赤ちゃんとお風呂
「なんで?」
かっぽーん
真昼間にお風呂もいいけど、戦争でみんなてんてこ舞いなのに……銭湯になんて入ってていいのだろうか?
「きゃきゃ」
ヴェルザは嬉しそうに桶の中ではしゃいでいた。
いや、確かにいいお湯ですけど~
岩の向こうのほうで一人で落ち着くイチルの片手にはおこちょが握られていた。
きっとお酒のんでいるんだろうな
「ねぇ、イチル~」
どうしてこっちこないの?って聞いても『一人が好きだから』っていって適当にあしらわれるだろうから聞かない
だから
「頭領知らない?」
「あいつなら、男子湯だ」
「え?」
堂々と覘き?
「それとも離れがたいぐらいトリューが好きとか?」
師弟関係らしいし……あれ?関係ない気がする
「meは男に惚れる趣味はないですな」
「え_?!」
じゃあ
「レズ予備軍?」
「話は最後まで聞いてほしいものですな」
「ユイ、師匠は本当は43で男だ」
「え?」
43のオッサンで男?
ソレが今や12歳ぐらいのか弱い少女?
「・・・・・・・」
沈黙がその場を支配する。
でも正しくはヴェルザが水を叩いて喜んでいる音が響いているけど。
「もしかして、ロリコンとか……そういう類で」
「はないですな」
「ですよね~」
好き好んでそんな姿になる人ごく一部しかないよね~
「頭領ってなんでそんな姿なの?」
「そうですな、語るも涙、聞くも涙なのですが、ル二ソーラをご存知ですかな?」
「うん知ってるよ」
あの恐らく世界で一番お茶目なおじいちゃん。
「あれもmeと同じ年齢なのですが」
「えぇぇ!?嘘」
「実はアレとmeは同じ、『デズヘイムール大国』にある小さな村の出身者なのですが、そこでは皆が皆、修行しだいでは移動魔法が使えるのですな」
『デズヘイムール大国』の国の人だったんだ、気がつかなかった。じゃあ全く脱がない帽子の下は銀色なのかな?
「そして、彼とmeは腐れ縁であると共に強敵同士で……ある日魔法対決をしたのですな」
スケール大きいなぁ
「そしてこの姿」
いきなり話をはしょられた!?
「え?何?何が起きたの!?」
「ですから、魔法勝負をしているうちにこのような姿になったのですな」
つまり?
「よくわからないうちにこの姿になっちまったってこった」
トリューの声が補足したが、全く分からない
一人でまったりしていたイチルの呆れた溜息のつく音だけは聞こえた。
「まぁ、結果この姿をかなり嫌がったmeの負けで勝負は決まったのですけどな」
「おじいちゃん確かに気にしてなかったね」
むしろ性格と姿が一致しているかも……
「あちー」
イチルの温泉から出る気配がした。湯気が一気に立ち込める
「もうでるの?」
「短気ですからね」
「うっるっせぇ!」
ばき!!
女子と男子湯を囲んでいた竹の柵が横に倒れていく……
「え?えぇ?えぇぇええ!!」
男子湯と混浴なった。
しかも竹柵が倒れる際に巻き起こした風圧で湯気が一瞬消えた際に、トリューと眼が合った気がした。
アタシ、タオル……巻いてなかったんですけど?
……見 ら れ た !?
「ぃぃ……いやぁ――――ァ!?へんたぁぁぁぁああい!!」
能力のチャージされる音がする
「!?ちょ、ユイ!待て不可抗力だ……っ!?」
「おやおや」
「さいってえええええええええええええええええええ」
能力の爆発する音だけが響いたとさ