ENDING~忘れ去られた約束~
待ってた。
ずっと待ってた。
それでも君は来なかった。
~1年前~
「・・・さよなら・・・。」
僕には、幼馴染の友達がいた。
その子が海外に引っ越すのを聞いたのは9月のはじめだ。
「・・・嘘でしょ?本当に引っ越すの?」
「うん・・・ごめんね、お父さんの仕事の関係でアメリカに行くの。10月頃に引っ越すんだって。」
電話の向こうでこんな話をしていた。
月日が経つのは早い。
あっという間に10月の、その日になってしまった。
「・・・本当に行くんだね。」
「・・・ん、うん・・・。」
「アメリカか・・・遠いね。」
「うん・・・私だって行きたくないけどさ・・・英語全然喋れないし・・・。」
「不安いっぱいだよね・・・でもアメリカに行ったら僕の事なんか忘れて、友達たくさんつくってね。じゃあ・・・さようなら。」
「・・・そんなこと言わないでよ・・・!さよならなんて言えないよ今更・・・やだ・・・私行かない!」
「・・・・・・じゃあ、約束しようよ。」
「・・・何を?」
「そうだな・・・1年後の10月のこの日に、またここに来てよ。その日まで覚えてたら、本当の親友でしょ。」
「・・・うん・・・絶対忘れない!」
夕焼けの下で指切りをしたあの日。
1年間、覚えてられるかな。
ノリであんなこと言っちゃったけど、本当に覚えてられるかな・・・
あの日から一年が経った。
僕は不思議にも、その日にここに来る事をはっきりと覚えていた。
普段は約束なんか忘れちゃうんだけど、この日だけは。
「いるかな・・・あっ!・・・って違う人か。やっぱり忘れちゃったかな・・・。」
僕はずっと待っていた。
だけど、来なかったんだ。
君は。
急に怒りが込み上げてきた。
なんだよ、さよならなんて言えないとか言ってたくせに!
忘れないって言ってたのに・・・
やけくそになって、僕は走った。
「バカヤロー!裏切り者!」
きっと君はその約束を忘れている。
そう思う度に、その走りは速く、強くなっていく。
「・・・えっ。」
僕は驚いた。
いつの間にか、知らない海のほとりに来ていた。
そんなに疲れていないのに。ここらへんに海は無いはず。
「あっ。何だろ。」
海にビンが浮いている。
中に紙が入ってる。何だろう。
・・・
私です。
ごめんね、私、病気になっちゃって。
でも、約束、忘れてないよ。
病気が治ったその時に、あの場所へ絶対に行く。
だから、待っててください。その時まで。
私からの最後のお願い。
最後の最後のお願いなんです。
この手紙が無事にあの人へ届くかは分からないけど・・・
届かないと思うけど・・・
もしあなたに届いたなら、私からの最後のお願いを聞いて下さい。
待ってて
・・・
そうだったんだ。
君からの手紙、ちゃんと届いた。
だから最後のお願い、聞いてあげます。
だから待ってるんだ。
今も待ってるんだ。
「その時」が来るのを楽しみにして。
この物語の「ENDING」がどうなってしまうのかは分からないけど。
待ってるんだ。
昨日も今日も、きっと明日も。
待ってるんだ