疑問符
空に響くような金属音が響き渡る
「うわ、っと、あた!」
そしてアタシは今日で14回目の尻餅をつくことになった
「弱ぇ」
イチルの容赦ない一言
木の棒を片手に溜息つく、運動神経云々よりも、異常的な強さを誇るイチルが全くの手加減無用で攻撃してくるから仕方のないことだと思う、むしろ受身を取れるようになったアタシって凄くないですか?
「雑魚」
この人前々から思ってたけど、酷い
「だってイチル!アタシそもそも素人……」
「知らん」
即答
口を尖らせていると、木の陰に座り落ち着いていた頭領は微笑ましそうにあたし達を見つめて呟いた
「全く、数奇な世の中ですな」
「何が?」
横に座っていたトリューがそう聞くと頭領は小さい声ではっきりと言った
「漆黒ですよ」
「?」
漆黒、呪われた肩書きを持つ不思議な名
「彼女―――イチルも、また漆黒なのですよ」
「!」
「おい!野郎!人のことベラベラ喋ってんじゃねぇええええええええ」
「う?え!きゃああああああああああ」
怒ったからってアタシを投げ飛ばさないでぇええええええええええ!!??
「トリューティテス君出番です」
ぐい
「俺か!?」
ごっちーん
……オデコぶつかった~
「痛い~」
「っつぁ~ユイ、お前石頭だな」
「はっはっは、おやヴェルゼが泣き出しましたな」
そういって赤ちゃんを渡される
「ところでいい加減、戦場はその怒り火を大きくさせるばかりですな」
「うん」
カーミルが言ったのを真似するつもりはないけど、大三帝国戦争にまで事は大きくなっていった……小国も大国に巻き込まれ、どんどん植民地化され始め、戦争は収まる気配をいっそう無くしていった
戦乱の世、なのかも知れない……
「ルート達、大丈夫かな……」
太郎君のお腹の中に黄金の葉を入れたまま置いてきたから、呼ぶ手立てはないし、会ったところでどうすることもできはしないだろう
「そういえば、ね頭領」
「なんですかな」
「エレボスって何?」
神さまが言ってた、エレボスに繋がるって
「この世と地獄の間にあると言われる、暗黒界ですな」
「暗黒界……?」
「今が丁度その様なときですな、ソレが何か?」
「え?あ、ううん何でも」
暗黒界が繋がる……つまり、戦場は拍車かかるってこと?
「ユイ、一人で悩むな、俺らがいるだろ」
トリューに頭を撫でられ意識を戻した。
「うん、そうだね」
大丈夫、あたしは一人じゃないはず
「でも」
赤ちゃんの頬をそっと撫でる
「アタシ、何が出来るかな……何もかも中途半端で、無力で、何もないのに」
力があってもコントロールできていないし、変わると決めたのに、何一つ変わってはいないし、戦争を止めるといっておいて、こうして今もダラダラと時を過ごしている
アタシは、人の不幸しか呼べない、毒婦だね
「お前、見てるとイライラするなおいコラ」
イチルに頭をつかまれた、あの痛いっす、力込めすぎっすっていうか、ぎりぎりいってます。
「ギャー――!?痛い痛い!ミシミシいってるよ!コレって絶対骨だよねぇ!!?」
「ハッキリしろよお前、じわりじわり成長してんなよゴラぁ?あぁ?」
「ねぇそこってさ『ゆっくりでもいいから前に進もう』じゃないの!?ねぇ!!」
「はぁぁぁあ?」
心底呆れた声出された……だーかーらー!ピキピキいってるから!?ねぇ!泣いちゃうよ!っていうか死んじゃうよアタシ!
「だから甘ちゃん坊ちゃん時にも言ったろ?『強くなるのに、時は関係ねんだよ』成長も然り、お前がそこで変わると決めたそんときに、前には進んでんだよ」
「あの、わけが分からな痛い!?」
メキっていったよ!?
「ようは、『行動にうつれ』と言いたいのですな」
頭領がそういうとイチルはやっと手を離した。あー頭が軽い~
「そうだよ、とやかくゴタゴタいってる暇があるんなら、さっさとやればいいんだよ」
「イチルって、考え方が単細胞」
ごす
「いたーい」
ヴェルザみたいに泣きそう
「ユイ」
トリューはあたしの肩を掴むと真面目な表情で目を真っ直ぐに見つめた
「何?」
「お前の人生、お前で決めていいんだ。でもな、俺のことも考えといてくれ」
「なんのこと?」
「言っただろ『ずっとココにいてくれ』って、俺はお前にずっとここにいてもらいたいんだ」
「え?何?なんでこんな空気になってるの!?」
なんでいきなりシリアスからラブコメに変わったの!?基本真面目嫌いなあたし困るよ!?
「お前は俺が守る、だから俺の傍に居てくれ」
なんでこんな雰囲気になったのぉぉおおおおおお!!??
あぁもう顔から火が出るぐらい照れる!恥ずかしい!どうしよう!どうしたら言いのかな!?あぁぁぅう~もう~いいや!
「アタシ、この世界に居るつもりだよ!」
今言うセリフじゃないよね!でももういいや!
「ずっと、……だからアタシねトリューの傍に居てもいいかなぁ?」
「勿論だ」
きゃぁあああああ
抱きしめられタァぁあああああいやー照れる~~~飛んでいきそうだよ~ツバサを下さいだよ本当に~
あぅ、目の前が揺らめく~
「あ、ユイ!」
ってあららぁ、本当に意識が飛んじゃった~お休み……