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そして1回目の人生は終わる

翌日待ち合わせ場所である、丘の上に位置する公園にやってきた。何がきっかけか忘れてしまったが、俺たち二人は子供の頃からなにかある時、必ずここで話をするのだ。

なので昨日電話口で言われたのもおそらくこの公園の事だろう。

だいぶ早く着いてしまったな…


蒼の話は知らないけど、漸く椿を紹介する決心がついたんだ。今まで蒼に頼り切った人生を送ってきた、蒼も良い加減鬱陶しく思っているはずだ。

南さんと一緒にいた時、蒼は心底楽しそうに会話していた。歴代彼女は見た事ないけどそんな彼女たちを捨ててまで、ただ一人を選んだんだ。きっと今は南さんが蒼の"一番"


ちょっと寂しく思うけど、蒼の幸せを純粋に祝えるようになった今が幼馴染離れする時だろう。


ふと、二人用のブランコの一つに座り公園を見渡す。


「でもなんで夜の公園なんか…」


冬の17:00ともなると、とっくに日は暮れている。辺りに人の気配はなく静まり返っている。

奥にある滑り台には街灯の灯りが当たっていないからか、よく分からない物体が人の形に見え、身震いする。


♪〜♪

突如、静寂を切り裂く様に着信音が響き渡る。


「うっわ!!なになに!?」


画面を見ると"椿"の文字。全くこんな時に連絡しないで欲しいものだ、まあただの逆恨みだが…


『もしもし、悠月さん。今お話しできますか?至急お伝えしたいことがありまして』

「どうしたの?そんなに慌てて…」

『先程、茜が目を覚ましました!』

「え?まじで!?起きたの?」

『えぇ、今専属の医師に診て貰っています。まだ記憶が混濁している様で、まだ診察中ですが』

「でも目を覚ましてくれて、良かった!」

『はいっ…!一安心です。このまま目を覚まさないのではと不安で不安で…』

「それなら茜くんのそばにいてあげて、用事終わらせたら、すぐ行く。あ、でも親族じゃないから中は入れないか」

『今日は難しいですが、茜が面会できる様になったら是非会いに来て頂きたいです』

「それなら明日、病院の外で会わない?」

『わかりました。そしたら病院の近くにある喫茶店で待ち合わせましょう』

「この前読みたいって言ってた本も持っていくよ」

『ありがとうございます。茜の調子が良ければ、直ぐにでも事情聴取が始まりそうです』

「そんなすぐにやるもんなの?」

『だいぶ厄介な組織が裏にいるかもしれません』

「組織?」

『あ、すいません、看護師に呼ばれたので行きます』

「了解」

『…あの、悠月さん、今回の事件と茜の件が解決したらお伝えしたい事があります。聞いていただけないでしょうか?』


これってもしかしなくてもそうじゃない?

浮き足だって足をバタバタさせる。


何これ心臓の音が聞こえるみたいにドキドキしてる。顔も心なしかあつい…


「こんばんわ、来栖くん。とっても幸せそうね。ところで私の事覚えてる?」


突然後ろから声をかけられた。

街灯は付いているものの女には灯りが当たっていないからか、姿は見えない。

しかし聞こえた声は何度も聞いた事のあるものだった。


「南さん…」

「あら、覚えていてくれたのね」

「どうしてこんなところに」

『悠月さん?どうしました?』

「あ、いやごめん知り合いが来たみたいだから、切るね。急いで茜くんのところに行ってあげて!」

『えっ?!どっ』


着信終了ボタンを押し、スマホをポケットにしまった。

一呼吸おき、ブランコから立ち上がり、後ろにいる南さんに向き合う。


「ここから見える夜景はずいぶん綺麗ね」


丘の上からみえる夜景を横目に奈々さんが丘の下に落ちないための柵に手をかける。


「こんなところに女性一人じゃ危ないよ」

「ここって蒼くんとよく来てた場所なんでしょ?」

「えっ何の話」

「惚けなくていいのよ?今日も待ち合わせしてるんでしょ?」

「何でそんなこと知って…」

「実は彼の部屋に私物に盗聴器を仕込んでおいたのよ、彼、用心深いじゃない?最初はスマホや部屋にしようとしたんだけど、直ぐバレると思ってやめたわ」

「それで知ったと?」

「えぇ、そうよ」

「バレずに仕掛けるのって大変ね」

「…そこまでして」

「そこまでして彼の全てを知りたいの」

「…」

「彼も同じ気持ちよ」


彼女の異様な雰囲気に体が強張る


「折角、おば様に頼んでまで、やったのに、なにもかも台無し、貴方があんな場所から落ちて、蒼くんの気を引こうとしなければ全てうまく行っていたの」

「おば様?」

「なのに、なのに、なのに、貴方のせいで私の蒼くんが離れていった」

「途中まではうまくいっていたのに」

「…」

「それで貴方を殺さなくちゃいけなくなったの」

「何を言って…」


興奮して支離滅裂な話をする彼女に、警戒し、一歩後ろに後ずさる。


すると彼女は鞄から刃渡り12cmのナイフをこちらに向けた突進してきた。


「っ!!?」


間一髪で避けられたが、女は体勢を立て直し、もう一度突進してきた。


えっどゆこと?!?!

咄嗟に刃を向けてこちらに突っ込んできた彼女の勢いを利用してナイフを叩き落とす。


カランっ


「…っ!!」


腕を押さえて痛がっている彼女に近づこうとしたが、今の彼女に俺が近づけば何をされるかわからない。一度、ここから離れ警察に連絡してから戻ってこようと南さんに背中を向け出口に向かって走り出した。


瞬間、後頭部に大きな衝撃を受け、その場に倒れた。頭はぐわんぐわんと強い痛みと目眩に襲われる。耳はキーンと耳鳴りが鳴り響いていて何も聞こえない。あまりの衝撃で指一本たりとも動かせない。


暫くすると酩酊する思考の中で金属が地面に何度か跳ね上がり落ちる音がきこえた。


あぁ俺は今目の前の女に殴られたのか…油断していた…相手は女だからって躊躇うんじゃなかった、何をしでかすかわからない頭のおかしな奴だったのに…


くそ…折角椿と恋が始められそうだったのにここで死ぬのかよ…多分もう助からない…だって屋上から落ちた時より何十倍も痛いのだから…


でも茜くん目を覚ましてくれてよかった。椿と茜くんが仲直りしてくれたら嬉しいな。椿は俺が死んだらどう思うだろうか…泣いてくれるかな?少しでも悲しんでくれると嬉しいな…


朦朧とする意識の中、誰かに体を起こされた。

ぼーとする視界の中見えたのは泣いている蒼の姿。


あーそういえは蒼と待ち合わせしてたんだっけ?めっちゃびっくりしただろうな。だって頭から血がドバドバ出てる俺がいたんだから。


「すまないっ悠月、こんなことになって…」


いやほんと全くその通りだよ…お前のせいで、こんな…あ、やばい…もう無理、なんも考えらんない…


「つ、ばき、ごめ…」


そこで意識は途絶えた。


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