表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/34

06.衆合 (しゅうごう)(2/2)

>>―Side A― 九貫視点からの続き。

         -Side B-


 それに気付いたのは、蒼穹が朱を帯び始めたくらいだろうか?

 それに気付くに至るまでは、俺はただ一つ、あの光景を夢想の中、いや悪夢の中で繰り返していた。



 ――紅蓮に燃える焔、火影の狭間に揺れる人は奇妙で、自分と、相手の境が分からないほど、周りは血塗られていた……。

   泣き叫ぶ赤子、彼はそれを踏み潰し、呆然とするその母親、彼はそれを斬り裂き、刃向かうその父親、彼はそれを砕き殺す。

          面白いように、まるで地を這い擦る虫の大群を土足で踏み潰すような容易さで……。

      吐き気がするほど、喜劇のように、屠、斃、顛、跋、蹂、躙、壊、握……殺戮の宴。


      赤い、紅い、朱い、ひたすらアカイ、赫怒を模した形相。

      それは正しく、人外。荒人神。鬼。


                遠い、遠過ぎる中天に向かって、紅い鬼が吼える、哭き喚く。


            心裂かれるほどの痛み、最後まで続かなかった思い……



                            鬼が泣きながら、笑っていた――



「……ん? 已然形活用の活用は『ど』『ども』? 係助詞……、なむ? 南無? にゃむ?」

 気が付くと、何やら同じ日本語(と言っても俺が生きていた時代のような古語だが)で悩んでいる未熟者が頭を抱えていた。なるほど、学年一番の称号のわりに古文は苦手ときているらしい。溜息を小さくつくと教科書を覗く。なるほどそんな基礎から躓いていたのか。どうせ、学年一位とやらも丸ごと暗記をしていただけで、実は系統立ててまったく覚えていないのだろう。それは実用主義ではなく、拙速主義言うのだぞ、在姫?


「未熟者。『ど』『ども』に続く、係る結びは『ば』だ。

 係助詞の『なむ』は中位の強意表現、現代語で言えば『今日こそは』の『こそ』に当たる。例えば、


     恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ

 

 この句では『恋しい人のつれなさを恨んでは泣く、その涙で乾く間もない袖でさえ惜しいのに、浮き名が流れて朽ちてゆく私の名が、惜しまれてならない』のような『朽ちてゆく~』にあたる場所、恨みがましいような言い方の部分だ」

 俺の説明に目を点にして見ている在姫。おいおい、これぐらいは教養として普通だぞ。最近の若者は古書にすら目を通さぬのだな。

「んー、尊敬」

「するほどの教養ではない。いいから続けろ」

 蛍光灯に照らされる机から、再び見えないはずの俺の方に小さな声で在姫は話し掛ける。

「でもさ、なんでこんな事覚えていたの? もしかしてそう言う昔の、連歌みたいの好きなの?」

「……あぁ、それは『縁があった』から覚えやすいと言うモノだろう。少しばかり自分の血筋とその歌仙に関わりが合っただけだ」

「ふーん」と何やら妙に納得した在姫。この話は突っ込まれると話が長くなるうえ、何分『実感』がないので終わりにしたかったので都合がいい。

 静寂に満ちた図書室。古い紙の持つ匂いが情感を引き立たせる。夕暮れに染まった校庭には人影はない。


 ……いや、何かおかしくないだろうか? 人がやけに少なくないだろうか?


 俺の思考を筋道立てて考えると、一つの結論が生み出される。

 そう、『人払いの結界』。霊気装甲の無い人間に外界、自然界からの作用で、その場に居づらいような違和感、突然帰宅を促す衝動、説明不明の思いつきによって、効果内の人と言う存在を追い出す精神的な作用の魔術結界である。

 この手練具合、魔術師であることは間違いない。強力な霊気装甲のブロックを持つ在姫と霊気装甲そのものの俺はその影響を受けなかった、いや、それとも『受けさせなかった』のだろうか? しかし、魔人に気付かせないとはまさに匠級だ。

 意思の網を巡らす。自身の霊気装甲を薄い和紙のように広げて、受動型のソナーのごとく、何かを拾う。



 西方、午の方角に、六十間(百八十メートル)に三つの交霊武装の気配。



 俺は古文の読解に熱中している在姫を視線に置く。

 外部の霊気装甲の流動は零。相手の術はまだ作動していない。先手を打つこともまた戦術。攻撃も最大の防御と言うのは実戦でいやと言うほど知っている。

「済まん、在姫」

 古文に没頭する、小さな少女が気付かれないように声を掛けると、図書室の壁をすり抜けて二十メートル下の地面に着地。霊体時よりも物理的な攻撃を与えやすいように実体化すると一陣の風となって猛る。

 と、そこで一度振り向いて『高さ』を思い出す。……うわぁ、こんな高いところから飛び降りたのか?

 間違ってもこの『弱み』は在姫にはバレないようにしよう。

 体育館、その横には立派な弓道場がある。夕暮れに満ちた校庭はダンダラに匂い立つほど赤い。

 その朱色の中心に一人、大人しそうな垂れ眼の少女が居た。

「こんばんは、【魔人】さんですね? あなたは?」

 その右横には筋骨猛々しい男が腰のあたりで三つ、百二十度間隔で開くように上半身だけが三体繋がっている。その腰辺りは人の足でなく蟹のような、十本の尖った足が等角に付いた厚い円盤の台座の上に乗っかっている。

 その左横には隣りの男に劣りながらも、十分な迫力を持った男。しかし、その腰から下である部分は首を切った馬にくっ付けられたようになっている。ケンタウロスと言う人外だろうか? 左手には弓が握られていた。背中に十分なほどの矢と矢筒がある。

 だがその猛々しさにも関わらず、そのどちらにも、『生』と言うモノが感じられない。虚ろな物体。そして青銅色の肌。


機像兵(ゴーレム)だな?」

「へぇ、私のオリジナルにも関わらず、よく分かりましたね?」

 白皙の肌の少女は長い、膝まで届くほどの黒髪を揺らす。あまりに磨き抜かれ、艶やかな髪は鏡の如く、茜色すらありのまま返した。

「当たり前だ。そいつら二体の額の防具。その下に僅かに見えるのはヘブライ語において真理を意味する『Emeth』の文字。それだけで十分断定は出来る。装甲に4インチIC製の対物理魔鋼と神経直結有線作動とは正しく戦闘向きの『動く交霊武装』だな」

「なるほど、視力と察しが良ろしいようですね」

 垂れた眼が細められる。その少女の両手首には、それぞれの機像兵を直接的に、末梢神経と繋げた線によって操るための極細糸が伸びていた。単分子結合炭素線か。槍の大雑把な刃での切断は難しいな。

 (がく)ッと重い金属が動き、頭をやや垂れていた鋼の兵隊が、目線で俺を捕らええる。


 外部霊気装甲、流動確認。


  来る。


機像兵使い(ゴーレムマスター)と言う事は……、魔術師同盟、轢刑(レキケイ)の摩壁 六騎だったかな? なるほど、機像兵の怪力ならば、車に轢かれてグシャグシャになった轢殺体に見えない事もないだろうな」

「――少々喋りすぎたようですね。では、我が願いに置いて、邪魔者は轢かれなさい」

 細い両手が高々と、奏者のように舞い上がりながら俺自身を指す。

 それに合わせて、俺は中空から槍を握った。


* * *


        ――Side A――


 その場所は、既に戦場だった。

 校庭のトラックでは突撃兵(トゥルーパー)狙撃兵(スナイパー)によって、戦場の最悪のコンビネーションが発揮されている。

 専門の魔術師でなくても分かる、あの疲れ知らず、かつ理不尽な機械的動きは機像兵に間違いない。

 鋼鉄の鉄拳は小躯を狙う。

 だが、小躯自身が驚異的な機動性を持って回避を繰り返す。

 頭を下げ、腰を開き、膝を落とし、足を捌く。まさしく、神速の体移動。当たったと思えば、それは残像。そう、間近でなく遠眼で、それでも見間違えるほどに速い動き。

 以前の亡霊騎士ほどの技も無いためか、避けきれない攻撃を槍で合わせて逸らす事すら無く、寸前で見切っている。

 外れた拳は校庭に無数の拳痕を残しながら、後方、横方、前方、斜面、全方位に展開する魔人を追う。

 だが、驚異的な機動性を持ってしても、三方、全ての死角と隙をそれぞれの上半身で塞いだ機像兵に槍を当てる事は出来ても、致命傷、もとい壊すまでにも至らない。思いっきり踏み込もうとしても十本のカニに似た足が踏み込みの邪魔をする。かと言って、立ち止まれば、

 (シャッ)、と国定の僅かに立ち止まった瞬間と、心臓を狙うように放たれる人馬の矢。

 それを眼も使わずに、分かり切ったかの如く背後からの矢を避ける国定。それは突撃兵の拳撃を避けながらの行動と選択である。

 コンマの先には穿つ矢と砕く拳。

 それでもなお、それが当然であるかの如く、国定は連撃の緊縛から抜け出る。

 それも、ある程度の余裕を持ちながら。

「……強い」

 思わず、言葉が洩れた。


 一騎当千、万夫不当、鎧袖一触、歴戦練磨。およそ国定を形容するような適切な言葉は見つからない。彼の自信はその眼に映されているのだから、それ以上の言葉なんて……。

 いや、でも、もし彼を一言で例えるなら名詞、ただ一つで事足りる。


  ――【英雄】。古代、悪鬼猛る戦場を、僅か一騎で駆け抜けた強者。まさしくそれだ――


 その小躯には、何らかの幻視だろうか? 一番初めに見た巨躯が重ね合わせられるように動く。そして、その身も私の子供時代の服ではなく古代の戦士である、唐紅の大鎧に脛当て、手甲、飾りを付けた鉄兜が浮かぶように眼に見える。

 しかし、優勢に見える彼でも、あくまでも現在の対処は防戦の一方通行のみである。

 機像兵の操者、美少女の魔術師は校庭のど真ん中に突っ立って優雅に旋律を、そして戦慄を伝えるように舞い踊る。

 私は指先に『呪い』を凝縮し、さらにそれに物理的ダメージすら与えた魔力弾、『フィンの一撃』でも加えてやろうかと思ったが、いかせん校庭の真ん中、三百メートル先は遠い。私は魔女なのだ、狙撃は魔弾の射手にでも任せよう。さて、それでも近い側の機像兵には意味がない。生物だけにしか、『呪い』は効かないのだ。

 勿論、当てる事は出来るが、彼らは魔法使い対策として霊気装甲の流動を職人的に感知するのに長ける。基本的な、霊気装甲での身体強化による十分な狙いと距離で減衰する威力のために『体外』で呪いを固定化させる十分な霊気装甲の流動は必須。さらに魔力弾が万が一にでも外れたら、こちらに弓矢の狙いが定まる。

 注意を惹きつける為に校舎影から出ようかと思ったが、ここで、この間のように出て行ったら亡霊の時の二の舞である。

 狙撃兵、ケンタウロスの矢が私の胸に吸い込まれるように当たるはずだ。国定に同意するようだが、不本意ながらわざわざ矢面に立つのは愚行以外の何ものでもない。



  それに、そんな事をしたらまた、


             ――途切れた上半身(からだ)――



                            悪夢の繰り返し……



 ――私の魔法の体系である召喚術は非常に援護には向かない。一部の交流の深い生命体を除いて、私の制御の手を離れてしまう事が多いのだ。下手すると、今ココで召喚をしても彼を傷つけるだけになるかも知れない。どうする?

 仮に一体を召喚したとしてもアレほどの攻撃力の機像兵。現実界にとどめて置けないほどのダメージを受ければ、異界に回帰せざるを得ない。そして、彼らの人形は一撃でその分の破壊力を表現できる細工である。獣人級の腕力なら耐えられる力があるのに。

 情けないッ。才能は有っても、今使えなくては意味が無いのだ。彼を少しでも援護する方法……。

 少しでも彼が踏み込みに専念できれば、少しでも彼に攻防を考える(いとま)さえあれば、生身の彼女に近づけ……。


「あれ? おかしい」

 おかしい、本当におかしい。なんで、彼女は『目の前に居る』のか?

 機像兵の操者はその性質上、二つのタイプに分けられる。

 一つは、有線の神経接続によって脳に直接信号を送りながら、視界を同時に確保して戦う方法。

 もう一つは、無線で擬似魂回路に生霊を憑依接続しての遠隔操作。魂の一部として生霊を乗り移らせて戦う方法。

 どちらに長短はあるにしろ、おかしいのだ。


 つまり、機像兵の操者が『その場に居る』必要はない。

 つまり、どちらにしろ『機像兵の操者が敵の目の前にいるのがおかしいのだ』。


「まさか……」

 いや、有り得ない事でもない。

 私の流れを感じ取る。

 静かに、覚られないように小さく、『体外に洩れないような』霊気装甲の流動で編んだ意思の糸を機像兵に這わせる。

 魔法の糸。精神を紡いだ、精神と接続するための糸。


 接続≫≫

 自分の思考が流れないように、注意をしながら、無意識に、手探りにその先を辿る。

 そして、二つの兵士達への精神の流れは一度少女に集まり、そこから『さらに外側に一本の線』が繋がっている。

 それは上へと向かって……。

 ≪≪解除


 体内に巡る小さな粒達、それで私の身体の『内側』を活性化させていく。

 校舎脇の影から校舎内へ。強い日差しで傾いた影を縫うように、闇に這う。

 その速さは魔人たる国定には及ぶ事すら適わないが、それでも常人の、いわゆる筋力のリミッター解除くらいは出来ている。

 波打つ、魔女の心臓。

 階段を勢い良く駆け上がる。そのスピードはジョウチョーの日頃のパートナーだけあって、私の普段の運動能力とは相余っても少女のモノとは思えないほどの速さと力強さ。

 そして、屋上の踊り場へ。

 いつもは開け放しの場所が、『結界』のように、人を拒むかのように閉まっていた。

「でぇぇやぁぁぁぁぁっ!!」

 ドアノブの一番脆い部分を梃子と限界まで引き上げた筋力で蹴破る。

 ドアが弾け飛ぶ。ドアはノブを壊すだけに留まらず、そのまま形を保って蹴った方向に移動し、縦に倒れた。

 熱い夏の風が一陣とその場所を薙ぐ。朱色から、ワインレッドに変わり始めていた空。

 それを仰ぐように見ている、暑苦しい白衣に、短めに切られた金髪の女性

 屋上の校庭側に真の操者は居た。

 眼下に見える光景は、未だ繰り広げられる戦渦。ここなら戦況を見るのに不自由はしない。

 私は五指を広げて、その先に魔力弾を瞬時に溜めて、言い放った。

「魔術師の独奏曲(ソナタ)は終わりよ、葬送曲(ファーナルマーチ)でも準備しなさい」

 振り返った女性は怜悧な目を僅かに伏せながら、未だに微かな笑みを浮かべていた……。


* * *


                -Side B-


 さて、困った事が起きた。

 六年前に、大馬鹿など超えて人類の禁治産者代表である俺の上司に召喚されて以来の困った事態だ。その時からは原因不明の魔法爆発やら実験爆発やら核爆発やらなんやら困った事は日常茶飯事に無駄に起き続けているため、例え困った事でも本当に困った事なのかと判断してしまうのだが、即答でこんなに困ったと感じたのは召喚以来初めてだ。


 さて、困った時こそ冷静に分析してみよう。


 目の前に居るのは機像兵。通常なら傷つけることの出来ない、肉体を持たない物体、霊やらなんやらを傷つけるようにしたモノを交霊武装と呼ぶ。その一つでユダヤ教の秘術(カバラ)によって動く交霊武装でありながら、元の泥人形とはまったく掛け離れたオリジナルのデザインで造られたものである。無論武装なので、普通の武器としても傷付けられる。つまり、霊体の俺を傷付けられる。

 三体が各方向に均等に配備された、筋骨逞しい男が腰の辺りで蟹に似た十本足の物体に繋がれている。その上から下に至るまでIC製、イトッコサーカス製の特殊合金である。交霊武装を生み出す魔術師、その専門家を錬金術師と呼ぶ。イトッコサーカスはその中でも反死神派、【逆神】に属する最大の錬金術師団である。それが生み出した合金は自然界の霊気装甲処理、錬金術によって飛躍的に靭性と硬性を上げている。

 異形の殺人空繰(カラクリ)人形、機像兵。

 たった今の、俺のコメカミを紙一枚で走った拳の一撃は轟風のみで髪の毛が散る。散った髪は元々この世に無い物質として大気に溶けるように消えた。

 もし、一撃でも直撃すれば、俺の肉体も同じ末路を辿るだろう。だが、残念ながら機像兵の操者は操るのには長けているが、『戦闘』には上手のようではなく、俺の体捌きに翻弄されているようだ。

 同じ様に、上半身は優美な男で下半身は四脚の馬の機像兵も、弓を執って俺の身に矢の雨を降らせる。だがその殆どは外れるか、蟹男の機像兵の身体に当たるのみである。無論、IC製の装甲、うんともすんとも言わず、矢は火花を迸って弾かれる。



 それを操る黒髪の少女、

 ――の形をした『機像兵』の更に上。校舎の屋上にいる真の操者。



 その目の前に…………、何故あの『未熟者』が居るんだ?!


「あのバカ!!」

 激情とともに叩きつけた刃金が鋼と火花を散らし、奥まで届かずに尽きる。


 先に機像兵の前に来たのは失策だが、魔術師が直接操作するかも知れない結界に入り、それに囚われている間に機像兵で殺されるのよりかは幾分かマシだと踏んだのだ。

 それを回避するために、魔術師の武器、『機像兵』を先に叩いたのだが、それがどうにもこうにもなら無い。

 この槍は特別製だが、ある事情で槍の先を失っている。おかげで『貫』、刺し穿つ機能は無い。

 人の肌ならまだ傷つけるられるにしろ、相手は対物理衝撃に十分堪えうる重装甲、肌を刃で撫でるような小技が使えるはずもなく、必然的に大きく振り回すような『薙ぎ』になる。だが、それでも通常装甲の倍である守りをまったく傷付けられない。元の筋力であれば、三度で破壊出来ると言うのに。

 例え今の体格でも、もし、槍に一点を貫く機能があったなら、確実に魔力を制御する中枢刻印の『真理〈Emeth〉』を『死〈Meth〉』に変えていただろう。例え、金属でも、そこだけでも抉れば止まる。

 狂った戦士は嵐のごとく、豪腕を振り回す。操者の技量と機像兵の性能など関係なく、単純なスピードなら俺が上だろう。

 魔人であるために目に見えた疲れはないが、それでも刻一刻と俺の霊気装甲は削られていく。

 突こうにも先がない。立ち止まっても薙げない。


 だからこそ冷静に一計を案じる。


「そるァッ!!」

 刃から一転、その反対である石突を『機像兵の足に叩き付ける』。

 空を切る鋼色が夕日の残光を返してワインレッドに染まり、血を彷彿とさせた。

 複雑な関節の『最も柔な部分』が砕けて、脚が一本弾け飛んだ。

 残るは後九つ。

 耳元で風を切った矢を過ごしながら、とにかく目の前の空繰を倒す決意を固めた……。


* * *


                -Side A-


 金髪の女性の着る白衣の色はワインレッドから徐々に明度が下がり、赤く、そして黒く変わっていく。

 短い髪は夏にしては生ぬるい風に晒されて、ユラリと静かに揺れている。

 天井には満月より二日過ぎた十七日月。夕方のそう早くない時期、立って待つほどの時も立たない月のため、通称立待月(たてまちづき)とも呼ばれる。

 昨日の今日、早い段階から出現した敵、機像兵の操者には相応しい月の名ではないだろうか?

「さぁ、その擬似神経をととっと引っこ抜きなさい! そうでないと蜂の巣にするよ!」

 私の五指は容赦なく女性を狙っている。その気になればこの距離で胴体を内臓破裂させることだって出来るほど、凝縮された物理的な呪いなのである。ちなみに五本指それぞれから放つそれは、まさに円筒機関銃(ガトリングガン)である。

 それを前にして、操者は憮然とした、楽しみが邪魔されたかのように溜息を吐くと、初めて私に振り返った。

 理知的な、およそ、論理と呼ばれるもの以外は否定しているような鋭利な瞳。薄い黒縁フレームの眼鏡に、白衣の下のトレーナーとジーンズは研究者として如何に一般的生活と比較して『ずぼら』なのかと物語っているようだ。こんな蒸し暑い中で暑くないのだろうか? それでも白すぎる肌は血管が透けるほど薄く、真冬の寒さを覚えるほど病的とさえ感じる。

「在姫ですね?」

 確認とも取れる言葉。だが、私は答えるつもりはない。

 彼女は続けた。

「あの、黒髪の子は私の傑作なの、素敵でしょう? 後の二人も私の力作なの」

 ふふふ、と自らに酔いしれるような言葉。

「止めなさい。いますぐに」

 静止を促す。意思の塊の一部である生霊を『黒髪の女の子の機像兵』に降臨させ、さらにそこから擬似神経回路で操る手腕。

 言わば、彼女は『同時に三体の機像兵』をタイムラグゼロで操っているのだ。並みの操者ではない。生霊によって全てに同じような命令を出し、三体以上を操ることは出来る。だが、彼女のように生霊という媒介を使いながら、さらに擬似神経で二体同時に操っているのだ。彼女はそれぞれを群体では無く、個々として扱っているのだ。その技量は魔術師でも極端中の極端、最高の部類に属する魔術である。匠級とは、マジで凄いようだ。

 擬似神経越しに送られる情報を確認しながら、同時に、上から戦場を直接眺める戦術。戦下手とて、平面(二次元)からよりも上空(三次元)から戦況を見る方が容易いのは当然である。

 白衣の女が白いハンカチを無造作に取り出した動作に身を固めるが、それはただ単に額の汗を拭うだけだった。

「弱った魔人だと『彼』も言っていましたけど、あなたの彼も頑張ますね」

「彼氏じゃねぇ、勘違いするな、スットコドッコイ」

 思わず出た反応に「良い切り返しです」と分析するように、かすかに笑みを浮かべて楽しむ。

 なんでそんな風に言い返したのか、なんて考える間もなく、夏に似合わぬ冷風が私にそよいだ。


「で、私をどうするつもりですか?」

 決まりきった事、それを確認する女。

「撤退するなら、私を忘れて、この街からとっとと出て行くなら許すよ。けど、刃向かうなら――」

 一歩踏み出す。魔女に迷いは無い。

「――叩く」

 同時に完全に日が沈み。夜の帳が天幕のように空を覆う。

 暗さに馴れた目でも、硝子の如く反射する瞳と意思は読み取れない。


             「そうですか。でも、どっちにしろあなたの心臓を貰うのですから、死んでください」


 顔に似合わず、論理と倫理完全無視での発言。その次の瞬間、私の心臓が跳ねた。

 その本能の警告に従って、回転レシーブのようにタイルを真横に転がりながら『突進』を回避。真横から、突っ込んできた魔術師のどてっ腹に魔女の一撃を喰らわせる。

 開いた指先から五つの歪んだ空気塊。


 だが、白衣の操者はその呪いを『素手』で受け止めた。


「なっ!」

 次の瞬間、霊気装甲の流動で強化した、私の目にすらコマ落としのように映るスピードで迫る。

 左の拳ッ!

 避けた場所、背後にはコンクリートの壁。

 私は操者と交差するように、飛び込み前転の要領で回避する。

 直後、デタラメなフォームで、およそ格闘技とは掛け離れた崩れた動きで、女性はコンクリに拳の型を残した。

「『槍手』!?」

 一瞬、あの鈍器の拳を思い出した。だがそれとは違う。まるで、力に頼ったような動き。断じて、あの洗練された、凄みのある技とは違う。

「なるほど、さすが魔女。装甲での身体強化などはお手のものですか」

 機械、金属の軋み、歯車と歯車の音色、人工筋肉の唸る声。それはそれぞれの四肢から聞こえる。

「……信じられない、両手両足を機像兵用の手足と取ッ替えてある」

 生身への人工強化。病的なまでの繊細さ、あるいは神経質なまでの集中力。それがなければ、肩から先につけたクレーン車を操ることさえ出来ずに、力加減のミスで自ら胴体を引き裂く事となるだろう。それは彼女のような魔術師でなければ死んでしまう事を意味する。

 だが、「No,No」と私の言葉は間違いだと言うように、人差し指を立てて左右に振る。


「取り替えたのではありません。『私には元から無かった』だけですよ」


 え? 待って、元から無かったって……。

 私の口の開くのに合わせて、女性はコツコツと低いパンプスの音を立てながら中央に移動する。

「そう言うことです。言わば、奇形児と呼ばれるものですね。人によっては私を『不格好』だと嘲笑い、人、特に男性によっては私を都合の良い『玩具』代わりにしました。まさに『手も足も出ません』からね。そして最後に、襲った人も、それを憐れむ人も、みんな言うんです。『可哀想ね』と」

「飽きちゃいました。同じ反応で」と過去を回顧するように、眼鏡越しに虚ろな瞳が映る。

 そして、何も知らない、私を打ちのめすような見下した目。

「でも、その惨めに『アザラシ』のように這いずっていた私に新しい手足を与えてくれた人がいるんです。本当に、この身体は素晴らしいんですよ? 不格好と言った人を『同じ不格好な姿』にさせたり、私を玩具にしたように、彼らの大事な場所を玩具のように『握り潰したり』する事が出来るんですからね……。しかし、その人の手でもこの身体を満足にはいきませんでしたからね。これ以上肉体と機械の齟齬のある歪なメンテナンスを続けると、自然に元の体の方がボロボロになると仰られました。そこから先は私の研究です。肺から心臓、脊髄から脳まで、『全てを変える必要』があったのです。私は『人の魂を機械の身体に完全に移植』しようとしているんですよ。そんな事が出来るのは【魔法】くらいですからね。私は、完全な体が欲しいんですよ。そんな辱めを受けた事、貴方はありますか? もし無くとも、その惨めな気持ちが分かるなら、それを克服させてあげたいとは思いませんか?」

 確かに、私はそんな惨めな事を受けた事はない。でも……、

「……これが私の願い。誰も人並みに生きていたい、ただそれだけを叶えるための、行動」

 身体の欠損など分からない、その点では私は幸福に生きていた。でも……、

「そのために、貴女の心臓、いただきます」

 放っておけば、死ぬ体。その圧力すら理解は出来ない。

「私の手、私の足を、身体を下さい」


 ピタリと私の目と、その狂気の瞳を合わせた瞬間。



         「ふざけるな。これは私の心臓だ。誰であろうと命を粗末にするような人間に渡すつもりは無いッ!!」



 弾けるように、魔女の心臓は高鳴った。

 これだけはハッキリ言いたかった。確かに辱めを受けた事は同情できる。理解しがたい世界がある事、それを体験していないで言い返すことも出来ない。だが、『それ』と『これ』とは話しが違う。自分の望むモノのために他者を踏みにじることなんて、倫理とか、道徳とかで言い表せなくても、許せるはずがない! 何より、自分の幸福のために、他人に自分と同じ不幸を与えるのは矛盾以上の何でもない。全てが等価交換の世界であろうと、それは、等価交換を無視する、私の意思が許さない!


「……なるほど、これまで、三つ程狩ったの魔女とは些かと違いますね。天然お嬢様育ちの魔女の方々はコレを聞くだけで失神、嘔吐までして、無防備にしていたのですが……。やはり、私は精神系の結界を張るのが不得手ですね。精神に不当な呵責を受けるように設定したのですが……」

 理論立てて考え込む女性に言ってやった。

「当たり前よ」

 当たり前だ。魔女となると決めた『あの決意を持った済まない瞳と合わせた』瞬間から、私の心は揺らいでいない。

 だから研鑚を続けた。だから私は、魔女なのだ。だからこそ、


「アンタに負けるつもりなんてないんだからッ!!」


 その言葉と同時に、これまでの同朋の恨みを晴らすべく、怒りの鉄槌を投げかけた。

 呪い撃ちと呼ばれるガント撃ちでも最高の、物理レベルのフィンの一撃が、機像兵の腕でガードした顔と全身を物理衝撃で一歩後退させる。

 ガードした腕越しに見える歪な笑い。

「後悔しますよ」と唇の形は語っていた。


* * *


                -Side B-


「なんて動きだッ!」


 勿論ながら、それについて語っているのは目の前の突撃兵でも、狙撃兵でも、その偽の操者でもなく、屋上の女の事である。

 突然、向かい合った在姫に突撃したかと思うと、コンクリの壁をぶち抜き、何かを喋った後、現在は『空中』にいる。

 超人的な跳躍能力。飛翔とでも言うべきか、と下らないことを悩んだ次の瞬間。在姫のコンマ一秒前に居た場所、その真下に十メートル飛んだ分の位置エネルギーを加えて、足の裏が押し潰す。穿孔音。

 在姫はそれを後退して回避しながら、魔女の嗜みとでも言うべき、魔力弾、フィンの一撃を送り返して、さらに後退。 

 透明な歪みを持った五つの魔力弾は交差した女の両腕に炸裂し、白衣の袖から、煙をあげさせている。しかし、その腕には支障はない。霊気装甲で強化した肉体の在姫を追い詰めるほどのスピードとパワー。改造と言う事か? いや、違う。生命体である限りは呪いを受けた瞬間に影響が出る。という事は、あの女は四肢を機像兵化したというのか?


 だが、俺が驚いているのはそんな事ではなく、そんな自分自身の攻防を繰り返しながら、『こちらの機像兵の動き』を怠っていない点だ。

 いや、些か鈍ったと言えばそうだが、それでも遜色は微々たるモノだ。 

 そう、つまり、あの女は『四つの肉体』を同時に操作しているのだ。尋常の(わざ)とは思えない。

 それを相手にする在姫は普通の魔女と比べたら、コップとバスタブほどの差のある魔力の量だが、それとて無尽蔵ではない。

 ましてやあの小さな体、いくら伝導率が高くても魔力を通しすぎれば、魔人でも無い限り、人である身体は魔を忌み嫌う。結果、自身を魔力で傷つける。

 ピシャリと、突然、口元を抑えた在姫から鮮血が洩れた。魔力の通し過ぎで内臓、特に心臓に近い肺が傷つけられたのだ。

 大馬鹿者、張り切りすぎだ!

 それでも、在姫は躊躇わず、ゴクリと血を飲み込んで、一撃を放つ。

 クソ、未熟者がッ! 大人しくしていろと――

 俺の身体はそんな考えとは別に動いて、足をまた一つ砕いた。それでも続けざまとはいかず、次の一本からは警戒されているので中々手を出せない。

 もう一度――。

 俺は槍を地面に刺し、棒高跳びの要領で飛び越える。操者に合わせて、僅かに驚く刹那、振り向き様に回転しながら背後の足を砕く。後、八本。

 ――未熟者が、絶対に生きてろよ!


* * *


                -Side A-


 本当に何やってんだろう。私。魔法使いが近距離戦をするなんて、また国定にどやされるな。

 悪意を持った機動性が白衣で翻る。夜闇にはためく金糸。

 そして今度こそ、魔力の通し過ぎで体が痺れ、足の止まった私の首を白衣の女が掴むだろう。

 もう少し、大人な体だったら、耐えられるのに、未熟な身体がこの時ばかりは本当に恨めしい。


 暗闇から伸びる様に、

           白い手。


                ホラ、掴まれた。


「カハッ」


 気道と頚動脈を潰すように、右の魔腕が、魔手が私の首を握る。

 血を失った脳の反応なのだろうか? 空気中で、魚のように口をパクパクとさせて酸素の在り処を求める。

 足掻くための足は地面の所在を無くしている。解こうともがく手は力を無くしている。

「ここまでですね」

 金属の擦れる音。その首を持つ反対の手には同じ魔腕、魔手、揃えられた、抉るのに相応しい形の魔指。

 心臓がこれ以上打てないほど高鳴りを連続する。

 生きたまま、心臓を抉られる恐怖。

 あぁ、くそ、ここまでか。体の弱さが嘆かわしい。もっと私が大人の体だったら……。

 死線が近い。張り詰めた先、白い空気に埋もれる中で、私の意識は……。


* * *


                -Side B-


  そんな光景を俺は見ていた。

 ――――何をやっているんだ?

 こんなデクノ坊に足手まといされ、守るべき対象を戦わせている。


   そして、今は、その最大の危機。


 ズキリと、前頭部が痛む。失われた、それ以前に失われた幻影が問い掛ける。

『戦え、――のために、力の限り』

 削れる体。

 そうだ。魔人とて、その魔力は制限無しに通せても、絶対量は決まっている。

 魔人の魔力を通す、それは自らを削り取る儀式。ヤスリを身体に当て、それを自らの手で、ゴリゴリと音を立てて、皮を、肉を、骨を、見えない魂を削ぎ落としながら擦る苦痛の儀……


                      だから、どうしたんって言うんだ。


 守ると、ただ決めた。はっきりと約束したあの時。

 それ以前の、曖昧な決意を忘却した記憶、その中ですら朱墨に落とした血のごとく、融和して消えた思い出。だが、その中でも感覚は残っている。約束は果たさなければならない。

 だからこそ、自らの身の消滅をためらってはならないッ!!


                  ――途端に、浮かぶ。自らの記憶の欠片――


 俺は唐突に機像兵の攻防から離脱すると、弓道場へと向かう。

 むろん、俺を突撃兵が追い駆けるが、霊気装甲を完全に使った獣の本来のスピード、加えて五本も折られた足が勝てるはずがない。

 槍は虚空に消す。今の俺には必要はない。

 弓道場正面の、弓を射つ側のシャッターを体当たりで破り、板の間を転がりながら手近な弓と矢を取る。

 無意識に取った弓。それは通常の二倍以上の握り、つまり、二倍以上の力を持って引く強弓(ごうきゅう)と言うもの。

 矢を弦に(つが)える。おなじく、無意識に取った矢は計らずとも自らの身長に合ったものだ。


 シャッターの手前まで迫った機像兵。


 弓を射ること。射とは即ち理である。弓と言う利器に自らの技術で(あたり)を作り上げる技術である。

 八つの工程を持って作られる射の理合。それの射の道から外れる事がなければ、矢はその方向に然るべき業で当たる。

 八つの工程とは、【足踏(あしぶみ)】【胴造(どうつくり)】、【弓構(ゆがまえ)】、【打起(うちおこし)】、【引分(ひきわけ)】、【(かい)】、【(はなれ)】、【残心(ざんしん)】である。


 【足踏】で大地に右膝を立て、左膝をつく。

身体は天を貫くように真っ直ぐと立て、【胴造】で体の、見えない芯を造る。

 【弓構】で左手の微少な形を整えて、右親指の付け根で、矢をごと、弦を引っ掛けるように捻る。

 狙いを定める。動くモノではない。既に俺の心の中では奴の身体は捉えられている。いや、既に、俺の中では矢は(あた)っている。

 高々と矢を番えた弓を、銃の撃鉄が上がるように【打起】こす。弓の本体がまったくぶれる事無く掲げられる。

 先に弓を持った左手を伸ばす。ギシリと反対の親指に鈍痛。皮の手袋、ゆがけで保護されるべき、右手親指の付け根の一転に重圧が掛かる。

 しかし、心象明快。既に、俺の心は決まっている。この程度のことで、俺は揺るがない。

 天と地を一本の垂直線で結び、それを陽光で分けるように弓を引き絞りながら、弓と弦を均等に【引分】ける。

 ここまでに一息、無駄などない。幾千と戦場で繰り返し、命を賭けた技に無駄などない。

 そして、全ては整い、真が通り、美を享け、善を悟る。必ず矢の当たる筋力の微妙な計算の解を、【会】を得た。

  矢は【離】た。


 機像兵の体が大きく吹き飛ぶ、その矢は確認するまでもなく、装甲の奥に隠された額の『E』を潰している。


 甲矢(一番目)は中った。【残心】が次への射へと予断を許さない。

 乙矢(二番目)を素早く構える。

 引き絞る弓。

 血潮が、剥き出しの親指から弦を伝って紅く染める。

 ほぼ同時、狙撃兵の矢と俺の矢は手元から離れた。

 俺は着撃すら確認をせずに、次の矢を番える。

 二つの矢は互いに先端をぶつけ合い、一方は逸らされ、もう一方が額の『E』を穿っていた。



 外に出る。


 暗闇に凝らした瞳の先の校舎。黒髪の、少女型の機像兵が、恐怖に駆られたように俺に向かってくる。だが、それは的ではない。狙うはその先。


 番えた矢は二本、胴をくの字に曲げながら、それでも芯は保ったまま、『その方向』に向かって、天を射るように、上に向かって構える。

 対象は二つ。そして、それらは俺の心中(なか)では、既に中っている。


  矢は【離】た。


* * *


                -Side A-


 私の意識は、突然正常値に回復した。


 突然、持ち上げられていた体が落とされ、脳に血が行き渡ったのだ。

 何が何だか分かったもんじゃない。だけど、今が貴重な勝機だと分かった。

 咳き込みながら指先を向け、至近距離で、

「このど畜生ッ!!」

 と私はフィンの一撃を放つ。

 女性は目を開きながら、腕を交差する。

 だが、五撃の内の一撃は腕の間をすり抜けて、吸い込まれるように額に当たった。

 眼鏡が砕けて、硝子が校舎のタイルを滑る。

 白衣の女の意識は一瞬でブラックアウト。身体が弾かれながら屋上の床に叩きつけられる。


 防がれるわけが無い。左肩と右手首。そこに『矢』が、『関節の間』に刺さっていたのだから満足に動かせるワケがない。


「国定ッ!」

 柵に体当たりするようにして見た眼下の校庭。

 暗闇に抱かれ、爆撃の後のようにボロボロになった校庭のど真ん中で、へたり込んだ国定がヘロヘロと手を振って、

「大馬鹿者」

       と親指を下に向けたやがった……。


 馬鹿はお前だ、と胸に刻むと、それでも私は笑顔で国定の元に向かって走った。


 天頂の立待月は雲の翳りを退けた。夜はいよいよ本番と言ったところだ。

 その月光のヴェールを校庭の真ん中で被せられ、野獣は肩で息をしながらもその瞳は未だ滑舌豊かに『大丈夫だ』と物語っていた。

「あぁ、まったく、未熟者のくせにたいしたもんだ」

 その発言に思わずスカートとその下を穿いていないこと(勿論スパッツを)など気にせずに、胡座をかいた国定の顔面に前蹴りを浴びせる。

 達磨のように胡座のまま後ろに転がりながらも屁でもないと言った顔つきで、勢いのまま元の姿勢に戻る国定。

「何をする痴れ者」

 ブスとした口調にフンと対抗する鼻息は私。

「名前で呼べと言ったでしょうが、バカ」

 その口調に朝に交わした約束を思い出したのか? 成る程、確かにそんな事も在った、と反芻するように巡らす。

「オメデトウ、未熟者だが運良く生き残ったぞ、在姫」

「実力だ、ドアホウ」

 もう一度、額に前蹴りを当てて転がしてやった。このまま転がしていけば、凸凹になった校庭も埋め立てられるかも知れないなどという名案も思いついたが、こんなバカを転がしても、頭が霊体でスッカラカンだから変な凹凸が増えるに違いないと一人合点した。

「何をする。暴力で自らの都合の良いようにするなど独裁者と変わらぬぞ?」

「バカ野郎、未熟者は余計だと痛みで痴れ」

 流石に次の蹴りからは余裕を持って、「そんなの当たるか」と避けられている。



「うーん、いいねぇ。君たちは青春をしているなぁ。僕も若りし頃に立ち返りたいと願いますね」


 ――あまりの唐突さに、私たちはまったく同時に校門の方に顔を向けた。

 大した声調にも関わらず、その声色は、何故か空気を――震――と張るような緊張感を作った。

 薄雲の翳りの中、暗中でも分かる体格の良さ、人を食ったような顔と表情、雲の翳りと共に近づく、澱みない足取りは正しく私の師父。

「生羅師父。何故貴方がここに?」

 昨日のような店員姿でなく、表面に呪い除けの加工のなされた黒衣を着た、魔法使いの姿で来た男、双珂院生羅。

「うん、魔術師の襲来を予期してある程度の『隠匿』の準備をした事を伝えようと思ったんだけど……、既に入り用のようだね。妹弟子ながら、いやいや、参った参った」


 ボロボロになった校庭、砕けた弓道場の一部、そして機像兵の残骸。


 魔法使いや魔女はその性質上、世間に知られる事があってはならない。

 神秘は秘匿するからこそ、各々の蓋然性を持って世界が構築され、それを受け入れる者に力は享受される。


 言ってみれば、ただ単に自分達の功績やら何やらが『より多くの』世間様から認められないのを知っているため、それぞれの都合のいい場所に篭り、囲って、それらからの被害を受けないようにしているだけだ。『より多くの』世間の間に住む以上、『一般社会での神秘の隠匿』は避けられない事柄なのである。またパワーバランスという物もある。核兵器はそれを運用出来る必要な国だけが持っていればいいのだ、うん(勿論、無い世の中である方がはるかにマシなのは明白だとジョウチョーなら言うだろうし、私も同感だ)。


 そのために私たちは『人払い』、『記憶操作』を身に付け、『証拠隠滅』と『上位機関の圧力による報道抑制と操作』を使って、神秘と共に歩むのだ。


 そのための手助けをしてくれるのが、師父というわけなのだ。弟子の不始末は師の責任。甚だ申し訳ない気がする。むろん、死神にも頼めばやってくれるだろうが、今回は魔女間での独自の解決優先ゆえにあまり望むのも気が引ける。


「ありがとうございます」

「気にするな。マイ・シスべらッ!!」

 皆まで言わせず、ジェット・リー様を彷彿とさせるような身のこなしで蹴りたぐる。方位磁石のNとSがひっくり変えるように頭と脚の位置を上下逆さにする色ボケ。着地した首が百八十度以上の角度で曲がっているけど気にはしない。さすが、治癒魔法の達者だ。身をもって弟子に示すのは師の鑑だ。


 校庭の凸凹が少し増えたけど『元凶』がどうにかするので問題無いでしょう。


「ところで……」

 今まで沈黙を保っていた獣が唸るように言う。

「……高校生で動物柄の下着はどうかとおもうぞ?」

 嗜めるように言った国定は一人納得するように頷いている。



  ……あぁ、なんて言うんだっけ、このマグマが煮えたぎるような気持ち。

      この際、はっきり言ってやろう、うん。



「どさくさに紛れてスカートの中を見るなぁぁぁ!!」

「たまたま見えただギャラブッ!!」

 『熊の顔』を手で隠しつつ、ブルース・リー師匠を彷彿とさせるサイドキックは国定の喉にまともに入り、バカ師父と折り重なるように倒れ伏した。


 ……と、言うわけで、師弟のよしみと言ったものか? 事後処理は身体をピクピクと痙攣させて、いつもとは違った首の角度で応対した生羅師父に全てを任せて帰路に着く。

 暗闇を駆ける獅子と鷹、そして馬の合成獣であるヒッポグリフに乗る、少年と少女。

 ビルの密林よりなお高く、ビジネス街から新興住宅へ。そして、新しき住人の町並みから古い家屋の集まりである私の家までと至る途中である。


 だが、飛行の最中、そこで一言だけだが、言いたい事がある。

 仮にも今はどうあれ私より年上の男性なのだから、もう少し男性との交際が今で経験上まったくない私の事を考えて貰いたい事が一つある。

 私は頬に熱いものを感じつつ、仕方なく顔を背けずに後ろに向かって言う。

「国定、……あなた、高所恐怖症?」

 人乗せと言えばヒッポグリフと呼ばれるほど、飛行生物としてヒッポグリフは安定している。その胴体に跨りながら、鷹の如き相貌の横の、ライオンの如きたてがみを手綱のように持つ私に、ちょっと苦しいんじゃないかってくらい国定は必死にしがみ付いて、と言うか腰に抱きついている。子供の見た目の割に発達した、男らしい肉体は女の子である私をドキドキさせる。加えて口には出さないが、国定も見れない顔では無いわけだし。



「そ、そ、そ、そんな事ないぞ?!」



 見る場所が無いためか、真っ直ぐと横目で確認する私の顔を見つめながら、蒼い顔をして不敵な笑み。メッチャ動揺してますな。

 何だか、旋回したり、宙返りしたりしたいなんて言う悪戯心が溢れてくるけど。

「……あのさ、キツイ」

 自らに流れる汗、ボロボロになったスカートやら制服は夜闇を駆けるたびにひらひらと揺れる。制服の代えってまだあったかなぁ?

 とりあえず、これ以上しっかり後ろから抱かれても恥ずかしいので、少し憮然としながら言ってみた。

 その言葉に気付いたのか、固くなった諸手を微かに緩める。

「スマン」

 国定も何故か憮然とした声色。

 ジワリと暑い夏が空を飛ぶ風で払拭されているはずなのに、少し、心地よいくらいの気持ちで日差しが暖かく感じた。





「運動して汗臭い事を気にしていたんだな」

「バ カ 野 郎 、叩き降ろすぞ」


* * *


                -Side B-


「ほら、起きろ!」

 路傍の小石ほどの気軽さで蹴転がらされると同時に意識が覚醒する。

 在姫の暴力的な飛行、具体的に言うと七回ほどの宙返りで人事不省に落ちいっている間に、どうやら九貫の屋敷に到着したようだ。

「乱暴だぞ」と言ったところで人間性の解決にはならないだろうと思い、立ち上がるが……



 腰が抜けていた。


「うわぁ、情けなぁい」と言いたげな視線に対抗するように気合で立ち上がる。


 フン、在姫。君の思い通りにはならないぞ。



 熱帯夜を予感させる空気に反して、冷たさを保った床に俺は伸びていた。感覚器官を遮断しても良いが、気配が探れない。でも感覚器官をそのままにすると熱いわけで……、とにかく、俺は床に伸びていた。

「疲れたからシャワー浴びる」

 突然、肩にタオルを掛けた在姫が、微妙に間の抜けた状態の俺に声を掛ける。

 かなり、恥ずかしい所を見られたが在姫は気にしていないようだ。……案外、在姫も同じ事をやっているのかもしれない。

 シャワーと言うとアレか、西欧の逆式噴水の事か。

 確かに多少怪我をしたかもしれない。汚れを落した方が身体に良いだろう。

 肉体の構成を常に均一にする事の出来る魔人と違い、人の体はややこしい条件が多いな。

 いや、勿論、魔人として生きるのにもややこしい条件はある……。


「承知した。長風呂は控えろ。身体に良くないからな」

「アンタは私を高血圧の爺さんか何かと勘違いしていない? と言うか……」

 一拍、こちらを逡巡するように眺める。

 微妙な間。恥らった、それでも怒ったような表情。

 むろん、こう言うときの台詞は決まっている。


「覗かないで」

「覗かん」

 コンマ一秒で棄却。

 そんなことより魔術師の襲撃に備えろ。むしろ覗くくらいなら『実力行使』くらいはする。男だしな。

「そう言うことはもう少し……いや、酷だからよしておこう。色々と自覚したまえ」

 と皮肉で返すと「ウッ」と自分が未発達な事はよく分かっているのか、渋い顔をする在姫。

 まぁ、美人で十分守備範囲内だが、手を出すとしたらもう少し成長してからだな。

 身長は縮んだ俺よりも指一本上か同じくらいだが、それでも百四十の後半に届いているのか疑問に思うほどだ。

 女性としても魅力が、はっきり言うなら色気が足りない。巨乳白刃取りが出来るほどとは言わないが、せめて虚乳くらいからは脱却して欲しい。



 って何を考えているんだ俺は……、相手は護衛対象だぞ?

 第一に俺は……、まぁいい。魔力が少なくなったせいで少し飢えたのだろう。料理で少し補給するとしようか。

 では、在姫の入浴中に料理でも作るか。


 フム、御飯は炊いてあるな。冷蔵庫には鶏肉、卵、玉葱、……みりんと醤油、砂糖はあるな。では……煮干で出汁をとって、ワカメを戻して……、


「と、言うわけで、今日は親子丼にお吸い物を添えてみた」

「おぉ~」

 風呂場から櫛で髪の毛を解きながら居間に来た在姫は、驚愕と言った面持ちでテーブルの上を眺めている。

 特盛り用の丼二つに、御飯はどこぞの日本昔話で見るような山盛りとなり、その山自体は黄色と出し汁の混ざった卵の間に透けた玉葱と鶏肉に隠れている。

 隣りには透った色の中に二点、緑のワカメと白い『ふ』が浮いている。

「勿論、つゆだくだ」

「……では、さっそく食べましょか」


 いや、箸を持ちながら言うな。


「挨拶はしっかりしろよ」

「PTAのおばさんじゃないんだからオアシス運動なんか流行らないよ」

「礼儀だ」

 意固地だが、ここは譲れん。

 食事の中途を邪魔されてムッとした表情の在姫だが、素直に挨拶をすると俺は食べるように促した。


 一杯目を食べ終えたところで二杯目の半分を食べかけている在姫がコッチをジロジロ見ているのが気になった。

「何を見ている?」

 その言葉に戸惑うように「いや、その」と言葉を詰まらせる。そんな勢いで御飯を飲み込んで喉が詰まらない方が俺の場合は不思議なのだがな。

「だって魔人って魔力、もとい霊気装甲だけで生きているんじゃなかったっけ? ってちょっと気になってね」

 もしかして、

「食費が増えるのが気になるのか?」

「そんな事ないッ!」

 炊飯器をチラチラ気にしながら喋られても説得力に欠けるな。

 俺はおもわず軽く笑ってしまった。

「いや、食うな。と言えば食わなくても動くことは出来る。魔人はその性質上、人間とは同じ生身を仮に構成する事が出来ながら、存在を異とする生命体だ。霊体になればそこらの幽霊や亡霊と同じ様に、現実界に干渉する必要もないから霊気装甲の消費量も微々たるものだ。だが、いつともしれない襲撃のために厳戒に実体化していた方が効率がいいと思ったんだ。そのために、普段の霊気装甲の消費を抑えるために食事と言うエネルギー摂取をするのさ」

「ふーん、つまりエネルギーの摂取方法が他に何もないから食事というわけね?」

「まぁ、それ以外にも『緊急の手段』はあるが、そこまで切羽の詰まる状況でもない。とりあえずは食事摂取が好ましいな」

 本当は食事と言うのは効率の良い手段では無いのだがな。一番は魔力を直接誰かから貰う事だ。

 大喰らいはしばらく箸を口に咥えながら、それなら仕方が無い、了承とでも言うように頷いた。


 そしてそれから暫く箸が進んで、ちょうど、在姫が三杯目のお代わりをしようと立ち上がったところだった。


 ――電話が鳴った。


 ピタリと、双方の箸が止まる。深夜十一時近い、こんな時間帯に何者だろうか?

 彼女の師父は連絡の必要はないと言っていたので、心当たりはない。とりあえず俺は頷くと、在姫はけたたましく鳴り続ける電話から受話器を取った。

 ゴクリと在姫の喉が鳴る。


「もしもし、九貫ですが……、なんだ。ジョウチョーか」

 ホッとするように壁に寄りかかる在姫。


 ジョウチョーとは、あの眼鏡を掛けた長髪の女性、斐川 常寵だったな。女性のわりに鋭い目付きをしていた。確か、コチラを妙に気にしていたような気がするが、気のせいだろう。霊体の俺を見えるはずがない。

 もし、仮に魔眼の類を所持しているなら、眼の周辺で霊気装甲の流動を確認出来るはずだ。彼女の眼鏡越しからは霊気装甲の確認は出来なかった。まぁ、あの眼鏡が錬金術師による一級の魔眼封じなら別だが、まさかそんな者が必要になるほど、常識外れの能力を持った人間がゴロゴロと身近に居ては溜まったもんではない。


「何どうしたの突然? 明日? まぁ、予定を見ないと分からないけど……?」

 と、思索をしていた俺を窺うようにチラリと見る。まぁ、現代に生きる魔女として、あまり人付き合いをあしらっては不自然なので不味いだろう、と俺は親指を立ててOKサインを出す。

「……うん、暇。暇だよ。あぁ、雑誌で見たツィンタワーの古書展覧会に行きたいの? あ、私も幻の植物ブースに行ってみたいなぁ」


 ツィンタワーとは朝に紹介されたあの高層建造物か。時代も変わったものだな。あのような、あまり高いところは苦手意識があるから昇りたくないのだがな。


「じゃあ、ホームルームが終わって、文芸同好会が終わるのは……六時だよね? じゃあ、その時間まで植物ブース回っているから、六時半に北ビルの大ホールで……、えっ、大ホールってあそこだよ。吹き抜けで大きなシャンデリアのあるところの階。三十七階だっけ? ホラ、髭面の市長が先週に非核都市宣言していた……あっ、思い出した? そう、そこだから。うん、それじゃ」


 受話器を置くと、手帳に予定を記す。

 少し、意外と感じるところを述べてみよう。


「長電話はしないのだな」

「電話代が勿体無いじゃない」

 話しより団子(食費)か。まぁ、納得だ。


 食事後、洗い物を終えた俺は情報収集代わりにテレビを付ける。高名な量子物理学者が自宅で密室で自殺なんてぶっそうな特番のテレビを見ながら待っていると、歯磨きを終えた在姫がフラフラと戻ってきた。

「眠くなってきちゃった」

 目を擦る在姫。君は五歳児か?

 だが、今日の魔力と体力の回復が必要なのだろう。『治療魔法』は傷自体に粘土をくっつけるように出来上がった細胞などを補填するわけではなく、たいていは傷の治りを促進するものである。むろん、直す時は傷を治される側の栄養を急激に消費するのだ。在姫はいつも以上に腹が減り、睡眠も必要なのだろう。ちなみに手や足がまるごと吹き飛んだりした場合は傷を癒す『治療魔法』ではなく、魔力によって流素からまるごと手足を作り出す『再生魔法』などが必要である、と理論だけは達者な俺の上司から聞いた覚えがある。


 二階に向かう在姫の後ろを俺は付いて行く。


「部屋の前は俺が守る。扉の外だが、もし何かあったら声を出せ」

「アンタが入って来ても声出すけどね……」

 据わった目で返答。

 そんなに信用がないのか?

 別に過去に浮名を流した事は……、俺が『覚えている限りでは無いな』。


「……もういい。それじゃあ、おやすみ」

「ん、おやすみ」

 一日の終わり。今回はこの程度の被害で済んだが、次はどうだろう。


 部屋の中からゴソゴソとひとしきりベッドで体勢を整える音が続くと、続いて静かな寝息が聞こえてきた。

 さて、俺も一度霊体に戻って霊気装甲の消費を抑えよう……。

 本当は魔力の消費を減らすために寝た方が良いのだが、俺は寝る気はしない。


 繰り返されるあの光景は――に過ぎない。抜け落ちた記憶の残り滓……。


 狂うよりかは、幾らかマシだ――


 俺はギリギリ、思考が夢想に回帰する限界を保った……。


 The all ends justified the means.

 Therefore, I was dead, then I am body.

 Provided he is saint, nobody commit guilt.

 Ruin is nothing more than way to change an atonement.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ