大地に記す確かな足跡
「姫、ご決断を」
もう、他に策はないだろう。
「分かりました。この国を救うためには致し方ありません」
私は宣言した。
にも関わらず、実は全然自信もない。
明日から今までとは違う日々が始まる。
本当に色んな意味で。
「暫くはこの城ともお別れですわね」
感慨深い事をメイド長のメアリが言ってくれる。
そのメアリさえ居なくて耐えられるだろうか。
不安が強くなる。
「姫ならば大丈夫でございます」
「ローラと呼んでと言ったでしょ。はい、呼び直し」
「でも」
「明日からイヤでもそう呼ばれるんだから。身分は隠すのが定石でしょう」
「…は…い…ロ…ローラ、明日は早いのでもう寝支度を」
何かもぞもぞ様とか小さく聞こえたような気もするけど、メアリの頑張りにそこは軽く流してあげた。
私はふかふかのベッドへお気に入りのぬいぐるみを抱いた。 それを見届けるとメアリがようやく退室した。
これで思う存分泣けるというものだ。
翌日、食堂のテーブルにはとても食べきれない量のお昼が置いてあった。
「ええーっ」
思わず上げてしまった声の大きさで判断して欲しい。
「これがわたくしたちができるお礼ですから」
感慨冷めやらぬ雰囲気の中、朝食を食べると巨大な昼食の包みを膝に載せると馬車に落ち着いた。
走り出すとすぐに城は小さくなった。