表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第四話「カプセルGO、価格の壁を越えろ」

鈴木は、かつての営業時代の同僚・田村と、神奈川の某自販機メーカーの技術センターで再会する。 「清涼飲料水の筐体じゃ無理だよ。あれは缶やペットボトルを重力で落とすだけ。カプセルは詰まるし、サイズも不安定」 田村は図面を見せながら続ける。

「でも、物販用の汎用型ならいける。トレイ式で、搬出も制御できる。12種類までセット可能だ」

鈴木は思わず口元が緩む。 「屋外でカプセルトイが買える…これだ。名前は…“カプセルGO”だな」


数日後、鈴木は三浦社長の事務所を訪れる。 資料を広げながら語る。

「12種類対応、屋外設置可能、IoT連携も。今までのガチャとは違う“体験型”です」

三浦は資料を黙って見つめる。 「…で、価格は?」

「1台100万です」

三浦の眉がピクリと動く。 「最近のガチャ筐体は、2種類販売で6万。価格差が…16倍以上ですね」

「確かに高い。でも、屋外設置で通行量を狙える。販売本数のポテンシャルは桁違いです」

三浦は腕を組み、静かに言う。 「収納本数は?人気商品がすぐ売り切れると、設置者は不安になりますよ」

「1種類あたり約10個。12種類で120個。補充頻度は上がりますが、回転率は高くなるはずです」

三浦は資料を閉じた。

「…正直、価格が重すぎる。実績がない限り、購入は難しいですね」

鈴木は某自販機メーカーの営業部に連絡を入れ、価格交渉に乗り出す。

某自販機メーカー営業部の応接室。 鈴木は、資料を広げながら懸命に語る。

「この筐体、価格をもう少し抑えられませんか。導入の壁が高すぎるんです。まずは実績を作りたい」

営業担当の佐藤は、資料に目を落としたまま、しばらく沈黙していた。 やがて、静かに口を開く。

「正直、社内でも議論になっています。物販自販機の新用途としては面白い。屋外でカプセルトイを売るという発想は、確かに新しい」

鈴木の表情に希望が灯る。

「ただ…」 佐藤は言葉を選びながら続けた。

「価格を下げるには、“共同プロジェクト”としての位置づけが必要です。つまり、御社が販売実績を保証できるなら、社内稟議は通しやすくなります」

鈴木は深くうなずいた。 「つまり、まず“売れる証拠”を作れってことですね」



しかし佐藤は、そこで一歩踏み込んだ。

「…鈴木さん、失礼を承知で言いますが、御社はまだ個人事業主ですよね。法人格もなく、資本金も少額。社内的には“信用リスク”が大きいんです」

鈴木は言葉を失った。 その通りだった。法人化もまだ、資金調達もこれから。実績もゼロ。 「…ええ、仰る通りです。でも、だからこそ“最初の一台”が必要なんです」

佐藤は少し柔らかい表情になった。 「気持ちは分かります。ただ、我々も社内で稟議を通すには、最低限の“保証”が必要です。例えば、設置先が確定しているとか、販売予測が具体的に出ているとか…」

鈴木は小さく息を吐いた。 「設置先は、今交渉中です。三浦社長が興味を持ってくれていて、売上が見込めれば購入の意思もあると。ただ、現時点では“仮”です」

佐藤は頷いた。 「では、まずはその“仮”を“確定”に変えることですね。三浦社長の協力を得て、実証実験を組めるなら、我々も“協力の余地”はあります」

鈴木は立ち上がり、深く頭を下げた。

「必ず、売れる証拠を作ります。三浦社長にも、もう一度掛け合います」

佐藤は微笑みながら言った。 「その覚悟、嫌いじゃないですよ。お待ちしています」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ