第24話 本体、犯罪者扱いされる
横に一本の空と大地の境目。茜と漆黒のコントラストに。思わず息をのんだ。
「きれいだ。
思わず漏れた言葉。
「陽が沈む前に、無事戻ってこれたな。
「これで俺らの任務はひとまず終了だ。
二日後には馬車に揺られて王都へご帰還ってやつだな。
「魔力異常で調査命令が出た時は、凶悪な魔物の存在もある程度の覚悟はしていたが、
こうして全員無事に帰還できた。
白い亡霊の件は気になるが、そこはまた再調査の部隊が解決してくれるだろう。
帰りは会うこともなかったしな。
全部ダンジョンの中に移動して、会わないようにしたからね。
もしあって、やっぱり俺の顔にそっくりだなんてなったら、また面倒なことになりそうだもの。
ちょっとそこら辺は考えなきゃいけない。今後の課題だな。
「さ、辺りが暗くなる前にさっさと町に入っちまおうぜ。
「そうだな、みんなご苦労だった。あと少しだ。気を抜かず、頑張ってくれ。
さ、出発だ。
ロズ隊長が隊の皆を気遣って号令をかけた。
安堵の顔をしていた厳つい隊員たちも、再び顔を引き締め直し、丘を下り始めた。
「町に着いたら、宿を取ってあるからそこで一晩休んで、明日の早朝王都へ向けて出発するとしよう。
「久々の風呂だ。何日風呂に入ってねぇ?もう体中がかゆくてたまらん。
「ガッドさんも風呂に入るんですね。そのひげもついでに剃ったらどうですか?
「ん?それはどういう意味だヒトシ。このひげはそう簡単には剃るわけにはいかねぇ。
俺と、嫁さんの約束だからな。
あ、そういうの要らないです。
「そういやお前は全然臭くもねぇな。何日も森の中にいたんだろ?
「近くに水場を見つけて、そこで水浴びしてましたからね。
「お前なぁ。森の中で、しかも一人で水浴びするなんて。
もし裸の時に魔物に襲われたらどうするつもりだったんだよ。
「そのときは、全力で泳いで逃げますよ。俺、泳ぎ得意なんですよ。河童並です。
「カッパ?なんだそいつは。聞いたことのない名前だな。
「あ、緑色の体に甲羅と頭に皿を乗せた、泳ぎと相撲が得意なきゅうり好きの魔物ですよ。
「変わった魔物だな…。よく分からんが、ヒトシは泳ぎが得意だったんだな。
そんな他愛もない話をしながら町の入り口に着いた。
町では、農作業などを終え家路に就く農夫と、それを見守る衛兵がいた。
50軒くらいの民家が点在するのどかな風景。
各家の窓からは橙色の明かりと、煙突からは夕飯の支度をしているのか煙が立ち上っていた。
なんとなく切なくも暖かい思いがよぎった。
食料品店、雑貨屋、服屋、などが並ぶ商店街の一角にこの町で一番大きい二階建ての建物、宿屋があった。
「いらっしゃい、悪いが今この宿屋は貸し切りでね…。
あぁ。お前さん方調査から戻ったのかい。無事で何より。
今風呂の準備をさせるから、受付を済ませて部屋で休むなりしていてくれ。
と、お前さんは?
いぶかしげな顔で、俺の姿を怪訝そうに見る50代くらいの男。この店の主人だろうか。
「あぁ。無事全員帰還できたよ。風呂の準備ができたら一階の部屋から順番に声をかけてくれ。
二階の連中は先に飯だな。一階の連中は風呂の準備ができるまで部屋で待機。
二階の連中は先に飯でも食ってきてくれ。その後は、酒場に集合だ。明日の連絡もそこで行う。
あんまり遅くならないうちに集まってくれよ。
「と、いうことだ。おめぇら、お疲れさんだったな。一先ず解散、部屋に戻って、疲れを癒してくれ。
隊員たちがわらわらと各部屋に移動を始めた。
「それで、彼のことだが。森で迷って一人、助けを待っていたようだったので連れてきたんだが、
ダンジョン発見者だったのでな。これから王都に同行してもらって、謁見の予定なんだが、
如何せん、身元を証明するものがないので、
こうしてとりあえず拘束の呪布を施しているというわけだ。
そう、俺は手と足と首に拘束呪布と呼ばれる、拘束の呪文が書き込まれた布を巻きつけていた。
施されたものは、行動を制限されるので、逃走や、害意を持った攻撃ができなくなる。
自分では剥せない。らしいんだけど、陰でこっそり剥してみたら、簡単にぺらっと剥せそうだった。
大したものじゃないのか、ロズ隊長が失敗したのか。
剥さなかったけどね。別に、逃げる気もないし、攻撃する気もないから。
謁見が終わったら剥してくれるって言ってたし。それまでの辛抱。
「そうですか。しかし拘束呪布は犯罪者の証。この宿に止めるわけには…。
「今説明したじゃねぇか。こいつは犯罪者じゃねぇ。念のため付けてもらってるだけだ。
「しかしですね。ほかのお客様が…。
「ここは貸し切りのはずだが。ほかに客がいたのか?
「いえ、しかし…。
何とも歯切れが悪い。なんとしてでも俺を泊めたくないのか。確かに、傍から見れば俺は犯罪者で、宿のイメージが悪くなるかもしれないしね。こんな、町全員が顔見知りみたいな場所で変な噂でもたてば、商売やり辛くなっちゃうだろうし。
「あ、俺なら平気ですよ。適当な場所にキャンプしますから。とりあえずお腹すいたんで。
ご飯食べに行きませんか?
「そうか…。すまんなヒトシ。飯は俺におごらせてくれ。
とりあえず部屋に荷物を運んでくるからここで待っててくれ。
ロズ隊長とガッドさんも部屋に戻っていった。
どこかに腰掛けようと、椅子を探していると、宿の主人と目があった。
ジト目でこっちを上から下、下から上へと視線を送っている。
あ、はいはい。
俺は、軽く会釈をすると、無言で宿の外へ向かった。
そんなにこの呪布って嫌われてるのかな。なんだか、他の人の視線も気になってきたんだけど…。
襟を立て、袖と裾を引っ張り呪符が目立たないように隠した。
5分もしないうちにロズ隊長が出てきた。ガッドさんはほかの隊員と夕飯を食べに行くそうだ。
ま、あとで酒場で合流して、奥さんの話をした時にもげろと言ってやろう。
おっと、俺の暗黒面が顔をのぞかせてしまったようだ。
お前が深淵を覗く時お前は深淵を覗いているのだ。
えっと、どういう意味?
ロズ隊長とともに、宿屋の斜向かいにある食堂へ入る。メニューは一つだけ。
パンとシチューと、鶏肉の香草焼き。一人銅貨3枚。
物価とか、銅貨の価値とかよく分からないから、ロズ隊長に聞いてみたところ。
銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚。金貨100枚で大金貨1枚。
と言うことだった。ちなみに宿屋は、素泊まり一泊銅貨15枚と言うことだった。
よく分からんけど、外食銅貨3枚ってことは、銅貨1枚200~300円てとこなのかな。
ちなみにダンジョン発見の報酬はダンジョン1つで金貨10枚は貰えるだろうということだった。
銅貨100枚、銀貨1枚で2万円、銀貨100枚、金貨1枚で200万円。金貨10枚で…。
2000万円?!ダンジョン二つで4000万円!
ちなみにスライムの巣は価値がなさそうなので貰えないかもと言うことだった。
俺は、ニヤニヤが止まらなかった。「4000万円…」と頭の中で繰り返し続けていた。
途中、ガッドさんたちもやってきたが、俺の顔を見るなりそそくさと離れた席へと座ってしまった。
俺、何かしたかな?気持ち悪いほどのニヤケ顔で、俺は首をかしげた。
その後、ロズ隊長は風呂に入りに宿に戻り、酒場で合流することにして、別れた。
とりあえず俺もキャンプに戻って、少し仮眠を取ろうかな。
俺は町を出て、人目に付かない場所でキャンプを張ることにした。
メイドインクローン
皆さんは不思議に思ったことはないだろうか?
男はどこで寝ているのかと。いつまでも野宿をしているのかと。
適応能力凄い、あり得ない、などと。
もちろん、最初は落ち葉などを集めて少しでも、寝心地を良くと、頑張っていた。
しかし、朝になると、しっとりと濡れたおしりと背中。
落ち葉って、結構虫、いるんだよね。
と、言うわけで男は、考えた。クローンにジョブをつけた時。
偶然にも作り出してしまったのだ。
柔らかく、弾力性に優れた。ぷにぷにぷるるんの存在を。
スライムである。男は、スライムのクローンを作り出し。
その上で寝ることにした。
そして、翌朝。男の背中は、濡れていた。いや、全身が濡れていた。
男の重みでスライムが潰れ、水が染み出していたのだ。
失敗か。
男は思った。
しかし、男はあきらめなかった。
そうだ、スキルがある!スライムにあらゆるスキルを付与し最高の睡眠を手にれようと!
男は改良を重ね。ついに最高の睡眠空間、クローン社製スライムベッドを完成させたのである!
スキル
自在…形を自由自在に変える
浄化…体、衣服の汚れを分解し清潔にする
空調…湿度、温度を調整し快適空間を作る
屋根…屋根
陰型…隠れる
隠密…隠れる
隠蔽…隠れる
不在…隠れる
毛皮…モフモフ
乳房…パフパフ
そう、男はまたしてもやってしまったのだ。しかし、抗えなかった。プルプルプリン。
男性諸君。君はこの文字。いや、音を聞いて。何を、ナニを、ナニするだろうか。
私は、断然、桃派であるが…。
この男は、巨峰派であるようだ。いや、この言葉では誤解を生んでしまうか。
つまり、おっぱい派なのである。ペッタンコから、ウシ乳まで。あらゆるパイを愛する。博愛主義者なのである。博パイ主義者なのである!巨乳貧乳ペッタンコ!すべてのパイを愛し、すべてのパイを愛す男!
サンシャイン・ジャ~スティス!
彼曰く、パイに貴賤はないのだよ、あるとすればそれは男の欲望、趣味嗜好性癖!男たちよ。すべてのパイを愛し、そして、すべてのパイを愛せ!
触れると壊れてしまいそうな、その愛しいものを男は、最大限の愛で、撫でまわし、揉みしだいた。
そして翌日、目が覚めると。気づいた。気づいてしまった。スライムベッドの天井に…自分の顔があることを。
…そして、男は静かに目を閉じ、昨夜の大演説とともに、スキルを封印した。
スキル
乳房…パフパフ(封印)
メイドインクローン。それは最高品質のモノに与えられた称号である。
大鑑定士 エドワード・ワードエド




