#15 時を操る者
「さて、そろそろお遊びもここまでです。」
銃弾を避けるため、時間を操ろうとするが、
「おっと時間を操って避けようとでも思っているのでしょうが、残念ながらそれは出来ませんよ?
私のもう一つの能力。それは触れた相手の能力を5分間発動出来なくする能力。Annulation|《無力化》|」
触れた相手の能力を5分間発動できなくする能力。時間を操る能力が発動できなくされ、使えなくなる。
ということはまもなく銃弾の雨に晒され、待つのは死のみ。
武藤の表情は勝利を確信した笑みで満ちていた。
「フッ、フフフ・・・ハハハ!!!」
「何を笑っている余裕があるんですかね?あなたは間もなく死ぬのですよ?」
「その能力は1回につき1人しかかけれない。つまり1度かけたら5分間はその能力は使えない。」
「それがどうかしたのか!時間稼ぎのつもりか!?とっととくたばれ!」
武藤がリモコンを押すと壁に備え付けられた機関銃が動き出し、一点を撃ち続ける。
何千発というあまりの弾丸の数に、そこは硝煙が立ち込めて姿が視認出来ないほどだ。
全ての弾が撃ち終わり、轟音が鳴り止む。人間ならば、あれだけ喰らえば肉片も残っていないだろう。
ガシッ
武藤は後ろから首を掴まれる。
「な・・・に・・・」
武藤は何故お前が生きていると言おうとしたが、首を強く掴まれて上手く声が出ない。
「お前はあるミスを犯した。それは時間を操れるこの僕に時間制約のある能力を使ったことだ。
その能力は発動出来なくする能力。もし、その能力を使う事を見越して俺自身の能力を予め発動して、時間を加速していたとしたら?
俺は既に5分を経過させているが、そしてお前は5分を経過させていないため、再発動は出来ない。」
「だが・・・俺の能力はこれだけじゃ・・・な・・・」
「だが、もう遅い。」
「まさか・・・!!!」
武藤の時計の針を少しずつ、少しずつ左に回して行く。
武藤は少しずつ若返り、能力を無くしていく。やがて、能力を奪う能力さえも。
ベレッタを取り出し、銃口を頭に向ける。
「・・・」
パンッ
乾いた音が室内に鳴り響く。
武藤は何が起こったのか分からないといったような顔で絶命している。
これが、私利私欲のために命を弄んだ悪魔のような男の最期。
何の為に最強の能力を作ろうとしたのか、それを得ようとしたのかは分からないし、知りたくもない。
ただ、この男の最期にはこんな滑稽な姿がふさわしい。
「終わった・・・」
全身の力が抜け、崩れ落ちる。
体にもう感覚はない。かろうじて目と口は動く程度だ。
外傷はそれほど酷くない。強いて言えば蹴られた腹ぐらいだろう。
僕がこんなにも衰弱しているのは、最後の力を使い果たしたからだ。
・・・時間を操る能力を。
「時間を戻す事に関してはただ早くしたりすることよりよっぽど負担がかかる。」
「何でですか?」
「本来は出来ない事を能力を限界まで酷使してしているからだよ。負担は計算上時間を止めることの約150倍。」
「・・・単刀直入に聞きます。僕にこれを使うなと?」
「使うなとまでは言っていない。ただ乱用はするなということだ。今のお前の体だったら耐えられる回数は7回だろう。」
「それ以上使おうとすれば?」
「間違いなく死ぬ。体が負担に耐えられなくなって機能を全て停止させる。」
「・・・」
御堂の言葉を思い出す。
これで8回目。御堂の言葉通り、体に掛かる極度の負担で銃の引き金を引くだけで精一杯だった。
もうすぐ僕は、死ぬ。
「よくもまあ、無様な姿になったもんだねぇ。」
目の前に赤髪で顔にタトゥーを入れた白衣の女性が現れる。
その顔はいかにも狂人じみた笑いに満ちており、考えを読む事が出来ない。
「お前は・・・」
「クックック。喋らない方がいい。いや、喋らなくても別に死ぬのだけどね?
何故ここにいるとでも言いたいのだろう?私を舐めないで欲しいものだね。こんなことはこの天才にかかれば簡単なことさ。
この私、御堂透子にかかれば不可能などないのだよ。
そこで血を流して死んでいるロクデナシのデクノボウとは違ってね。」
御堂は武藤をまるでゴミを見るような蔑んだ目見つめる。
この女のここまではっきりとした嫌悪は初めて見る。
「さて、無駄話はここまでだ。単刀直入に聞こう。
生き残りたい?
このまま死にたい?」
「・・・何でそんなことを聞く。」
「いや、このカスを始末してくれた報酬をやろうと思ってね?別にこのまま死を望むならそれは自由さ。」
「・・・」
生き残るか
それとも死ぬか。
「絶対生きて帰ってきてね。約束だよ?」
散々な死ぬ死ぬ言っておいて、全く適当な奴だ。
そんなもの、答えは決まっている。
「俺は・・・」




