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入学式翌日は教科や単位について等を説明するガイダンスだった。これを参考に自分が受ける授業を選択していくのだ。
「おはよー」
直巳の隣の席に着いたのは思った通り竜一だった。
「ああ」
「あれ?真莉亜来なかった?」
素っ気ない直巳の返事を気にもせず、竜一はきょろきょろと辺りを見回す。
「いや来てないが。どうしたんだ?」
「せっかくだし一緒に行こうかなぁと思ったんだけど、先に行ってるってメール来てさ。でも、どこにいるんだろ…」
バタバタッ、ガタッ!と騒がしい足音が近づいてきて、そのままの勢いで教室に駆け込んでくる。おそらく入口かどこかにぶつかったが。
「いたた…あー間に合った…」
真莉亜だった。
音に驚き、何事かと振り返った室内からの視線など気にもせず、若干疲れた足取りで直巳と竜一のもとへとやって来た。
「おはよう。朝からヒールで全力疾走なんて元気だね真莉亜」
「おはよ…。やむにやまれぬ事情があるのよ。ねえ、あの子は来てる?」
「あの子って?」
「ほら昨日見かけた黒髪の女の子よ」
徐々に息を整えながら真莉亜は竜一の差し出したペットボトルをありがとと受け取り、一気に三分の一ほど飲み干す。そして声のトーンを落としながら竜一と直巳に問う。
「まだ見てないけど…」
「いや、あそこにいるぞ。窓側の所だ」
「あれ本当だ。いつ間に居たんだろ?全然気がつかなかった」
直巳が目線で示す方には、背中まで黒々とした髪に覆われたあの小さな女の子が座っていた。隣には誰の姿もなく、女の子はひとりぼんやりと窓の外を眺めている。
「もう来てたのか~」
「ほんとにどうしたの真莉亜?」
「うーん…あ、あとで話すわ」
前方のドアから教員らしき男性が入ってくるのが見え、三人は一旦会話を打ち切る。そして講師の説明に耳を傾けた。