様子のおかしい幼馴染
退院日当日、今日は迎えに来てくれた蒼と荷造りをしている。大方の荷物は既に親が自宅に送っている為、そこまで多いわけではない。両親は研究の最終段階ということで、俺から迎えはいらないと断ったら蒼が迎えに来ると言われ素直に甘えることにした。何より蒼は車を持っているので楽ができる。
椿にも手伝うと言われたが、流石にそこまでしてもらうのも悪いので断った。
「今日は来てくれてありがとう。助かったよ」
「退院おめでとう、足の具合はどうだ?」
「今は普通に歩けるけど、まだ走ったり激しい運動は難しいかな」
「悠月は体力ないから元々激しい運動はしてないよな?」
「うっ!確かに…それより!態々車まで出してくれてありがと」
「気にすんなよ、たまには乗らないとさ、いい機会だったんだよ。ほら荷物よこしな」
そう言って荷造りが完了した殆どの荷物を掻っ払っていった。気を使わせないためにか、一つだけは俺に持たせてくれた。
「あっありがと…」
「今日どんだけ感謝する気だよ、お前」
「いや、なんか迷惑かけてばっかだなーて思って」
「そんな事ない、てか今回の件は俺のせいでもあるだろ」
「…そんなこと…」
「これからの大学生活、俺が付きっきりでいてやるから心配すんな!」
「はぁ?俺留年してるし、そもそも学部違うから無理じゃね?」
「必修以外は一緒にいるんだよ!」
「それこそお前の負担になるだろうが!」
「そんなことねぇよ、お前が俺のそばからいなくなる方がよっぽど恐ろしいよ」
「蒼…」
「ほらついたぞ、はよ乗れ」
そう言って蒼は殆どの荷物を車に入れ、乗車を促した
「お邪魔します」
「いや家かよ、乗ったことあるだろ」
「いや一応人の車だし」
「かしこまりすぎ」
車にエンジンをかけ、病院の地下駐車場から出る。8ヶ月近くいた病院から久しぶりに外の敷地に出る。ふと病院の窓を見るとこちらを見る椿が見え小さく手を振った。すると椿も気づいたのか手を振り返してくれた。なんだか胸に暖かい気持ちが広がる。
「知り合いでもいたのか?」
「あっそう、前話した子だよ」
「どんなやつ?」
「…優しい子だよ」
「ふーん」
なんだか、尋問されてるようで居た堪れない気持ちになり黙ってしまった。いつかは紹介したいとは思っているが、なんだか怖くて出来ないでいる。"病院の友達"の話をするときはいつも不機嫌になる蒼がよくわからない、今までは俺が誰と仲良くなっても気にするような奴じゃないし、寧ろ俺のがやきもち焼きだった記憶がある。なにぶんこいつは人気者なのだ。常に周囲に人がいて…ああ、なんかイライラしてきたな
「お前こそ、大学どうなんだよ?」
「俺は変わらず順調」
「そーかよ」
「聞いといてそれだけ?」
「聞いてからお前が単位落とすとかないかって思ってさ」
「いや危うかった時あったけど」
「えっ?お前が?いつ?そんなことあった?」
「秘密」
「そーかよ」
なんだこいつと思うが深くは追求しなかった。なんか面倒臭そうだし。
「大学始まるまでなにすんの?」
「今はまだ決めてない。俺結局半年留年してるわけだから、こればかりはどうしようもならないってさ」
普段だったらやりたい事が多すぎてどれから手をつければ良いか分からないほどだったのに今は特にやりたい事がない。
興味をなくしたわけじゃなくて、なんだか色々疲れてしまったのだ。
取り敢えずは次の椿との約束まで、教授に出されている俺専用の課題でもやろう
そんなことを考えていると俺と蒼のマンションに到着した。
敷地内に車を停め、助手席の扉を蒼が開けてくれた
「ほらいくぞ」
助手席からおり、周辺を見ると数ヶ月しか離れていないのになんだか懐かしく思えてくる。
「蒼、寄っていけよ、お茶暮らしだすし」
「そういえば、お前一人で生活できるのか?暫く俺の部屋来るか?」
「いや、別に大丈夫」
「わざわざ一人暮らしとか不便じゃね?実家戻ればよかったのに」
俺の足を指し蒼は言った
「そんなことねぇよ。もう普通に歩けるし、親もお前も心配しすぎ」
「ん、りょーかい。何かあったら真っ先に俺を呼べよな」
「そん時は頼らせてもらいまーす」
そんな事はないだろうなと考えながら俺の部屋に着いた。
「部屋戻ってきたの久しぶりだ!意味わかんないけど懐かしい感じ」
「そうかぁ?悠月の部屋別に内装変わってないし」
「それもそうだな」
荷捌きをしながらふと思い出した。
「今年のクリスマスなんだけどさ」
「そういえばもうすぐだな、結局今年も家族だけかーまあでも悠月と一緒だから嬉しいよ」
うわ言い出しづらいな
「ごめん今年は、他に用事できた」
「は?」
冷たい声に驚き蒼の顔を見ると笑顔の蒼。気のせいか?
「去年も話してただろ?別々に過ごしても良いんじゃないかって、良い加減成人したわけだし。」
「で?誰と行くの?俺の知ってる人?大学のやつ?」
「いや、入院中にできた友達とだけど」
なんとなく嘘をついたらやばいと感じ正直に答えた。
「ふーん男?女?」
「お、男だけど」
「どんな関係?」
「いや、だから友達」
「ただの友達とわざわざクリスマスに会うんだ?」
「その日しか都合が合わなくて」
「それは家族のイベント辞めるほど?」
「は?去年お前も辞めたいって言ってたじゃんか!」
「っ!それはお前と」
「良いタイミングだったんだよ。お前も他のやつと過ごせば良い」
なんとなく蒼の顔が見られなくて、自身の手元に視線を戻した。
そもそもこの行事だってできるだけ集まろうね、都合が合わない人は参加しなくて良いって蒼のお母さん発案のものだった。俺らの両親は結構忙しい仕事なので、結局は蒼と二人で過ごすことが多かった。
去年はどっちの親も用事があって、知らされてないけど、当時蒼にも彼女がいたみたいだから今年は一人かなと思い、一人で出かけようかなと考えていたら、普通に部屋に蒼が来て「どこ行く?」と聞かれた。
「いや、彼女は?」と聞きたかったが、教えてくれなかったし、こっちから聞くのもなあ、となり、その日は結局一緒に過ごした。夜ご飯はどっちの親も仕事がひと段落したと帰ってきてくれたので一緒に食べた。その時に蒼のお母さんが恒例行事を辞めるか提案したのだ。折角のクリスマスなのだから好きに過ごしてほしいと言われた。
「やめられないのか?」
「もう決めた事だから、てかそんなに家族でクリスマスやりたいなら俺抜きでやれば良いじゃん」
「お前がいないと意味がない」
「お前どうしたんだよ、なんでそんな意固地なわけ?…あっそれなら、いやイブはお爺ちゃん家に予定が」
「…もう良い、部屋戻る。」
そう言って蒼は部屋に戻った。
隣に住んでるわけだし、クリスマスにこだわる理由がわからない。
俺が事故に遭ってから蒼の様子がおかしい。最近あいつのことが分からなくなってきた…いやそれは前からか
暫くすると隣の部屋から蒼が出て行った音がした。どこかに出かけたのか?
「まあ良いや、続きやろ」
途中だった荷捌きを再開した。その日は夕飯を食べそのまま寝た。
次の日、昨日のことがなかったかのように笑顔の蒼が部屋にきた。
「昨日はごめん、一番の親友が取られるのが嫌だったんだ」
「そう、で今日はなんの用?」
「退院祝いに渡しそびれてたもの持ってきた」
そう言って蒼は俺に水色の猫のストラップを渡してきた。
それを見て俺は首を傾げた
「なにこれ?」
「猫のストラップ」
「あーうん、見りゃわかる、でもなんで猫のストラップ?」
「お前猫好きだろ、この前出かけた時に見つけて」
蒼は部屋にある猫のグッズたちを指差し言った
「いや、そうかありがとう、俺も冷たい態度とったごめん。この子大切にする」
「俺も黄色の猫持ってる、お揃いな。」
「いや女子かよ」
自慢げに言う蒼になんだか可笑しくなって吹き出した
「俺、バッグにつけるからお前もつけてくれたら嬉しい」
「え?わかった。」
クローゼットの扉を開き、鞄から鍵入れを取り出す
「これにつけたら?よく使ってんの見るし」
顔の横至近距離で話しかけられて驚いた。少し離れ鍵入れを手にとりストラップをつけた。うん可愛いなこの子…大事にしよ
「良いじゃん、大事にしてやれよ」
「言われなくても!」
「そういえば昼食べた?これから外で食べ行こーぜ」
「良いね、ちょい待って準備する」
この日は蒼と一日中過ごした。




