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15.眷属召喚

 

 ◎




 学院の裏手に位置する広大な草原、その中空に魔法陣が投影されている。幻影を生み出す魔法――《幻想》による立体映像だ。


 学院一回生は投影された手本の魔法陣を再現して、魔法を行使する。




「――《眷属召喚》」




 焼き切れた紫色の魔法陣は異界の扉を開いた。そして、時空の歪みから己の精神に根ざした化物が這い出て来る。現れた眷属は『遣い魔』と呼ばれる。


 遣い魔の召喚――『基礎召喚術』の序章である。




 学生は草原のあちこちに散り、召喚魔法を発動した。成功すれば紫色の魔法陣が焼き切れ、時空の歪みから遣い魔が現われる。失敗すればスパークし、使用者に襲い掛かる。




「なかなかハードな授業だね」


「本当にそう思ってます?」




 心にもないことを呟いたレーゼインにノアは半目を向けた。




「ほらそこに電撃受けてる人いるじゃん」


「ゼントさん……」




 すぐそこで身体から煙を吹いて倒れたゼントをセレナが介抱している。相変わらずの情けない姿にノアでさえ溜息を吐いた。


 レーゼインはルンルンスキップで彼らの元へ駆け寄った。




「セレナー! 元気ー?」


「おはようございます、レーゼ様。私は元気ですが、ゼント君が……」


「魔術失敗してるじゃん、頑張ってよね」




 セレナと話している時だけのハイテンションさに若干の気持ち悪さを感じつつ、ゼントは上体を起こした。


 スパークするとは言っても、稲妻に打たれるような衝撃には程遠く、体表面を光熱に晒され、吹き飛ばされる程度。


 そして――ゼントの傷は一呼吸の合間に消え失せた。




「魔力操作の勘が掴めないんだ。あんな細かい模様を描くなんて常人にはできない」




 闘技場の一件から、ゼントは不可視の魔力を認識出来るようになった。この力を彼の思う正しいことに使うため、操作できるように研鑽を積むフェーズに入ったのだ。


 他の者とはスタートが遅れているため力を扱えても成績は劣等生のそれだが。




「ゼント君はどうでも良くて、セレナの使い魔みたいなぁ」


「私ですか?」




 困ったように眉を八の字にしたセレナは《眷属召喚》の魔術を十全に発動した。ゼントとは違い、不可視の魔力を使いこなしている。


 魔法陣が焼き切れた。しかし、発生した空間の歪曲がすぐに霧散してしまう。




「先程から魔法を発動すると消えてしまうんです」


「はーん、これは悩ましいね」




 レーゼインはチラリ、と空を見上げた。


 青空に漂う雲間に太陽以外の煌めきがある。眩しさも相俟ってはっきりとは見えないが、細長い生物が蜷局を巻いて高高度を悠々飛んでいた。


 口から変なものを吐いてセレナの召喚魔術を妨害しているようだ。


 変なものに取り憑かれると大変だな、と他人事程度に思っているとセレナが手を叩いた。




「私、レーゼ様の遣い魔が見たいです! 魔術がお得意と聞きましたから!」


「……誰から?」


「ノアさんからです」


「ノアちゃん? 何を言ったのかな?」




 隠し立てするつもりはないが一応、メイドに釘を刺しておく。




「魔術が得意か訊かれたので、世界一と答えただけです」


「大きく出過ぎだね! 世界一は盛ってるよ!」




 ノアは冗談なのではなく至って真面目に答えたつもりのようだ。畏敬を向られるのは悪くないが、過剰に持ち上げられるとなると話が変わる。


 こうして嘘を突き通すしかなくなる、なんて物語は今時珍しくもない。


 セレナに敬われるのは歓迎だが、強さアピールは避けたい。小さくて弱そうなのがレーゼインのあるべきアイデンティティだからだ。




「……普通にやるからね――《眷属召喚》」




 描いた青紫の魔法陣に魔力を流し込む。魔力現象が励起、黒ずんだ渦が異界に接続された。


 ノアが背後からレーゼインに耳打ちする。




「レーゼ様――また『あんなもの』を召喚するつもりですか?」


「いやいや、それは流石にしないよ」




 ――流石にね、いや本当マジで。


 冗談半分で笑んだものの、彼女らには召喚術にまつわる思い出すだけでも恐ろしい過去がある。レーゼイン初めての召喚魔法は事件と呼ぶべきものだった。




 約五年前、年齢にして一〇歳の頃。


 ヴァイススター邸から数キロ離れた丘向こうにある視界の開けた湖でレーゼインはよく魔法の実験を行なっていた。


 メイドとしてノアも付き合わされ、遠くから事の成り行きを見守っていることがよくあった。


 そのトライアルの一つ――。




『――《従属召喚》』




 使用者の血を媒介に発動することで完全に主従関係を結ばれた生物を召喚する魔法。レーゼインは初めての召喚魔法でいまいち勝手でわからず、条件を絞らないまま魔法を発動した。


 そして、おどろおどろしい闇色の魔法陣から現れたのが龍かと思ったのも束の間、逆三角形の頭部と歪んだ牙が顕になった。


 先端が二つに分かれた舌が目の前に垂れ落ちた。




『キングコブラ――』




 レーゼインは茫然と巨体を見上げ、目を擦る。


 錯覚ではない、大蛇が二匹いた。鏡合わせにその身をくねらせ、左右両方からレーゼインを見下ろした。


 二頭一対の蛇の四つの縦長の瞳孔の色は各々異なっていた。




『レーゼ様ぁ!』




 レーゼインは幼くも緊迫したノアの声に振り向いて、素っ頓狂な声をあげた。信じられない光景が目の前に広がっていた。




『何じゃこりゃ!?』




 麗らかなはずの草原が橙色の炎に包まれたかと思えば、草木が変色して崩れ落ちていた。岩の裏に隠れていたノアは突然倒れ込み、地面に沈み始める。


 大蛇を召喚を引き金とした魔力現象ということはすぐに理解できた。レーゼインの周囲三メートルに限り、効果が発動していないことにも繋がった。




『お前ら、一体何を――』




 妙な魔力を発しているのは大蛇の四つの眼。


 この魔獣は魔眼を有しているのだ。


 《石化の魔眼》


 《熾炎の魔眼》


 《茫我の魔眼》


 《泥闇の魔眼》


 非常に危険な権能がその視界内で際限なく発露する。主にだけは牙は剥いていないが、それ以外の全部に反しているのなら大問題だ。


 取り分け面倒なのは――全身から吹き出ている毒の霧である。生物どころか大地すらも汚染する毒が常時展開されていた。




『遣い魔、ってどうやって出し入れすんだ?』




 遣い魔と言ったら掌サイズのものか、と考えていたが途轍もない勢いで環境破壊する害悪巨大遣い魔は想定外。


 毒が湖に侵食し、血のような赤黒に変わり始めた。


 レーゼインの焦りも尋常ではないものだった。




『これはまっずい! ――《封印シール》!』




 すぐさま、二匹の大蛇を身につけている宝石に封印、魔眼と毒の侵食を止めたものの、既に漏れ出た分は処理しなければならない。侵された大地と水を丸ごと結界で切り取り、炎熱魔法で焼き尽くした。


 この一件から、レーゼインは召喚魔法を軽い気持ちで使うことはなくなった。


 召喚される遣い魔の要件を変化させる術を学んだのだ。




 レーゼインは《眷属召喚》で召喚される遣い魔のサイズに条件を課した。ついでに見た目が可愛くなるように魔力を込める。


 魔法陣から稲妻が散った。空間が歪み、遣い魔が飛び出す。小さな影がレーゼインの掌に飛び込んだ。




「え、虫!?」




 セレナが顔を引き攣らせて後退る。




「違うよ。ほら、よく見て――」




 レーゼインの掌に乗っているのは体長三センチほど超小型の鳥だった。空色の小鳥は指先を器用に登り、顔を近づけたセレナの方を向く。




「本当です……こんな小さな鳥もいるんですね。とっても可愛い」




 遣い魔はセレナが指を伸ばすと飛び移り、首を左右に振った。


 小鳥のあまりの愛おしさにセレナは悶える。




「うっ、可愛過ぎます!」


「うおっ、可愛過ぎるよね!」




 レーゼインが可愛い、と思ったのはセレナだったが。


 小鳥は指先から飛び立つと、レーゼインの肩に止まる。頬に擦り寄った。




「サイズを極限まで小さくした甲斐があったよ」


「そんなことをしていたのですか……」


「凄いな……」




 何処か呆れ気味のノアと月並みな感想を口にしたゼント。


 その時、プチッ――と何か瑞々しいものが潰れる音がした。音源はレーゼインの肩辺りからだった。


 誰もの表情が固まった。ノアが恐る恐るレーゼインの肩を見遣る。




「レーゼ様、まさか……首を動かした拍子に……」


「……首が動かせないんだけど……血とか付いてる?」


「いえ、血は見えませんが」




 思い切って首を逆方向に曲げる。




「……何もありません」


「魔力になって消えちゃったかな……あはは」




 レーゼインの乾き笑いは至る所で発動される召喚魔法の発生音に掻き消された。


 セレナが『あ』と声をあげた。




「ノアさん、肩に小鳥さんがいますよ!」


「――いえ、セレナさんの肩にいますが」


「私の?」




 ノアとセレナがお互いの肩を指差す。


 両方を同時に見られる位置にいるのはゼントだった。




「鳥が二匹いるぞ」


「え、ゼント君の頭の上にもいますよ」


「は? いや、レーゼインの腕にいるじゃないか」




 状況が混沌としていく中、次々と出現する極小鳥の魔力性質を見透かす。結論を得たレーゼインはゆっくりと口にする。




「この小鳥は……増殖するのかな。私が召喚できる遣い魔としてのスペックを持ってないから数で補ってるみたい」




 言っている間にも肩に、頭に大量の小鳥が飛び乗った。その数は優に百匹は超えている。一匹潰したところで元々数えきれないので関係ない。


 ノアは自分の肩を歩く小鳥を指先に乗せる。




「この子達全部でレーゼ様の遣い魔一匹という扱いなのですか」


「そうみたい」


「だからあの時、大蛇が二匹出たのですね……」




 得心したようにノアは頷いた。遣い魔としてのスペックが異様に高かったのもリソースの配分の一端だったのだ、と。


 《従属召喚》と違い、《眷属召喚》は初めから呼び出しと送還の効果が刻まれているため、好きに出し入れすることができる。そのトリガーが遣い魔の名付けだ。




「この子達の名前は――数極鳥エイト。エイト、帰って」


「ピィイ」




 レーゼインの命を受けてエイトは初めて喉を鳴らした。小鳥は光の塵と化し、消えて行く。草葉の間にも隠れていたようで足下からも燐光が舞っていた。




「――私の遣い魔はこんな感じ。ノアもやってみてよ」


「わかりました――《眷属召喚》」




 時空の黒穴から姿を現したのは後光のような円盤だった。








 ◎




「――非生物型の遣い魔はかなり珍しいけど存在自体は確認されている。遣い魔は召喚者の精神性に依る、性格が不自然に形成されたものは非生物の遣い魔を召喚する傾向にあるわ」




『基礎召喚術』の講師である魔術師然としたローブの老婆――グロリア・クロノスが持論を交えて答えた。


 召喚された円盤が本当に遣い魔であるか確認を取りに行ったノアとレーゼインは各々考え事をしながら、セレナ達の下へと戻った。


 ――精神の不自然な形成。


 ノアには心当たりがあった。メイドとして拾われてからレーゼインにされた全てである。




「――合成生物はともかく、非生物の遣い魔は過分にして聞かないよね」


「……何? 大した用がないなら話し掛けないで」


「えー、教えてよぉ」




 レーゼインのだる絡みに嫌気を隠そうともしないのは、もう一人の逸れ者寮の生徒――ミコノ。


 教本を片手に一人で召喚魔法に四苦八苦しているところに、レーゼイン達が勝手に合流したのだ。




「ミコノちゃんの遣い魔見たいな」


「今から召喚するの! 黙ってて!」




 怒鳴ってレーゼインを突き放すと、何度目かの召喚魔法に挑戦する。


 魔法陣の形成、震えているが発動に支障はない。


 魔力の流し方、均等に流すことができず稲妻がミコノを襲った。




「キャアッ――」




 事件性のある悲鳴が上がる。


 ミコノは本を投げ出して尻餅をついた。稲妻が身体を駆け巡る前に回避はできたようだ。


 その光景をレーゼインはニマニマしながら眺めていた。美少女顔なので厭らしさがない表情だが、いけない愉しさが見え隠れしている。




「魔力は均一の速度で流さないと駄目だよ」


「そんなことわかってる……あっち行っててよ」




 イライラしていたのは同じ失敗を繰り返していたかららしい。


 レーゼインはミコノの後ろに回ると、手を触れ合わせる。魔力路に沿って、自分の魔力の流れを伝導させる。




「な、何よ!?」




 一回り小さな少女の指先は背中をなぞるような繊細に鳥肌が立つ。抵抗を奪うような甘く澄んだ香りが漂い、ミコノの体温は上がった。




「ほら、魔法使って」




 耳元で囁かれる。生暖かな息に熱は更に増した。


 意識している、思われるのは癪だったので平静を装って魔術を使用する。




「《眷属召喚》……!」




 レーゼインという補助輪により魔法陣の形成の精度も上がる。流し込む魔力も脈動に合わせることで一定リズムを刻んだ。


 黒い渦から遣い魔が飛び出す。


 そして――ワン、と鳴いた。銀色の毛並みをした子犬が凛々しい立ち姿を見せる。尻尾が左右に振れていた。




「こんなのが……私の遣い魔?」




 ミコノは悄然と項垂れた。


 極小の鳥やら円盤やら、使えない遣い魔だと思って見ていた。そんな自分の遣い魔が一番下らない。


 遣い魔が魔術師の精神性を映す、というのなら――。




「私には子犬程度がお似合い、って……?」


「わっ、可愛いなぁ」




 レーゼインが撫で回すと子犬は嫌そうに暴れた。


 遣い魔は魔術師の手足となって戦うものだ。戯れるものでは断じてない。




「ミコノちゃん、ほら触り心地も良いよ」


「…………」




 美少女が満面の笑みでペットを可愛がる図に白けた気分になる。レーゼインにも同じようなことを思われているのかもしれない、と。


 次の瞬間、子犬がレーゼインの手に噛み付いた。


 笑みは凍り付く。貴族の娘に手を出した遣い魔。




「――可愛いねぇ」


「何事もなかったように……!?」


「犬なら噛み付いたりもするよ。本人の魔術師としての成長に合わせて遣い魔も成長するから、そんな落ち込まなくても良いんじゃない」


「…………」




 放蕩娘と名高い少女な慰められる自分にまたしても辟易したが、悲観的になり過ぎていたことは事実。この子犬が成長するビジョンが見えないのは今の自分の現状そのもの、自分が変わらなければ遣い魔も変わらない。




「名前はどうするの? 決めてあげよっか? フェンリル、っていうのはどう?」


「了承してないから、私が決めるから!」




 こういう時にぱっ、と決められないだけでレーゼインとの差を感じてしまうミコノ。




「あ、ミココ、っていうのはどう? ミコノのミココ」


「そんなダサい名前にする訳あるか! そう、あなたの前は……――バンカー」


「ワン!」




 これから変わって行く、という意味を込めた名前だ。


 子犬もといバンカーは主の命名を認め、遣い魔としての契約は完了する。




「わぁ、可愛いですね」




 レーゼインと同じ反応をしたのはセレナだ。躊躇なく子犬を撫で回した。頬が緩み切ったところで豪快に噛まれる。




「とっても可愛いですね」


「……噛まれても痛くないの?」


「痛いですよ」


「何であんたら平然と笑ってるの……」




 バンカーはレーゼイン同様に、敵意剥き出してセレナに噛み付いていた。それでも微笑みを絶やさない少女達には恐れを覚えるばかりだ。


 セレナは頬を綻ばせる。




「私もこんな可愛いペット欲しいです」


「そうなの?」




 レーゼインが食い気味に訊き返す。




「はい、昔から欲しかったんです。可愛いくて、癒されるじゃないですか」


「癒し、ね――それは良いことを聞いたにゃあ」




 そんな中、突如、草原の一角が輝光に照らされた。


 瞬いていたのは本来、紫色に光るはずの召喚魔法陣だ。


 光の中心で「何だこれ!?」という驚嘆を上げたのはゼントである。ゼントが《眷属召喚》を発動したのだ。


 異次元の扉から飛び出した光そのものの巨体はゼントの前に降り立った。光が収まるとその生物の全貌が顕になる。




「白馬――」




 新雪が積もったような無垢なる白。


 童話から出て来た、と言われても信じられる存在感を放つ白馬はゼントの下へ歩み寄った。


 力強い水晶の瞳に目を奪われる。




「君が俺の遣い魔なのか……」




 未だに信じられず、圧倒されているとセレナが隣に立った。




「これがゼント君の遣い魔ですか……神秘的な雰囲気に満ちていますね。優しいゼント君らしいと思います」


「そんなことはないと思うけど……」




 謙遜しつつもセレナからの言葉は素直に嬉しかった。


 ゼントは腕を組んで唸る。召喚魔法自体が危うかったため、名付けのことまでは考えていなかった。




「折角なら恰好良い名前を付けたいけど」


「恰好良い名前が良いんですね」


「だって、恰好良いじゃないか」




 美しさと力強さが両立した奇跡的なフォルム。


 こんな馬は見たことがない。適当に付ければ罰が当たる、というもの。


 少しして、レーゼインとノアが遣い魔の白馬を目の当たりにする。




「召喚魔法、何とか使えたよ」




 ゼントは少しくらいは上手くやれた、と思って自慢も込めた。自分には釣り合わないだろうが、この遣い魔ならば流石のレーゼインも褒めてくれるだろう。


 そんなはずないのに――。




「あぁ、ペガサスね、ペガサス……まぁ、良いんじゃない?」


「そんなあっさりとしたリアクションを……」




 驚く素振りを微塵も見せず、淡々とした評価を下す。


 レーゼインに落ち込まされたことは数え切れないが、これが一番ショックだった。努力を評価されない、というのは精神に来るものがある。自信があればある程に――。




「ペガサス……っていうのか、こいつは」


「羽が生えた馬だから」


「羽――本当だ、ちっちゃい羽があるな」




 胴体に人の掌くらいの大きさしかない羽が生えている。


 羽根としての機能は果たしていないのは、この白馬の本来の力を発揮するだけの魔術師としての実力をゼントが有していないからだ。




「飛べるかは俺の成長次第、ってことか」


「頑張れば空を翔けるようになるかもね」


「空を――」




 ゼントは空を飛ぶ白馬――ペガサスの背中を撫でる。


 重力という軛から解き放たれた姿を連想しながら、名前を考えた。




「イデア――君の名前はイデアだ」




 ペガサスは『ホロローン』という楽器のような鳴き声を出したことで、ゼントを主として認めた。イデアは粒子となってゼントに吸い込まれる。


 一番の問題児であるゼントの召喚魔法を終えたとこで『基礎召喚術』の講義が終了した。




「……あら? 召喚できなかったの、私だけですか?」




 セレナが思い出したように呟いた。





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