間、消えるひょろ君。背筋に寒気を感じ、ゆっくり振り返る…。
誰もいなかった。なんだったんだ?
隣の部屋ではまだ騒ぎ声が聞こえる。クローンを連れて、隣の部屋へと向かう。
同じだ、ひょろ君だ。どういうことだ?
とりあえず、
「だいじょうぶか!?」
「あ、ヒトシさん、あいつ…!」
「うん、俺の部屋にも来たよ。」
「え!?なんともなかったですか?」
「うん、すぐに消えちゃったからね。多分、何にもしてこないと思うよ。」
「そんなはずは無いですよ、だってここで何人も亡霊に殺されたって。」
「え?!出ること知っててここに泊まってたの?」
「…。
三人は黙り込んでしまった。
「まさか、本当に出るなんて思わなくて。宿代安かったから、出たら討伐してやるくらいの気持ちでいたんですけど。実際出たら腰が抜けちゃって。」
よく見ると三人とも、床にへたり込んで動けない様子だった。
いや、これは、スキルだな。畏怖とか、恐怖の類だ。多分俺に通用しなかったから、さっさと姿をくらませたんだ。
だとすると、ホントにこいつ。「クローン、捕まえろ」一瞬、ひょろ君はねじ伏せられた。今度は消えることもなくあっさりと。
すぐ、鑑定解析をかける。
レイス…人の生気を吸い、存在を維持する最下級の亡霊。人が寝ている間に忍び込み、気付かない間に生気を吸い取る。強い存在からは生気を吸い取れず、逆に生気に飲み込まれ消滅する。なお、生気を吸われて死に至ることはない。
幽霊には間違いないみたいだけど。人を呪い殺すような恐ろしい魔物ではないみたい。
「大丈夫、ただのレイスだよ。」
「レイス?レイスが何でこんなところに」
レイスは、森の中や、墓地、人気のないところに好んで住み、夜な夜な、近くの民家を訪れ、生気を奪っていく魔物で、こんな街の中にいることはないんだそうだ。
とりあえず、どうしようか。おかみを起こして、詳しい話を聞かないといけないか。
俺はおかみの寝ている部屋に行き、レイスが出たこと、なぜ隠していたのかを問い詰めた。
「家はね、以前は旦那と二人で西にある小さな町の宿屋を経営していたんだけど、
旦那が仕入れ先から帰ってくる途中魔物に襲われて命を落としてね。
一人じゃ、仕入れやら広い庭の手入れだの、全然手が回らなくて。
途方に暮れているときたまたま、王都に格安の物件があるって話を聞きつけてね。
いわくつきっていう話だったから、どうしようか迷ったんだけど。
このままじゃどうしようもなくなると思って思い切って、越してきたわけさ。
そしたら、オバケが出るじゃないか。
せっかく手に入れた宿屋をみすみす手放してなるものかと思って、
必死になって追い払おうとしたよ。
だけど、何もしてくる気配はないし、そこにただ立っているだけ。
話を聞くことはできないけど、なんか、悪いものではなさそうだったから。
しばらく様子を見ることにしたんだよ。
そしたら、掃除もしていないはずなのに部屋にはチリひとつ落ちてやしない。
トイレも台所もきれいなんだよ。これは何かあるねと思ってね。
様子を見てたら、どうやら、オバケが掃除をしているじゃないか。
そんなこともあったものの、何とか開店の準備をして、宿屋を始めたのさ。
しかしさっぱりでね。みんなこの宿屋に出る幽霊のことを知っていたのさ。
この町を良く知る冒険者は絶対うちの宿は使わないからね。
かといって引っ越しにも準備にも金をかけている手前簡単には引き払うわけにはいかなくてさ。
仕方ないから宿泊料を下げて、この町に来たばかりの新米冒険者や、
一見さんを泊めていたってわけさ。
とはいっても、気付かず夜を明かす客がほとんどなんだけどね。
あんたらには、悪いことをしたよ。
宿泊料はタダにするからさこのことは黙っておいておくれよ。」
そして最後に、あのレイスをどうにかするつもりはないから、討伐依頼何て出さないでくれと頼まれた。
何やら、レイスと気があってしまったのか。
うーん、そうと分かれば別に俺はなんてこともないんだけどな。
別に宿自体に問題はないし。むしろ飯はうまい。
量が少ないのは宿泊料金を抑えているせいだし。
なんなら正規の料金にしてもらって、ちゃんとご飯出してもらってもいいし。
俺は決めた。
「俺、しばらくここで厄介になることにしますよ。
料金も正規の値段でいいです。
その代り、ごはん大盛りでお願いしますね。」
新米君たちに説明すると、分かってくれたみたいで不気味さはあったものの、
レイスはもう何もしないということでその日は泊まってもらうことにした。
ちなみに、クローンに霊言を付けてレイスと話したら、
もともとここには死霊術師が住んでおり、
死霊術禁止令の際に死霊術師はここを去ったが、
一体の封印を解き忘れ、ここに残されたそうだ。
そして時が経ち、封印が半端に解けて、
ここから動く事も出来ず、彷徨っていたのだそうだ。
家の掃除をしていたのは、誰かが此処に住んでくれれば、
そこから生気を分けてもらえると思ってのことだったそうだ。
そう考えると、このレイスってのも案外かわいく見えてくるもんで、
一言、俺の生気だったら少し分けてあげるから、もう少し女の子らしい可愛い姿になってね。
と、伝えておいた。
そう、ヒョロ君ではなく、ヒョロちゃんだった。
とりあえず、新米組の部屋にいるのはよろしくないと思い、
来るならこっちの部屋においでと伝えておいた。
レイスは嬉しそうに笑うとすっと姿を消した。
女将もきっとこのレイスのことがかわいく思えてしまったんだろう。
庇おうとする気持ちが分かる気がした。
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