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悪夢ー2巨大目玉

作者: オラス
掲載日:2017/08/08

 ――ここはどこだろうか?

 目を覚ますと見覚えのない場所に立っていた。

 とても薄暗い。辺りを見回す。どうやらここは屋内の様だ。

 長く先が見えない廊下。その途中いくつもある茶色の木製の扉。扉のドアノブは金色で鈍く灯りを反射し、光っている。ここの灯りの頼りは壁に掛けてある蝋燭立てのろうそくのみの様だ。壁は赤茶色で金色の紋様が施されている。廊下の先には窓がある。

 ここまで観察してもやはり、ここがどこなのか見覚えがない。

 とりあえずここから出るために廊下の先へ進んでみる。

 コツコツと自分の足音だけが響く。何故か不思議な気分だ。


 ――進む。進む。ただ進んでゆく。

 10分程経っただろうか?

 前が見えない。黒く暗く廊下の先が見えない。どれだけ進もうと終わりがないのだ。

 溜息をつく。どうすればここから出られるのだろうか?

 窓を見る。

 やはり、外も暗く今の時間帯は夜中にある様だ。

 外には木々がうっそうと生え他には何も見えない。他に外の様子が分かることと言えば、木々が揺れざわついているということだ。どうやら雨風が激しいらしい。

 窓を開こうとするがどうしても開かなかった。ただガチャガチャと無機質な音が鳴り、後には息を切らした無様な自分がいる。

 どうすれば開くのか悩んで窓ガラスを割ることも考えたが、割る道具がない。素手で割って怪我をするのは嫌だ。それに、たとえ窓を開けたとしてもここからは地面が見えない。無事にここから出ることは出来ないだろう。ここから無理に出ようとすれば割れたガラス片へと落ちて、更には骨折でもして身動きが取れなくなるのが結末だろう。最悪そのまま死ぬことも考えられる。


 ――ここから出るには別の方法を考えなければならない。

 ドアを開けようとする。

 しかし開かない。

 別のドアを開けようとする。

 しかし開かない。

 何度も何度も、いくつもあるドアを開こうと試すが開かないのだ。

 諦めて先の見えぬ廊下を後戻りする。

 道中の窓、ドアを全て確認するがどれも開かない。

 それらは全て同じ形、同じ色、同じ素材。全てが同じだった。

 20分が経ち、30分経ち、先が見えない。それでも進み2時間程経ったか?やはり先が見えない。

 諦めてまた、逆の方向へと廊下を後戻りする。

 道中で三回程ドアノブを回し確認するがやはりドアは開かない。

 諦めてただ進む。


 ――そのうちにここからは出られないのではないか?自分の居た場所、自分の家には帰れないのではないか?と不安になってくる。

 窓がある。

 それを回し蹴りで割ろうとする。かなり勢いつけたつもりだ。

 しかし、窓は割れない。

 素手で割ろうとする。

 割れない。

 10分程窓と格闘し、諦める。

 疲労で崩れる。手を確認するが痛みはなく、怪我もどこにもない。それを不思議に思うが何故かは分からない。

 しばらくして、起き上がりまた歩を進める。

 蝋燭立てを見る。蝋燭が何かに使えないかと取ろうとするが取ることは出来なかった。全体重をかけてぶら下がってみるがびくともしない。その際、不思議なことに熱さは何も感じられなかった。

 また、歩を進める。

 今度は壁に注目しながら歩く。しかしどれだけ進もうと変化は何もない。

 壁に触れてみる。滑らかな壁だ。そのまま手で壁を擦り、紋様をなぞる。何も仕掛けなど見つからなかった。何もなかったのだ。ただの壁だった。

 途方に暮れて、それでも廊下を進んでいく。これしか出来ないのだ。これしか…。

 30分…1時間…2時間…3時間…6…10…1日…2日…

 どれだけ進もうと何も変わらない。

 どれだけ時間が経とうと何も変わらなかった。

 諦めて立ち止まり、座り込み嘆いた。


 ――もう駄目だ。諦めてここでこの身が朽ちるのを待とう。

 そう嘆いた。嘆いて諦めたその瞬間見えない廊下の先に何かが見えた。確かに何かがいる。誰かがいる!

走った。とにかく走った。がむしゃらに。その何かを逃さぬように、それを確かめるように、希望を獲るために。

しばらくして、それがはっきりと輪郭を帯びてきた。

嬉しくて堪らない。更に進めばより大きく映る。ようやく獲られる希望、ここから出られるかもしれないのだ。更に速く駆ける。すると足が見えた。


 ――人だ!誰かに会える!

 だんだんと近づいていく。もっと速く駆けて、もっと早く会いたい。しかし、何故か足が言うことを聞かない。足はだんだんと重く、何かに掴まれて引っ張られているかのような感覚だ。それでも前へ進む。今度は足だけではなく体全体が重い。体の芯から震えが止まらない。とても寒い。こんなところで止まる訳にはいかない。歩を進める。あと少しなのだ。あとちょっと。

 50メートル…30メートル…20メートル…

 ようやくその姿がはっきりとこの目に映った。

 それはこちらを振り向いた。

 ようやくそれと目が合った。

 声を上げようとする。しかし、体が動かない。口一つ、瞼一つ、指一本動かない。

 それは巨大な目玉だった。目玉の大きさは横幅で2メートルはありそうだ。全長は5メートルから7メートルか?目玉からは巨大な足が三本生えている。天井にぶつからないようにする為か、足を折り曲げているせいで詳細な大きさが分からない。

 その目玉の化け物はこちらを見つめて動かない。その恐怖に声を上げて、今すぐに逃げ出したい。しかし許されない。視線一つ逸らすことも出来ずにその恐怖を見つめ続けるしかない。


 ――10分経った…。

 それはとてつもなく長い時間に感じられた。まるで永遠を味わっていたかのような気分だった。

その目玉の化け物は突如として目の前から消えた。一瞬で跡形もなく、最初からいなかったかのように。

目玉の化け物が消えて安心する。しかしここから動くことが尚もできない。





 ――そのままの状態で何時間、何日、何ヵ月経っただろうか?


 あの化け物を見たとき、ほんの数分の出来事が恐怖で永遠に感じられた…。そのつもりだった。しかし、今のこの恐怖はそれを遥かに上回る。体は朽ちることなく。何も出来ずに。心は砕けて…。




――まさしく永遠を得ようとしているのだ。


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