第16話 クローン、利益還元祭始めました
漆黒の全身鎧を身にまとったドレイク、サルバさん。
2メートルもある大剣を二刀流である。
対してこちらの魚人は素手。
「己の拳一本で勝負か。」
と、ドレイクさんにその男気を褒められたところですよ。
そんなことはないんです、たまたま魚人のクローンが、武器を持っていないだけなんです。
ホントは、俺は剣に憧れてます。
ドレイクさんみたいに二刀流もありかなぁ。
なんて考えていたんです。
でも、褒められて悪い気はしなかったから、そういう事にしておいたけど。
そうはいっても相手は全身鎧な上にこちらよりも
二まわりも三まわりも体格に差がある。
こちらが素手で殴りかかっても、ダメージひとつ入る気がしない。
上回っているのは素早さくらいか?
少し卑怯だけど、後ろに回り込んで急所を狙うのが確実な戦法か。
急所がわからんけど。
とりあえずドレイクさんの正面に立ち、斜に構える。
久々の手合せのドレイクさんを、がっかりさせるのだけは避けたい。
大地を蹴りこちらから仕掛ける。
正面、大剣の間合いギリギリをめがけ距離を詰める。
一瞬間合い圏内に入り空振りを誘うが、
流石に乗ってこなかった。
とおもったら2撃!
最初の一撃は想定の軌道内だったが、
2撃目はこちらのフェイントを読んでか、
深く踏み込みながらの一撃。
左ももを掠めた!
白い魔力が飛び散りバランスを崩しながら、
スウェーで次の斬撃に備える。
「はは、これを躱すか!」
ドレイクさんは実に楽しそうだ
間合いにはなかなか入れそうにないか、
どうやら後ろを取るのも楽じゃなさそうだ。
「次は我が仕掛ける番かな?」
ドレイクさんは兜の口元を外し、大きく吠えた!
口の端から真っ赤な炎がはみ出した。
ゴァゥ!
鋭く火球が放たれ、瞬間躱しきれないと右手ではじく!
これは陽動だ、斬撃が来る!
右か、左か…
さっきは右から左の斬撃だった。
人は無意識に出る癖がある。
普段は冷静に自己分析をしクセを抑えながら戦うのだけど。
今のドレイクさんは実に楽しそうだ。
体中から喜びがあふれんばかりに剣をふるっている。
こういう時こそ、癖が出やすいはず。
右の斬撃に備える。
鋭い風切り音。
きた!
右の斬撃を身をよじって躱し左の斬撃を右手を犠牲にして外側に弾く
そこにできた間合いの隙間。
深く懐に踏み込み、どてっぱらにカウンターの左正拳突き!
拳が壊れないことを願う。
効いてくれぇぇ!
鎧の真ん中が砕け飛び腹に拳が深く突き刺さる!
そのまま巨躯が吹っ飛び、爆発音のような音を立て壁に激突する!
あれ…まさかの、やり過ぎちゃったやつ?
急いで駆け寄り
「サルバさん!大丈夫ですか?すみません、
まさかこんなに威力があるなんて思わなくて」
「なんと、これだけの力を持っていたのか。
腕力だけならば、あの方にも匹敵するかもしれぬな。
これなら逃げ帰らずとも、容易く通り抜けられただろうに。
これでは、今の我の力など足元にも及ばぬよ、ふふふ。
我は面白きものと巡り会えたようだな。
残念ながら、この体はここまでのようだがな。」
「わぁ、すいません、すいません。なんとか、あ、回復魔法とか使えれば…
今からクローンに回復魔法覚えさせて、向かわせますんで。
いや、間に合わないか、どうしようどうしよう…。」
俺は混乱した。せっかく出会えたばかりの気のいいドレイクさん。
手合せ中とはいえ、命を奪ってしまうなんて。
「ふふふ、心配するな。
我はこのダンジョンに取り込まれた。と申したはずだ。」
「え? 」
どういうことかよくわからなかった。
自暴自棄になったのか?
そりゃこんな暗いところに取り込まれて千年も眠らされていたんだ。
嫌になっても仕方ないか。
「なぁに、明日にはまたこの場所で眠っていよう。」
「…あ、そういうことか!」
ダンジョンの魔物だもんね。
「ふふふ、やはり面白い奴よ。
お前さえよければ、またこの地を訪れて相手をしてくれたら嬉しい。
とりあえず、今回は私の負けだが次もこううまくいくとは思わないことだ…」
「またきます、俺もサルバさんともっと話がしたいです」
「そうか、ではその時を楽しみにしている…
千年ぶりに人と話せて楽しかったぞ…」
ドレイクさんは息を引き取った。
明日には復活するって言ってたけど、知り合った人の命を奪うってことは、
あんまりいい気分じゃないな。
やらなければこっちがやられていたんだけど、今までクローン使って戦ってたから、
命の重みをあんまり感じることなんかなかった。
まさに、ゲーム感覚ってやつだ。
良く考えれば、魔物狩りも、
魔物と命のやり取りをしてるんだよな。
そんな事を考えさせられる闘いだった。
さっきのドレイクさんの話を聞く限りではダンジョンの魔物はまた少し違うみたいだけどね。
そっちはクローンみたいなもんだろうか。
やっぱり、またここを訪れて、ドレイクさんにいろいろ詳しく話聞きたいな。
千年ここにいるって言ってたし、きっとその前もずっと長生きしてきたんだろうな。
そうだ、この先に寝室があるって言ってたけど、いったい誰の寝室なんだろう?
気にはなるけど、ドレイクさんはこの先を守ってたんだよね。
今回はとりあえずこのまま帰るとして、次会った時にでもダンジョンマスターとか
魔王様のこととか聞いてみようかな。
俺は意識を本体に戻し、クローンを作りながらドレイク討伐隊の帰りを待った。
声『スキル<クローン>のレベルが9に上がりました
最大生成数10000(2000)
回収率 100%
最大魔力 25%
操作性 120%
はい、きましたよ。これでもう将軍級になっちゃいましたよ。
どうすんのこれ、このまま中華統一しちゃいますか?
そろそろ、S級装備、唇魔人の矛でも振り回しちゃいますか?
「ココココッ!」って変な笑いかたしますよ!
ファルファルもつれてきちゃうよ!
全然クローンの生産が追い付いていないんですけどもどうしましょう。
最大数ばっかり以上に上がっていくとか、バランス考えたことあります?
派生スキル<魔力回路Lv.1>が発現しました
クローンたちと魔力のつながりを持つことで、
クローンのステータスの一部を本体に再現できます。
ステータスフィードバック 1%
???
急激に体に力があふれだす!!!
派生スキルの効果だ。ステータスの急激な上昇を感じる!
いろいろなスキルの効果で、
クローンたち、めちゃめちゃステータスアップしてるから、
それが還ってくるってなると、軽く今の10倍以上強くなってる感じ?
まずいですぞ、これはまずいですぞ
「クローン優秀!」の自虐ネタがもう使えなくなるじゃないですか
て、ちがうちがう。
これで、本体冒険しろよ!この温室育のビニールハウスボーイが!
って声が聞こえてきそうじゃないですか?
そんなことは絶対にしませんからね~
いくら強くなっても、即死スキルのチート野郎とか、
状態異常スキルのチート野郎に出会っちゃったら、
即おさらばですからね~
知ってるんですからね~だ。この情弱どもが!
ま、とりあえずこれで魔物に襲われたとしても
ひとつ保険ができたと思えばいいことさ
あ、あと魔力の保有量も増えるから
おもらしの心配がなくなりそう
ダメです先生!チートが止まりません!
最後まで…希望を捨てちゃいかん。
諦めたらそこで試合終了だよ。
そんな声が聞こえた気がした。
いよいよ頭がおかしくなってきたみたい。
…。
心の中で、おヒゲのステキな、フライドチキンのおじさんぽいバスケ部の顧問の先生に励まされた俺は、
それから何十体もクローンを回収し、100体近く生成した。
そして、さっきドレイクさんを倒した、クローンが戻ってきた。
さてさて、ドレイクさんはどれほどのスキルを以ていらしたのでしょう。
なんか人のスキルを勝手に覗いて真似してるようで、いい気分じゃないような…。
スキル泥棒なんて称号は要りませんからね
声『称号【職業安定者】を獲得しました。称号に追加します。
≪解説≫クローン1000体にジョブを与えた証。仕事こんにちは!こんにちは仕事!
!?
称号の横には薄ーい文字で(任意)とあった…
これ、今閃いたよね!?
俺が称号って言ったの聞いて思いついちゃったから、
誰かに言いたくなっちゃったヤツだよね!?
「こんにちは仕事!」とかって、新しくお仕事を探しに行く所のコトですよね?
何ギャグで称号付けようとしてんだよ!
いらないよ?絶対要らないよ?
俺は初めて手に入れた称号をあっさりと捨てることになった。
レベル292
生命力 87600
魔力 87600
筋力 8760
体力 8760
敏捷 8760
魔臓 8760
魔導 8760
総魔力量 23,800,000




