人世界・大地の果て・千年の想い
無限に広がる大地。
周囲には岩と砂しか無いと思わせる程の広大な荒野に一匹の竜が居た。
黒く、しかし瞳は赤い二対の翼を持った巨大な竜
この世では【最古竜】と呼ぶに相応しい牙を持ち、吐く炎は全てを燃やし尽くすであろう。
ーーしかし
竜は息絶える。
体には無数の傷、飢え、失血、孤独。
様々な死の原因が千年の時を迎え竜に襲うのだ
ーー千年
最後に争いーー【殲滅】を行った時代。
人類が様々な兵器を用い、亞人が力と数で襲い、精霊が魔法で竜を撃つ。
あの時、理由は有って無いような物だが確かに「世界の種族」の悪意が「一匹の竜」に向いたのだ。
刃向かう人類には灼熱を、歯向かう獣には爪と牙を。
その竜は襲いかかる無数の命を残らず狩った。
ーー故に千年。
竜の周りは荒れ果てた大地となり、草木の一本すら生えなくなってしまう。
吐いた炎で焼けた砂と岩が、自身の負った無数の傷が千年前を物語ってくれる。
しかし竜は動かない。
唯一の友との約束を守る為に。
「千年、やっと我が身体は朽ち果てるか。」
死を待っていたかの如く竜は思いを言葉に吐き出した。
無数の傷も、限界の飢えも、足りない血も、心許さぬ思いさえも竜は受け入れた。
全ては「友」の為に。
「待たせてしまったな。さぁ、今逝くぞ・・・友よ」
世界に唯一の【竜】
遥か昔、人類に知恵と破壊を授けたと謳われた伝説の【黒竜】が今、人世界から姿を消した。