表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

事件は未解決

「またか…」



目に映る見慣れた白い天井をみて、呆れた声がでた。左手に違和感を感じ横を見ると繋がれた手と、先ほど起きたのか目を見開いて驚愕の表情をした椿の姿。

うわ、なにこれすごいデジャヴ、となると次は…

ギュュゥゥッ



「やっぱりかよ、いやだから苦しいって!なんで病み上がりの病人相手に抱きつこうとすんの?」

「申し訳ございません。感極まって…考えなしでした。体調の方はどうですか?」



漸く身体を離してくれたと思ったら手はきつく握られたまま、しゅんとした顔で心配そうに見つめてくる。うっわ…かわいいっ抗えねぇ!美人はずるい!こいつ分かっててこの顔してんな。手を引き剥がそうに引っ込めようとするがびくともしない。もはやこえーよ



「いやもう平気だけど、っ!!!そういえば近くに公園で見た女の子見なかった?!小春ちゃんは助かったの?!」

椿に掴みかかって話を促す。



「小林小春ちゃんなら無事です。一昨日、目を覚ましたそうなので」

「そう良かった…」



安心して体の力が抜けた。



「それと、あの時は助けに来てくれてありがとう。あの時来てくれなかったら、どうなっていたか」

「間に合って本当に良かったです。貴方を失ってしまうのではと…」

「大袈裟だな…」

「全く大袈裟ではありませんが???相手は犯罪者ですよ?」

「それでもなんとかなって…はないな、ごめん」



キッと椿に鋭い目で睨まれ怯む。



「あの日はなんとかなりましたが、今後は無闇矢鱈に突っ走らないでください。二度目の注意です。命が幾つあっても足りません」

「ごもっともです」

「キツい言い方になりますが、悠月さんが危険を犯してまで追いかける必要はありません。こういった仕事は警察に任せるべきです。わざわざ追いかけて行かなくてもナンバーや特徴を控えるなり僕らにもできることはありました」

「でも助けるのが遅くなればなるほど…」

「結果、悠月さんが捕まっていては元も子もありません」



ウッ確かにそうだ…反論しようにも普段あまり怒らない椿の蔑む様な冷たい目に口をキュッとつぐむ。美人は怒っても美人だなーと思考が明後日の方向に行く。いや、だってあまりにも怖い、現実逃避していないとやってられない!!!



「はあ…それと今日は念の為入院となりました、親御さんも来ていますので呼んで来ます。」



それからすぐ両親がやってきて抱きしめてこようとしたが、両手を突き出し、止める。いや、だから病人相手に抱きつこうとするのはやめて…心底心配をされたが、無事だと確認すると淡々と説教されてしまった。



「だいたい、悠月はいつもそうだ。だが、よくやった。そうだ、お前が助けたあの少女は今…」



コンコンッ 話の途中で扉がノックされた



「すいません。小林小春の祖母です。」「噂をすればなんとやらだね」



そう言って父は扉を開いた。次の瞬間勢いよく少女が俺に飛びかかってきた。



「お兄さんっ!!!」

「っ!って小春ちゃん??」

「お兄さんっお兄さんっ」



俺のお腹に顔をぐりぐり押し付けてくる小春ちゃんの頭を優しく撫でた。もう俺への拒否反応はない様だ。服の下にあった打撲は処置をされたのか、隙間から包帯が見えた。



「あの後、捕まらずに逃げ切れたんだね」

「うん、近くの大きな道路に出たらこの男の人の乗った車がいて、話したらすぐにお兄さんの事助けに行ってくれたの。それでねっ」



少し混乱しているのか一生懸命に話してくれている。

どうやら俺たちがいたのは太平洋側の〇〇県にある廃墟になったホテルらしい。

誘拐された場所からかなり離れており、駆けつけるのが遅くなったそうだ。


あの日小春ちゃんを逃した先には大きな道路につながっていて椿が乗車している車に保護してもらったらしい。


その後、治療を受けてる最中に服の下の打撲痕、内出血の痕が見つかり小春ちゃんの父親から酷い虐待を受けていた事が判明した。田舎に住んでいる亡くなった母方の祖母の家に行くらしい。幸い田舎ではあるものの、Ωに対しての理解のある病院があり、定期的に検査もしてもらえるそうだ。



小春ちゃんも昨日、婦警に事情聴取されあの日の事を話したそうだ。今日この後、俺も事情聴取されると両親に聞いた。

ただ、不思議なのが、小春ちゃんが学校で受けた国指定のバース判定では"不明"だったらしい。そしたら何故、誘拐犯達は小春ちゃんをΩだと断定して誘拐出来たのか…再度、この病院の施設で検査したところΩだと診断されたとの事だ。この短期間でバースが変わるものなのか…?中学の3年間かけて診断されるが、診断結果はα、β、Ωとは別に"不明"がある。それは文字の通り、今はまだどのバースにも当てはまらないという事になる。



「お兄さん、どうしたの?怖い顔して」



思考の渦に飲み込まれそうになっていると、小春ちゃんに声をかけられた。小春ちゃんの側には優しそうなお婆さんの姿がある。彼女は慈しむ優しい目で大切な孫娘のことを見つめていた。



「あっごめんね、それより本当に助かって良かった。これからは優しそうなお婆さんと一緒に元気に暮らしてね」

「うんっお兄さん、本当に本当に助けてくれてありがとう」



それから小春ちゃんのこれからの事や、学校であった嬉しかった事、まだ喋り足りないのか沢山話してくれた。あの日、公園でひとりぼっちで寂しそうにしていた少女は居ないのだと嬉しく思った。暫くして小春ちゃんは部屋から出て行った。これから引っ越しの準備があるそうだ。あの日、スマホはバキバキに壊されていたので、取り敢えず、電話番号とメールアドレスを紙に書いて渡した。手をめい一杯に振って出ていく小春ちゃんは満面の笑みだった。 



「あ、それとこちら修理しましたので、お手をお貸しください」



そう言ってあの日の様に俺の手首に腕時計をつけてくれた。



「えっこれって!!直してくれたの!?」

「はい、悠月さんの事ですから、罪悪感のせいで言い出しづらいと思ったので、予め修理いたしました」

「うっそ、直すの早いな」

「コツを掴めばどうと言うことありませんよ」

「なるほど、才能お化けか…」ボソッ

「何か言いましたか?」

「いや何でもないよ。ありがとう」

「それでつけ心地はどうですか?」

「問題ないよ。今度は壊さない様に気をつける!」

「だからって時計に気を取られすぎて怪我しないでくださいよ」

「うっわ、あり得そう…」



コンコンコンッ



「〇〇警察署の者ですが、今よろしいでしょうか?」「はい、どうぞ」



返事をするとスーツを着た警察官が2人入ってきた。一人はグレーのスーツをダボっと着崩した、お世辞にも警察官とは思えない風貌の中年の男性。もう一人はその男性の部下の新人なのか、シワひとつない紺色のスーツをピシッと着こなした爽やかな男性



「悠月さんこちらはお世話になっている竹林警部補、とこちらは」

「こいつは新人の影山警部補、今回からこの事件につくことになった。早速だが、あの日何があったのか教えてもらおうか。兄ちゃん」



なんかの刑事ドラマに出てきそうな言動のおじさんだな…それから、目の前の刑事達にあの日あった事を伝えた。犯人達が人身売買について話していた事を伝えると、途端に顔を顰める。



「あの嬢ちゃんも言ってたけどよ、取り調べを受けてる奴らは皆んな、誘拐はしたが、人身売買は知らないってよ」



"嬢ちゃん"とは小春ちゃんのことだろう。犯人達は言い逃れができると思っているのだろうか?小さい女の子の証言では、疑わしかったのだろうか?でも俺が起きて証言するのは時間の問題だった筈だ。それなら犯人達はなんで否認している?罪が重くなるのを避けたいのか?



「確かにあの時、俺たちΩを売り飛ばすのだと話していました」

「聞き間違いじゃない?」

「そんな事ありません!それにあの時、ヒートを無理矢理引き起こす薬も使われてっ」

「君の身体を調べさせてもらったが、そんな成分見つからなかった」

「そんなっだってあんな感覚」

「でも丁度、周期だったんだろ?」



確かにクリスマスから暫くしたら俺の発情期の周期がやってくる。周期もきっちりカレンダー通りに来るわけじゃないので、盛られたと言う証拠にならない。でも俺のヒートは比較的軽いもので、あんなにも興奮したのは初めて椿にあった時以来だ。クリスマスに椿と会って興奮したとか?



「竹林さん、その辺にしてもらえませんか?」



見かねた椿が竹林警部補に声をかける



「いやはや、Ωってのは大変だねー」

「竹林さん!!…今日の所は退出して頂けますか?」「わかりましたよ、"緋宮"の坊ちゃん」

「…」



"緋宮"…もしかして椿は…



「それでは私達はこれで失礼します。またお伺いしますので、その際はご連絡差し上げます」



そう言って影山警部補も続いて出ていった。

腑に落ちないが事情聴取は終わったようだ。自分でもΩというバースがもたらす現象を全て知っているわけではないので、また詳しく調べる事にしよう。

それとどうにか犯人達と面会はできないものか…あのまま言い逃れされてしまうとまた次の犠牲者が出るかもしれない。誘拐したことは事実のため、暫く勾留場にいる事になるとは思うが、何事も早い方がいい。



「明日、退院後僕の弟に会ってもらっても良いですか?」



と、椿が聞いてきた。

以前、入院しているという弟の事を聞いたら話したくないのか黙り込んでしまった事があり、「言いたくなったら教えて欲しい」と伝えていた為、遂に相談してくれるのかと嬉しく思った。



「えっ?いいの?」

「はい、悠月さんのお父様、お母様、息子さんをお借りしてもよろしいでしょうか?」



まるで蚊帳の外であった自分の両親を見ると、心配そうにしていたが、すぐに了承してくれた。

面会時間後少しのため、両親と椿は部屋から出ていった。何か話すそうだ。

その日は、薄い味付けの病院食を食べ、Ωについての論文を読んでから眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ