赤ちゃんの名前
「アンコウの口の中って息できるんだね、っていうか……洞窟みたい」
「うぇええん」
「え?何で泣くの?!お腹すいたの!?あぁ、痛い!こけた」
薄暗くていまいち周りが見えない。いや、見ないほうがいいのかもしれないけど
「お前等、うるさい」
不機嫌そうなイチルの声だけが聞こえた。
「明かり~」
「ちっ」
小さな煙草の明かりが灯る
「……うわぁ、安心~こうゆうの、なんてゆんだっけ?」
赤ちゃんもきゃっきゃと泣き止んだ
「あ、風前の灯!」
「死ぬのか?」
あれ?
ぷぅっつ!
うわぁー、吐き出された……
「なんかショック」
さぁぁああ
少しだけ強い風を感じ顔を上げた。
「わぁ~」
山の上
「え?」
さっき水の中移動中のアンコウの口の中にいたよね!?
「えぇええええええええ!?」
「うるさい」
ごん、と頭を殴られしゃがみこんだ。駄目だ、今のは痛い
「きゃっきゃじゃないからね~赤ちゃん、あ~ねぇイチルさん」
「イチルでいい、気持悪い」
「えぇ今更!?」
本当に酷いなこの人
「じゃあ、いひる……ごほん!イチル」
あ、でも返事しないんだ
「このコ、なんて名なの?」
「しらねー」
知ってようよ~
「ん?」
花が、綺麗な色の花びらが舞うように横に流れていった。まるで桜吹雪のように優しく美しく儚げなその温かさ
花びらは止まることなく山の下まで飛んでいった
「綺麗~ここなんていうの?」
「ノルン神山……『ヴェルザンディ』」
「すごい、立派な名前……立派過ぎて聞き取れなかった」
すっごいあほを見るような目で見られた。といってもゴーグルで分からないけど
「そうだ、あかちゃんの名前……ヴェルザン……ディ?からちなんで『ヴェルザ』って呼ぼう」
「ちなんでねぇし、まんまじゃないか」
「い、いいんだよ!だってこの子には本名あるはずだし、いずれは本当の親のところに返さないと」
きっと、この子のこと待ってるはずだから
「好きにすればいい、しっかし、あんま跳ばなかったな」
跳ぶ?
「ここミットガウン帝国とヴィルエールフ北帝の境だ」
「へー」
「お前、とことんあほだな」
「へぇ?」
殴られそうなので口を閉じる
「つまり、ココらへんで戦争の摩擦がおきるってこったろうが」
「?」
「ここが、戦場になる」
「!」
戦争
「今はお互い休戦中だな、よしユイ」
イチルがそこらへんの木に垂れている蔦を器用に集めると、繭のようなゆりかごを作った。
「ここに餓鬼おけ」
「?うん」
置くとウトウトとしてすぐさま眠った。うんうん子どもは良く寝たほうがいいんだよ
多分
「ほい」
木の棒を渡される。
うん、意外としっかりしてる
「イチルこれなーにぃぃぃいいい!!??」
クー○ポコじゃないけど変な甲高い声が出ちゃった。
だって
「いいぃぃ!?ななな」
木の棒を狙い攻撃を絶えず加えてくるイチル、動きが早すぎて追いつかず、力も技が重過ぎて返すことすらできない。
「おら、特訓だ」
いきなりのスパルタスタートだった。
えー