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もう一度会えるのなら  作者: INO
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プロローグ

初投稿です。お手柔らかにお願いします。

一応確認しましたが、もし誤字脱字があった場合は優しく指摘していただけると嬉しいです。

 


 これはこれから僕が呪われる原因となった話。



 それは中学2年生の夏休みのこと。

 蝉の鳴き声が耳に馴染んだ頃の8月上旬。

 テレビのニュースも連日真夏日だと言っていたのに、その日はなぜかたまに吹く風が冷たかったことをよく覚えている。


 その時の僕はある女の子に恋をしていた。

 相手は幼稚園からの幼馴染みで、あの子をいつ好きになったかなんて覚えていないし告白しようと決心した数も覚えていない。

 ただ今まで一度も告白はできていない。昔の僕はとても臆病者だったのだ。


 地区の交流キャンプで星空を見たとき、放課後2人で学校に残って合唱コンクールの練習をしたとき、意を決してあの子に手紙を書いて呼び出したとき。

  何度も告白しようとしたが、その度に言い訳を考え、自分を納得させ逃げてきた。


 幼稚園の頃は手を繋ぐこともできていたのに今はそれがとてつもなく遠く感じる。

 学校でもよく話すし、LINEもよくする。

 ただ告白になると、あと一歩が踏み出せずにいる。

 本当に情けない…。



 そんな僕が中2の夏休みの初日にあの子を

 夏祭りに誘ったのだ、もちろんLINEだが。

 あの子はどう思っていたかわからないが僕はデートのつもりで誘った。

 つまり臆病者の僕にとっては一世一代の勝負に出たわけで、その時はもし断れたらどうしようと悪い方向にばかり考えていたが


「いいよ(^^)私も楽しみだな(*´ω`*)」


 というあの子らしいLINEのおかげでそんな不安は吹き飛んでいた。

 ただやっぱりそれから夏祭りまでの10日は気が気ではなかった。


 毎朝7時には起きて朝食を食べ、一息ついたら午前中から宿題をしていた。

 そして、何もない日はそのまま1日中宿題をしていた。

 何か頭を動かして現実を忘れられるようなことをしてないと楽しみで落ち着かなかったのだ。


 さらに後日友達とサッカーをしに遊びに行ったとき、それに誘ってくれた親友、武藤伊臣むとうただおみに何も言っていないのにデートに行くことがバレる始末に…。

  理由を聞くと気持ち悪いぐらいニヤニヤしていたらしい。


「あの子かわいいから、男子人気も高いぞ。まぁでも、お前ならいけそうだから頑張れよ。」


 など根拠の無い励ましをくれる奴だが、付き合いも長くいつもは気が置けないいい奴だ。

 他に変わったことも無く、そんな感じで宿題を消化しつつ当日を迎えた。



 地毛の癖っ毛茶髪に慣れないワックスつけながら、こんな日ぐらい甚平じんべいを着るか迷ったが、せっかく伊臣ただおみが服を貸してくれたのでそっちを着た。


 家から祭り会場までさほど遠くないので徒歩で行くことにした。

 夕方だったが肌を撫でる風が涼しくて、自然と足取りも軽くなり待ち合わせ場所にはだいぶ早く着いてしまった。

 もちろんあの子の姿は無かったが、そんな待つ時間すらも楽しく感じた。


 どれくらい経っただろうか、祭りに行くであろう浴衣を着た人たちをちらほら見かけるようになった時。


「来るの、早いね。」


 後ろから声が聞こえ振り向くと、そこには鮮やかな色の撫子なでしこの咲いた浴衣を着たあの子がいた。


「浴衣どうかな、あんまり着ないから…似合ってるかな?」


 恥ずかしそうにあの子は聞いてきた。


「……きれい」


 --しまった!


 思っていたことが口から漏れてしまった。

 自分の口の緩さに焦ると同時に、僕は想像より考えや気持ちが口や表情に出やすいタイプなのだと知った。


「あ、ありがと。」


 と、あの子が顔を赤らめるのを見て安心したが、僕もなんだか恥ずかしくなって


「う、うん。」


 ぎこちなく返事をした。

 誰かに見られてるわけでもないが、その場から早く離れたくなった。


「とりあえず行こっか…」


 あの子は頷いて、僕の横に並ぶと二人で会場まで歩き始めた。

 横目に見る彼女の顔は耳まで赤く、そんなところが可愛いと思った。

 そんな横顔をずっと見ていたいと思ったが、そう言うわけにもいかないので話しかけようとしたら瞬間


「宿題終わった?」


 先に沈黙を破ったのは僕ではなくあの子の方だった。


「あと、国語だけかな。そういえば、数学はまだ習ってないところが出てなかった?」


「そうそう!出てたよね!」


 なぜか嬉しそうに答えるあの子を見て少しホッとした。


「あ、そういえば……」

 

 少しわざとらしくあの子が話を切り出す。


「ウチのクラスの優子ちゃん、バスケ部の高田君と付き合うことになったんだって」


 それを聞いてふと思った。


「吉見さんって隣のクラスの原谷のことが好きじゃなかったっけ?」


 ここで言った吉見さんは、あの子の言う優子ちゃんのことだ。


「それだけじゃなくて原谷君も優子ちゃんのことが好きだったらしいよ。」


「なら、何で高田と?」


「二人とも大人しい性格だから想ってただけで何もなかったんだよ。だから、その間に高田君が積極的にアピールしたらしいよ。」


「へぇ~、そうなんだ。」


 普通に返事をしたつもりだが本当は気もそぞろだった。

 なぜならあの子の言うことが他人事のように聞こえなかったのだ。

 背中に汗をかきながらも意気込む。


 --今日こそは絶対に!


 すると、遠くから祭囃子まつりばやしや歓声が聞こえてくる。

 祭り会場に着いたのだ。

 御輿を担ぐ人に屋台で商売をする人、頭にアニメキャラのお面をつけて笑う子ども。

 祭りは活気に溢れていた、ただ予想より人が多い。


 --友達に会いたくないな


「これだけ人がいたら友達に会っちゃうかもね!」


 あの子と僕はどうやら考えが違うようだ。


 --まぁでも2人で祭りに来ているところを見せつけることが出来ればあの子に悪い虫も寄らなくなるか


 そう考えると、むしろ友達に会えた方がいいのではと思うようになった。


 --てか、まず楽しまないと!


 もう晩御飯にするにはいい時間になっていた。


「何か食べよ、何がいい?」


「りんご飴かな~?」


 その屈託のない笑顔でこっちまで笑顔になる。


「なら行こっか」


 りんご飴にわたあめ、金魚すくいに射的、何軒か屋台をまわっていると、さらに人が増えてる気がした。

 その時、あの子が転びそうになった。


 --危ない!!


 瞬時に肩と腕を掴む。


「大丈夫!!?」


「大丈夫大丈夫、平気だよ!」


「良かったぁ」


 その言葉に一安心する。


 --あ……


 今しかないと思った。


「また転けると大変だから」


 あの子の手を優しく握り、返事を待たず歩き始める。


「ありがと……」


 背中から小さな声が聞こえてきた。

 拒否されなくて良かったが心臓が今にも爆発しそうだった。

 そしてそのまま手を繋いで祭りを楽しんだ。

 ただ楽しい時間はあっという間に過ぎていき、そろそろ帰る時間になった。

 手を繋いだまま帰路につく。


 帰りは夜道を女の子一人では危ないから集合場所でなく、あの子の家の近くの交差点まで送ることになっていた。

 交差点につくまで告白することで頭がいっぱいで黙っていたのだが、あの子もなぜか静かだった。

 おかげで往路の時と打って変わって僕らの間には静寂な時間が流れていた。


 交差点に着いた。

 赤信号を待っている今しかないと思った。


「最後に一ついいかな」


 あの子は返事こそしなかったが、僕の方を向いたのはわかった。


「実はまだ言ってないことがあってさ…」


 僕もあの子の方を向く。

 空気感を理解してあの子も真剣な眼差しで僕のことを見ていた。

 その綺麗で何もかも吸い込んでしまいそうな眼で見つめられると、石のように僕の口は固く動かなくなる。

 それでも無理やり言おうとすると


「あのさ…ずっと前から…ずっと……」


 その先は無かった。

 まるで神様が告白はするなと言っているようだった。


「どうしたの?」


 言葉を途中で止めた僕を、あの子は心配してくれる。


「いや、うん大丈夫。な、何でもないよ。何かごめんね!最後に変な空気にしちゃって……」


 また臆病者は逃げた。

 思うだけで、何もできず何も言えず最後の最後に結末を恐れて逃げた。

 何か察したのかあの子はとても悲しそうな目をした。


「またなんだ…」


 あの子は小さく呟いた。


「え?」


「もういい、こっちこそゴメンね。またね。」


 あの子の手は僕の手をすり抜けて駆けていく


 ――待って!


 言葉には出なかった。


 横断歩道の途中で振り向いたあの子の目には涙が浮かんでいた。


 その瞬間だった、あの子にトラックが衝突したのは。




 トラックはそのまま歩道に進入して塀に衝突して止まった。

 僕は何が起こったのか理解できないままあの子の方を向く。

 それはまさしく人が物になった瞬間だった。

 あの子はあれになっていた。

 血を流し、体はありえない方向に曲がりあれは倒れていた。

 僕は駆け寄ることもできず呆然とあれを眺めることしかできなかった。

 そしてやっとあれに起こったことが理解できた。



 クラスメイトで友達で幼馴染みで初恋の人である、あの子は富士野紅葉ふじのもみじは死んだと。




1話はこれから書きます。

次がいつになるのかは分かりません。

本当に申し訳ございません。

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