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親父と夏祭り

作者: 大森 春近

「お前とこの祭りに来るのは何時ぶりだろうな。」

「親父と最後に来たのは俺が小学生時じゃないか?」


 俺は今、親父と地元で一番大きな夏祭りに来ている。俺は県外で就職したためいつもはお盆が過ぎると仕事に戻るために早々に実家をあとにしていたのだが今年は少し長めに休暇が取れたため久々にこの夏祭りに参加できることになった。

 地元は大都市ではないが一応地方の中心都市なので田舎というほどではない。そこでの一番大きなこの夏祭りはそこそこの規模がある。中央公園を中心に広範囲の道路が封鎖され屋台が立ち並んでいる。


「よし、はぐれた時はここで合流しよう。」


 公園の入り口から少し脇に入った所でそう言われる。確かにこの人ごみだとたとえ携帯で連絡を取り合いながらでも互いを見つけるのは困難だろう。

 すでに日が落ちているので日差しがないぶん涼しくはなってきていたが夏祭りの会場はそれを補うほどの人々の熱気で溢れかえっていた。

 ふと隣を見ると早速親父がいなくなっている。慌てて周囲に目を向けるとスタスタと歩いて公園の中に入っていく親父の姿を見つける。移動するなら声ぐらいかけろよと思いつつ親父を見失わないように追いかけた。どうやら目的地があるようで一直線に公園の一角に建てられている白いテントに向かっているようだ。

 なんとか追いつきテントの中を確認するとそこはどうやら飲料を販売しているところらしく親父がビールを注文している。


「夏祭りに来て最初にする事がそれかよ!」


 思いだした。親父は小学生の時、一緒に来た時も最初にビール飲んでたわ。


「いいじゃないか。祭りの時ぐらいかまわないだろう。」

「親父は祭りじゃなくても年中飲んでるだろ。」


 俺は逆に酒は付き合いの時ぐらいにしか飲まない。別に飲めない訳でも嫌いな訳でもないのだが年中飲んでいる親父を見ているとこう………な。


 そのまま何か食い物でも買おうと屋台を眺めながら会場内を練り歩く。


「あいつも来れば良かったのにな。」


 あいつというのは母さんの事だろう。一応出かける前に誘ったのだが。


「人ごみは疲れるから止めておくよ。父さんと二人で行ってきな。」


 と言われてしまった。休日のデパートの人ごみに突撃しているくせに何を言ってるんだか。

そんな事を考えながら目に付いたカキ氷の屋台でカキ氷を買ってくる。


「食い物買うんじゃなかったのか?」

「暑かったからな。それにこれも一応食い物だ。」


 せっかく祭りに来たのだからそれっぽい物をと思いながら吟味しつつ屋台を巡っていく。一通り食べ終わる頃には結構な時間が過ぎていたのか、ちらほらと片付けを始める屋台が出てきていた。


「そろそろ帰るか。」


 なんか食べる事しかしてないなと思ったがそれなりに楽しめたので良しとしておく。家路に着こうと歩き始めたところで親父が俺の頭に手を置きながら言った。


「また今度一緒に来ような。」


 子供扱いされているのは気のせいだろうか?


 

地元の一番大きな夏祭りは三日間かけて行われる割と大きいものでした。

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