第八話†発言者が違うと†
夕方、淀んだ溜め息を飽きるくらいに着こなした電車に乗って、俺はいつも通り帰宅しようとしていた。
「いつもいつも、同じ風景だよな、はあ……」
「あの、腕が胸に当たっているような……」
俺はその男声が聞こえた先へ一瞬で振り返った。見るとそこには部下の柏崎がいた。柏崎は彼の後ろにいる女性の方を振り返ってそう発言していた。
すると、その女性は柏崎にこう返事をした。
「当てているんですよ」
おい、柏崎、美人局かもしれないから注意しろよ。俺は彼を内心憎みながらそう返事をした。
案の定、その女性は美人局だったらしい。柏崎は翌日、俺に泣きついてきた。
そんな部下に泣きつかれた日の夕方、淀んだ溜め息を飽きるくらいに着こなした電車に乗って、俺はいつも通り帰宅しようとしていた。
「いつもいつも、同じ風景だよな、はあ……」
「あの、腕が胸に当たっているような……」
俺はその女声が聞こえた先へ一瞬で振り返った。見るとそこには部下の飯田がいた。飯田は彼女の前にいる男の方を見てそう発言していた。
すると、その男はこう返事をした。
「当てているんですよ」
俺は携帯電話を取り出してメールを送信した。
案の定、次の駅で警察が来た。そして、その男は現行犯で捕まった。