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「で、朝はどうしたの?」

 昼食の時間。覗いてみた食堂が混んでいた為、大学内のコンビニで調達し外のテラス席に三人はやって来た。

 一口かじったサンドイッチをしっかり飲み込み、ついでにお茶を飲んで一息つき、真莉亜は真剣な目で竜一と直巳を見据えた。

 「運命を、感じたの」

 「は?」

 思わず直巳が怪訝な声を上げるが、真莉亜には届いていないようだ。

 「薄い肩、細い脚、頼りなげな華奢さ…可愛い…可愛いわっ!守ってあげたくなっちゃう!あれこそ理想、好みのドストライクだわー!」

 竜一が「あちゃー…」と言っているのが聞こえ、圧倒されていた直巳がどういうことだと視線で問う。

 「あの小動物みたいな見た目、ちょっと不安そうにきょろきょろしてる表情なんて…っ!もう抱きしめたいし、食べちゃいたいッ!」

 「…おい森田、どうなってるんだよ?どんどん発言がヤバくなっていってるぞ…」

 「あー…こうなっちゃったかあ。もしかしたらとは思ったけど、現実になるとは」

 「何がだ?」

 「ごめんごめん。昨日は大丈夫って言ったけど、それ忘れて?大丈夫じゃないみたい」

 「だから何がだよ!」

 小声で言い合っていた直巳と竜一だが、なかなか本質に辿り着かないことと、ついでに耳に入り続ける真莉亜の念がこもった言葉の相乗効果に早々にキレた。

 「本人も言ってる通りなんだけど、真莉亜ってちっちゃくて可愛いものが大好きなんだよね。人であれ、物であれ」

 「好きって…」

 「あ、別にレズとかじゃないよ?そういう意味の好みってことじゃなくて、純粋に可愛い対象を愛でたいんだよ」

 「そうよ。そこに邪な感情なんて一切含まれていないわ。私の愛を汚さないでちょうだい」

 どうやら直巳と竜一の会話はしっかり聞こえていたらしい。聞き捨てなら無いと二人を睨みつけ、真莉亜が堂々と宣言した。

 「小柄、華奢、幼げ、愛らしい等々まだ他にもあるけど私の好きなタイプよ。ところで直巳、私はどう見える?」

 「真逆だな。背の高さにしても顔立ちにしても、とても小柄や幼げとは評せない」

 直巳は半ば自棄になりながらはっきりと言ってやる。

 「そう!そうなのよ!持って生まれたものを恨んだことはないわ。そんなの両親に申し訳ないし。でも、でも!私の意思とは逆にすくすく育っていく身体、キツめの美人なんて言われる顔立ち、私は憧れの姿に近づく事も出来ないわ!むしろ育つ度に離れていく!」

 だったら!と真莉亜は拳を握りしめて、再び力強く宣言する。

 「私好みの可愛い物や人に囲まれたいのよ!わかるッ?」

 ((わからない))

 直巳と竜一は、心の中で確かに共鳴した。

 「昨日の真莉亜の反応見てもしかしたらとは思ったけど、現実になるとはね。しかもここまで。まあ確かによくよく考えれば外見は真莉亜好みだったし、となると…」

 「決まっているでしょ、竜一」

 真莉亜がそこで一旦言葉を切ると、何故か重々しい空気が流れる。そんな空気見えるはずもないのに、偶然通りかかった男子学生がびくりと身体を震わせ、自分の周りを怯えた様子できょろきょろと見回し足早に去って行く。

 直巳の強面の顔は更に顰められ凶悪面だ。竜一も笑顔のままでそっと目を逸らす。

 「お近づきになるのよ」

 「ちゃんと段階踏んでよ?いきなり襲いかからないでよ?」


「何言ってるの、怖がらせるようなことしないわ。ちゃんと友達になって、親友になって、ソウルメイトになるわよ」

 「ハードルが高すぎない…特に最終進化系が」

 荒ぶる真莉亜に対してのんびりと答える竜一は、さすが幼馴染として長い付き合いだった。困惑したのはほんの一時だけだったようだ。ちなみに、直巳は未だに混乱中なのでもう何から尋ねていいのかわからず、口をはさむのを放棄した。眉間に寄ったしわを伸ばそうともんでいる。

 「目標は高く!時間はたっぷり四年間あるんだから、絶対に達成してみせるわ。ということで竜一、直巳も協力してよね」

 「はあ?」

直巳は思わず間抜けな声を上げてしまった。


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