漆黒のアタシ
「服と食事ありがとう、マルクム」
朝日に輝く紫は大阪のおば様たちの頭の色よりも自然で美しい。
あぁ、これぞ地毛の賜物
「と、どちら様?」
焔のように赤い髪とキッツい眼差しの青年がさっきからずーと、睨んできていてもう痛いを通り越して痒い
「ムイト、睨みすぎだ」
「……ふん、こいつが……ねぇ」
態度の悪い男だ。家の兄には劣るけど!!
「で、教えて欲しいんですけどゾッチャーさん」
ゾッチャーというなの村長さん。男だってさ
「『漆黒の現人神』ってなんですか?」
「この世には幾千もの神々が居られる、神と人が分かつ時が来たとき、漆黒の現人神は現れ、この世に『変革』をおこす」
なんか、スケールの大きい話しですよ
ついていけない
そんな力持っていない、いるなら自分の人生を練り変えたいよ
「あたしにはそんな力持っていません、魔物にだって、劣ります」
ここで天狗になってもなぁ
とりあえず、ハードル下げとこっと
「……しかし、貴方からは『気配』を感じる」
「はぁ?」
「ちび、なにもってるんだ」
「いや、ムイトさんだっけユイだってば。何って……」
ごそごそ
あ
「ビー玉」
忘れてた
あれ?でも一々ポケットに入れてたっけ?うーん、ミステリーというよりホラーだなコレ
投げちゃえ
ぽい
「おい!?」
ムイトが出会った中で一番大きな目を開けてたまの行方を目で追った。そしてその後走り出し、冷静沈着のマルクムが急いで投げた窓から身を落とした。
「わぁ、軽やか~」
「今のは恐らく『偉大な神の御霊』じゃろう」
「なにそれ」
あれがなんだって?
「この世と地獄の間にある扉の鍵です」
「私も探すよマルクム~ムイト~」
数分後
「えと、すみませんでしちゃ」
謝ってる最中に噛んじゃった。ムイト怖いよ~睨まないでよ~最初っから怖かったけど今じゃそんなの比じゃないぐらい怖いよ
「だって~びっくりしたんだもん、普通入れた覚えの無いものがあったらびびるでしょ」
「吃驚したのはこっちだ、ココまで無知とはな!チビはこれだから」
「ムイト、ユイは何も聞かされていない」
「そーだそーだ!ついでに無知じゃなくて軽率なだけだよ」
ムイトに無言で頭を掴まれた。アイアンクローというやつですかな?といあえず骨にひびが入る前に素直に謝っておこう。そしてもう何も喋るまい。
老人はほっとしたように一息ついた。
「つまり、コレが大事なのは分かりました」
いまのところはね。
そして大事なものを太郎君の甲羅の中に入れる。
太郎君、本当はテェッシュ入れ
「地獄、マントルの世界に住んでいるマグヘイムと、ミドガルドが交わらないために、間に神々がつくりし永劫の扉があるのです、貴方の持つソレは、永劫の扉を開く鍵なのです」
「……」
「わかってるか」
「全然」
「まぁ、とりあえず大事なもんだ」
「それはわかったOKOKよ」
何でそんなたいそうなものアタシが持っているんだろう。ココに来たときにでも盗んだか
それともファンタジーちっくに選ばれし者とか?
「ふとした疑問なんですけど、神々って何処に居るの」
「常におそばにおられます、ただ凡人である我々には見えないだけで」
「胡散臭い」
中学生の純粋な子どもが親に、サンタさん今年は来るかな?って聞いて、親にいい子にしてたらね?って言われて流されるぐらいのレベルで怪しい。
「ちなみに、『漆黒の現人神』は何したらいいのかな」
「神が導きましょう」
だから、オレは大きな男になるぜ!たとえば?……世界を目指す!レベルの会話で流されても困るんだよなぁ
「まぁ、アタシには重い任務なのでエンリョウします」
なんなら珠返すよ
「それがあろうが無かろうと、ユイはねらわれる」
マルクムが言う言葉に身に覚えがあって、口を閉ざした
―――アタシハ、ドコヘイッテモ
「漆黒を纏っている限り」
―――シアワセニ、ナレナイノカナ
「……あははは、あーはーは、あははは!」
太郎君を持ち上げる
「それでもいっかぁ、人生ごくごく普通より刺激的なほうがいいもん」
「命狙われるんだぞ」
「死にたくないけどさ、何事も動かなきゃ話し進まないでしょう?」
「その珠狙う奴だっているし」
「コレ?」
太郎君から翡翠色のビー玉を取り出す。
「……(じ~~~)」
「おい?」
ぱく
「!!!???」
「何喰ってんだ!吐け!」
「ン~・・・・・・ごっくん、ぽはぁ」
「な、何している!!!」
「のんだ」
ムイトに襟首をつかまれ持ち上げられた、足が浮いて息苦しい
「お前、自暴自棄になってんじゃねぇぞ!いっとくけどな、お前だけじゃない、もしものことになればこの世界も崩壊するんだぞ!!」
今の状態ピッタリの赤色が目に移った。
「ごめん」
素直に謝る
「おいしそうだったから」
きゃー
ムイトに窓から投げ飛ばされました。
女の子なのに~