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00.序章

 物語とは虚構である。例え、それが実在の人物の伝記だとしてもだ。


 例えば、ある書で英雄として扱われた者は、別の書では多くの人間を虐殺した大罪人としてしか扱われていないのかもしれない。

 例えば、世界中を混沌に巻き込んだと全ての書物に書かれる人物は、真実ではただ一人、自分だけの孤独な、完璧な秩序を知っていた人だったかもしれない。

 そんな話の真実に最も近い当人達でさえ、その本人が認識を誤ればその人生は悲劇にも喜劇にもなりさえする。

 さて、真実の物語とは何処にあるのだろうか?

 そして、真実とは何なのだろうか?

 時間と言う名の断絶。

 共感と言う名の幻想。

 神話と言う名の妄想。

 ……答えは、あなた自身が見つけるより他はない。

 さて、ココにある一つの書を取ろう。ページをめくるか、本を閉じるかはあなた次第だ。

 本を閉じたあなたはこの本の真実を知る事がない。ただ、それだけだ。
























 ページをめくり続けるならば、あなたは、最も物語の核心に近い者の書から開かれる……

 では、しばし奈落と暴虐の道を少し辿ろうか……


【八熱地獄】


等活地獄:

生前争いが好きだったものや、反乱で死んだものもここに落ちる。この中の罪人は互いに害心を抱き、自らの身に備わった鉄の爪や刀剣などで殺しあうという。そうでない者も獄卒に身体を切り裂かれ、粉砕され、死ぬが、涼風が吹いて、また獄卒の「活きよ、活きよ」の声で元の身体に等しく生き返る、という責め苦が繰り返されるゆえに、等活という。


黒縄地獄:

殺生のうえに偸盗(ちゅうとう)、盗みを重ねた者がこの地獄に堕ちる。卒は罪人を捕らえて、熱く焼けた鉄の地面に伏し倒し、同じく熱く焼けた縄で身体に墨縄をうち、これまた熱く焼けた鉄の斧もしくは(のこぎり)でその跡にそって切り、裂き、削る。また左右に大きく鉄の山がある。山の上に鉄の(はたほこ)を立て、鉄の縄をはり、罪人に鉄の山を背負わせて縄の上を渡らせる。すると罪人は縄から落ちて砕け、あるいは鉄の(かなえ)に突き落とされて煮られる。この苦しみは、先の等活地獄の苦しみよりも十倍である。


衆合地獄:

殺生、偸盗に加えて淫らな行いを繰り返した者が落ちる。

黒縄地獄の下に位置し、その10倍の苦を受ける。多くの罪人が、相対する鉄の山が両方から崩れ落ち、圧殺されるなどの苦を受ける。剣の葉を持つ林の木の上に美人が誘惑して招き、罪人が登ると今度は木の下に美人が現れ、その昇り降りのたびに罪人の体から血が吹き出す。鉄の巨象に踏まれて押し潰される。


叫喚地獄:

殺生・盗み・邪淫・飲酒。ただ酒を飲んだり売買するのみならず、酒に毒を入れて人殺しをしたり、他人に酒を飲ませて悪事を働くように仕向けたり、などということも条件になる。衆合地獄の下に位置し、その十倍の苦を受ける。熱湯の大釜や猛火の鉄室に入れられ、号泣、叫喚する。その泣き喚き、許しを請い哀願する声を聞いた獄卒はさらに怒り狂い、罪人をますます責めさいなむ。頭が金色、目から火を噴き、赤い服を着た巨大な獄卒が罪人を追い回して弓矢で射る。焼けた鉄の地面を走らされ、鉄の棒で打ち砕かれる。


大叫喚地獄:

殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語を繰り返したものが落ちる。叫喚地獄の下に位置し、その十倍の苦を受ける。叫喚地獄で使われる鍋や釜より大きな物が使われ、更に大きな苦を受け叫び喚く。


焦熱地獄:

殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見を繰り返したものが落ちる。邪見とは仏法の教えとは相容れない考えを説き、また実践することである。大叫喚地獄の下に位置し、その十倍の苦を受ける。常に極熱で焼かれ焦げる。赤く熱した鉄板の上で、また鉄串に刺されて、またある者は目・鼻・口・手足などに分解されてそれぞれが炎で焼かれる。この焦熱地獄の炎に比べると、それまでの地獄の炎も雪のように冷たく感じられるという。


大焦熱地獄:

殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見に加え、犯持戒人(尼僧・童女などへの強姦)を繰り返したものが落ちる。焦熱地獄の下に位置し、前の6つの地獄の一切の諸苦に10倍して重く受ける。また更なる極熱で焼かれて焦げる。


無間地獄:

殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人、父母殺害・阿羅漢(聖者)殺害を繰り返したものがおちる。地獄の最下層に位置する。大阿鼻地獄の苦、千倍もあるという。剣樹、刀山、湯などの苦しみを絶え間なく受ける。64の目を持ち火を吐く奇怪かつ巨大な鬼がいる。舌を抜き出されて100本の釘を打たれ、毒や火を吐く虫や大蛇に責めさいなまれ、熱鉄の山を上り下りさせられる。これまでの地獄さえ、この無間地獄に比べれば夢のような幸福だという。

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