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愛と別れ


「ユーちゃん……もう、私達友達じゃないから」

「でも、そうだね」


昔、友達だった二人をアタシは何年かぶりに呼び出し、話し合った。

もっと仲がこじれるかと思ったが、月日が二人を慰め、大人にしていた。


「ありがとう、ゆーちゃんズットもやもやして生きたくなかったから良かった」

「ごめんねユーちゃん、ありがとう……それから」


二人はすっきりした顔で微笑んだ


「さようなら」


アタシが言葉を繋いで歩き出した。振り向かずとも分かる、あの二人も歩き出しただろう……お互いの人生に向かって

アタシは早歩きで家に向かう

昨日メールしたから全員集合しただろう。

ちなみにメール内容は

『話したいことがあります。家に至急帰ってきてください。全員帰ってこないならアタシは自身を可哀想な少女としてマスコミに売ります。貴方達のことも、もちろん』

という脅し文句


これで帰って無かったらどうしよう……


がちゃ、鍵は開けてきた、鍵捨ててるかもしれないから。

リビングに入る……いつもの言葉を言いながら


「ただいま……」

「・・・・・・・」


つい、唖然としてしまった。


若草家集合


父、巌夫いわお 母、松子まつこ 姉、夏海なつみ 兄、秋治あきはる

問題一家

全員不機嫌そうな顔でそれぞれ距離を置いて座っている。


「ご無沙汰しています。みなさん」


皮肉でそういうとまず最初に兄が口を開いた。


「こっちはもうすぐ大学卒業で、就職ちかいんだよ、こんなくだらないことで呼びやがって」


奨学金で寮生の大学を選び家から避難していた兄からのまず最初がこれか……


「まぁ、少しぐらい話し合おうよ」

「なぁに?男でもできたの?妊娠でもしちゃったならいい病院紹介しましょうか?」


この姉、腐ってるな


「お姉ちゃんじゃないんだから有り得ません、テレビ消して」


誰がつけたのかテレビを消す


「アタシ達、家族だよね?」

「なによ、今更みんなで仲良くとでも言うの?」

「そうだね、そうなれたらいいと思う」


昔のようにもう一度、でももう手遅れかな


「無理だ、もう私はこの家の者を愛していない」

「この家の者?女はでしょう?あなたは男に走ったものね?」

「お前は兄妹に走ったくせに!」

「どっちもどっちだっつーの、気持悪い」

「化粧けばいお前のが気持悪いよ」

「なによ!」


どん!!


「!?」


机がちょっとヒビ入ったけど、まぁいいや


「アタシは、みんなが仲悪いままだと嫌なの!」

「偽善だろ!一人だけいい子ぶった顔して」

「そう思うなら思えばいい!でも違うの!アタシは、ずっと待ってたんだ」


誰も帰ってこない家で、ひとりずっと……ずっと


「みんなを待ってたんだ」

「だからどうした!同情でも誘いたいのか?!」

「慰謝料でも欲しいのならいくらでも上げるわよ?」

「違う!!違う」


どうして分かってくれないの?


「アタシは、みんなの愛が欲しかったんだよ」


得られない愛を太郎君に注ぐことで、自分と置き換えて心慰めていた。でも


「偽りの愛は……虚しいだけだよ」


太郎君に愛情をいくら注いでも帰ってはこない。一人芝居


「お願いよ、この家に戻れないなら戻らなくてもいいから、お互い、憎しみ合わないで」


辛すぎるよ、そんなの……血の繋がった家族じゃないか……愛し合ってた家族じゃないの

顔が熱くなっていくのは分かるが、枯れてしまった涙は出なかった。


「せめて、聞かせて……昔は愛してくれてた?」


家族を若草家を……せめてソレだけを


「愛してたわ」


母が小さい声で呟くようにいった。


「だから9年前、貴女がいなくなったとき、みんな必至で探したわ」

「遺跡旅行……皆嫌がったけど、お前だけが賛成して、嬉しそうに走り回っていたなぁ」

「……」

「……」


懐かしそうに両親は目を細めた。


「もちろん、秋治と夏海のことも愛していた。両手いっぱいにな」

「……父さん、そういっていつも私達三人を抱きしめてくれたよね……温かかった」

「オレ、お父さんみたいに大きい男になろうと思ってた……本当は」

「秋治……」


皆涙を気がついたら流していた。

はじめてみる、皆の涙……。


本当はみんなも、寂しかったんだ……だから、集まってくれたんだよね?

例え、もう戻らない家族だとしても、もういい

みんなが分かってくれたなら、みんなが昔愛してくれていたという事実があるなら……

アタシはもう、過去に縋らずに生きていける……


「ありがとう、みんな……集まってくれて。愛していたことを思い出してくれて……」


もう、それ以上は……望まない。


「ありがとう」


前に進もう。

アタシには、まだやることがある……。


「さようなら」

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