目覚め
ハッと目が覚め、飛び起きた。目の前には見慣れた自分の部屋。身体中にはじっとりと汗をかいていて気持ち悪い。
ズキッ
頭に手をやるがそこにある筈の傷は見当たら無い、だが、あの女に頭を殴られた衝撃は覚えている。
最後に目に映ったのは俺を抱きしめ"すまないっ"と泣くあいつの姿。
「はっはぁ…はぁはぁ…っ…ふっ…ふっ」
体中から溢れ出る死に対する恐怖、あの時の激痛、自分が死ぬ感覚、それらを払拭するため、一度深呼吸をする
暫くすると比較的落ち着いてきたので近くにある自身のスマホに手を伸ばしホーム画面を目にして驚く
「…202*年10月5日…」
その瞬間体が勝手に動き、部屋から飛び出した。まさかこの日に戻ってこれるなんて!今なら、あいつの弟、茜くんを助けてやれる。前世では完全には救えなかった俺の運命の相手の弟
「はっ…はぁ…ふっ…っ…」
足に自信はあるが距離がある為犯行時間には間に合うか怪しい、電車に乗るにしても場所的に遠回りになる。
すると目の先に赤信号で止まっているタクシーを見つけ、窓をドンと拳で叩いた。運転手は怪訝な顔をして後ろドアを開け、乗車を促す。
「お客さん…うちの商売道具、壊されると困るんだから普通にノックしてくださいよ」
「あっすいませんっ!こ…こに…はぁ…今すぐ行かないといけないんっ…です…俺の俺の大切な人…を助けたいんです!」
そう言ってタクシーの後方座席に乗り込む
運転手は驚いた顔をしてため息をついた。
「はぁ…わかりました。できる限りは急ぎます。何も聞きませんから、まずは落ち着いてください」
「っふ…あっりがとうご…ざぃます」
上がった息を整えるため、窓を開け、深く深呼吸し、これからの作戦を頭の中で構築する。
確か、あいつと茜くんはあの商業施設ではぐれ、茜くんは地下駐車場で誘拐された筈だ。
茜くんが地下駐車場に連れてかれる前に会えればいいのだが、最悪、犯人たちとやり合ってでも茜くんだけは逃してやりたい。
頭の中で考えを巡らせていると目的地が見えてきた。
思ったより早く着いて驚く、かなり飛ばしてくれたのだろう
急いで出てきてスマホ一台しか持ち出せなかったが、内蔵しているクレジットカードで支払いをし、礼を言った
急いでタクシーからおり、商業施設の自動ドアを潜る。今から施設内を回って探すには広すぎるし、犯行時間は近づいている。目指すは地下駐車場A、誘拐を阻止するために、前世で聞いた犯人グループが使用していた車の偽装ナンバーを探しまわる。
「たしか…品川341の…」
頭の中にある犯人グループが使用していた偽装ナンバーリストと目の前の車を照らし合わせる。
「っ!!」
件の車両を見つけ、思わず声に出そうになったが運転席に人がいるのを見て、咄嗟に口を噤む
まずい…見られてしまったか?迂闊だった。犯人の一人が車に乗っていないはずがなかった。幸いにも犯人はスマホでのやり取りに夢中なようでこちらには気づいていない。
すると店内へ続く入り口が開き、よく知った人物が出てきた。
見つけた!!!
しかし、その人物の背後から二人組の男が出てくる。帽子を深く被り、マスクをしている。おそらく監視カメラに素顔を取られないようにしているのだろう。咄嗟に動き出しそうになる足を押し留めて、スマホでタイマーを30秒後に設定し近くの車の下に置き素早く、茜に近づく
「♪♪♪」
その瞬間よく使われている着信音が鳴る。
全員が目線をそちらにやった瞬間に茜の手を引き、店内へと続く入り口に走り出した。




