赤ちゃんと脱出劇
皆戦ってる。アタシはどうしたらいいんだろう
「ユイ黙ってきたけど良いのかい?」
「ん?イチルさんのこと?」
オニギリをほおばりながらアタシタチは城へと向かう。いやー並木道ならぬ金持ちハウス道ですなーむしろ道が狭く感じるよ
「大丈夫大丈夫、どうせお城とか興味ないと思う」
知らないけど
腰につけていたポーチから哺乳瓶を取り出す。このポーチは向こうから持ってきたものだ。それにしてもこの世界の絶対の掟か知らないけど、女性の服は絶対肌を出さない、なのか……用意される服は絶対長袖ロングスカートだ
イチルさんは露出激しい服と思う。そのかわりブーツは足の膝上まであったけど。この国ではあまり見かけないミニズボン……デニムっぽいのはいてたなぁ~あたしもほしいな~
「ユイ?」
「ん?」
哺乳瓶を飲ませた後背中をトントンと軽く叩いてげっぷさせる。手探り状態だが赤ちゃんの世話も慣れてきた。名前どうしようかな~
「ユイ、ここからは城だから」
「あぁ、うん。奇声発するな、でしょう?分かってるよ」
でも感動したらいっちゃうと思うけど。
赤い絨毯の上を歩いて渡り、謁見の間へと通された。
「あれ?」
王座には誰も座ってなかった。
いないじゃーん
「あ、すみません。お早いおつきですね。少々お待ちください」
そうカーミルがいうと笑顔で去っていった後、ばっしぃいいいいいいんと何かが思いっきり叩かれる音が響いた。アタシとゼシル君は苦笑いするしかなかった。
「いたったった」
金髪のロン毛がよれよれの状態で出てきた。思ったよりも、若い
「よう、来たなゼシール」
そしてフレンドリー
「陛下が御呼びとのことで参りました……何用でございますか」
「おう!前線で戦っているウォーレンをちょっと呼び戻してきて欲しい」
「私が、ですか」
「お前だ」
何この二人の会話
突っ込みたい……我慢我慢
「ところで、お前の隣にいる女……お前のこれか?」
小指立てる
「ち、違います!」
「オーオー、照れちゃって~」
ニマニマ喜ぶ王様、北帝国の王様とは大違いだな。向こうは落ち着いてキザだったけど、こっちはチャラっぽくて野暮
「あの、アタシ王様とお話ししたいのですが、いいですか?」
こうゆうのって、勝手に喋っちゃいけなかった気がするけど……まぁいっか
「お前がユイか、カーミルから聞いてる。なんだ?話せ」
面白いものを見るような目で品定めしてくる。恐らく試しているのだろう
でもアタシはそんなに高貴なものじゃないから、気にしないで言いたいことだけ言おう
「戦争をやめてくれませんか」
「無理」
ココの人たちってムカつくぐらい即答するよね
「まぁ、そう睨むなって~わけがあるんだよ~」
へらへらと嗤う陛下
「国王は君臨するけど統治はせずってな」
あれ?どっかの世界史で聞いたことあるような~?
「なんでか政権は導師ストネット=アルバージンにある」
わー本当に不思議ですね~ふざけんなー
「つーわけよ」
「え?今ので説明終了!?」
全く訳分からないよー
「それより、俺が気になるのはお前の髪の色だな」
「?」
「『漆黒の毒婦』だろ?ソレに出会いしだい『殺せ』と俺は命令しなくちゃいけないんだが」
「……殺しますか?あたしを」
真っ直ぐに見つめれば陛下は八重歯を見せて嗤った。
「『規則』だからな」
指をアタシに向けて鳴らした。その場に居た兵士全員がアタシに刃を向ける
「……って、またなの!?ゼシル君」
君何回アタシ裏切るよ!?
「えぇぇん」
「あぁ、ほら赤ちゃんも泣き出した!」
ゼシルを見れば
「すまない」
またかーい
その悔やみ顔いらないから!ある意味君清々しいから!
絶体絶命のピーンチ!!
「陛下」
カーミルが間にはいった
「ん?」
「ユイ殿が持っている赤子、もしかしたら大三帝国のうち一つ、『デズヘイムール大国』の王族ではないでようか」
「マジで?!」
アタシが一番ビックリだよ!
「6番目の妹の情報によりますと、最近王国の末姫が攫われたと」
「ひ、人違いですよ!きっと!だってアタシそんな国しらな―――……」
『あん?そこにいたのか』
『んなわけあるかよ、連れだ……良く言えばな』
い、イチルさん―――――!?
「おいおい、そんな可能性のアル子どもがうちにいたら、ますます三国ややこしくなるじゃねーか」
陛下が困ったような顔をした。でも困った顔になる。
「大三帝国全ての戦いになりそうですわね、題するなら『大三帝国戦争』でしょうか」
「カーミル~まんまだぞー」
ああ、アタシって、アタシって……本当に災いを呼ぶ『毒婦』~
がっしゃあああああああん
天井のガラスが破られ上からガラスの破片が落ちてくる、ユイはとっさに能力でガードした。
「何奴!」
どん、上から何か落ちてきた。
「俺か?俺はな―――……『イチル』だ」
赤ちゃんが泣き出した。
イチルさん、空気読めないにもほどがあるよ?