奮闘
どの生き物も居ないだろうこの荒野に、彼女はトリューと僅かな兵士を連れてやってきていた。
崖の下を覘けば大きく黒く禍々しい穴が開いていた。
「地獄の世界は何もないんだって、ストネットが言ってたぜ」
「……じゃあ、魔物は……何処から来たんだろうね」
後ろの兵士はアタシタチが逃げないように監視を言いつかってココにいるが、今すぐに逃げたい衝動に駆られているのだろう、足がすくんでいるものも居れば、決して崖の下を見ようとしないものも居た。
「……はっくしゅん!」
空気が止まった
「ばっくしゅん!はくしゅ!う~はっくしょん」
「ユイ大丈夫か?」
「う、うん。はぁ~……くしゅん!」
何故かくしゃみが止まらない
「誰かアタシの噂してるのかなぁ?」
「まさか」
「あの、偵察はもう済みましたか」
若い兵士が堪え切れず話しかけてきた
「あ、はい終わったといえばそうです」
なんのいい案も思いつかなかった。
「では戻りましょう。その……ココは異様に……寒いので、風邪をひいてしまわぬように」
寒い?
「確かに、少し冷えてるね空気」
それでくしゃみが止まらなかったのか~
納得
「うん、戻ろうか」
しゅるん
「―――!」
足が何かにつかまれたと思ったのとほぼ同時に身体が空に投げ飛ばされていた。
頭の上を見ればアタシのいた場所に魔物が居た。
「うわぁああああああ」
逃げ出した兵士の前にも魔物が現れた。どうやら囲まれていたらしい
「伏せて!」
すぐさま能力をチャージして放った。
ドオォォン
威力はまだまだ弱かったが襲われかけていた兵士が逃げるには十分だった。
「って、わわ、わ、わぁああ!?」
アタシまだ受身取れないのよ~!
地面が近くなってきた
「ユイ!」
ドサ!
「いったった~」
「大丈夫か?」
手を差し伸べられて起き上がる。魔物はまだアタシ達を囲んだままだ
本当、ファンタジー要素増えてきたよねこの世界
「勇者とか現れたらいいのに」
「何言ってるんだ……危ない」
ゴリラとライオンを練り合わせたような魔物が突進してきた。トリューはアタシを押すと剣で魔物の攻撃を防御した。
「くっ!」
重いその攻撃に耐え切れず後ろに足が後退していく
「トリュー!避けて」
「!」
トリューが声に反応して横に飛びのいた
ドォォォォオオン
今度は直撃したので魔物も体中煙を上げて動かなくなった。
「やばいかもナ」
「大変だね」
「人事だな」
さぁ、どうしようか……