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プロローグ
「ここは・・・?」
目が覚めれば、一面白の不気味な部屋のベッドに寝かされていた。
目がチカチカする。しかし、妙に見慣れた景色だった。でも、ここがどこかは分からない。何故ならば私にはここに寝かされる前の記憶がないからだ。
「私は・・・私は・・・」
必死に思い出そうと努力するが、信じられないほど頭の中は空っぽで何も出てこない。
せめて、私の名前だけでも・・・
「夕姫」
頭の中で男の子の声が聞こえる。
それと同時に不意に私の口から同じ言葉が出ていた。
ゆき。
夕姫。
私の名前は、夕姫。きっとそうに違いない。
「夕姫」
頭の中でその声だけが響きわたる。
「貴方は誰?私の一体何なの?」
返事はない。でも声を聞いているうちに、シルエットだけは思い出してくる。
ちょっと頼りなくて、でも、頼りになる、
ちょっと可愛いけど、でも、かっこいい、
そんな男の子のような気がした。
名前は、思い出せない。