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神とアタシ


「神さま~?何処行ったのです?」


フェアナは何も無い空間をさまようように「神」をさがす。

神は今、まるで後もう少しで火山噴火するというような、そんな危険な状態だった。


ぶるぶるぶる


「!」


そこに何かが居た。

寒いのかまるで携帯のバイブのように止まることなく間を空けることも無く、ぶるぶると背を向けて震えていた。フェアナはソレに歩み寄るとそっとその背中に触れた。


「可哀想な神さま……我輩は、ずっと御傍に……」


例え神さまが何度もおろかな人間を信じ同じことを繰り返そうとも、書であるフェアナは神を裏切らない。神のそばへ、そう神が滅びるまでずうっと


「!?……なに!!」


周りの空間が歪んだ。何かに引き寄せられるように流れていく……周りを覆っていた雲が完全に消え去り、周りは晴天の空が見えた。太陽も近い


「お前は!」


そこに立っていたのは、ユイだった。

片手に不細工人形、もう片手に黄金の林檎


「貴様!黄金の林檎を……喰ったのか!?」

「一口だけ、……微妙でした」

「五月蝿い!感想など聞いてない」


あ、すみません

ユイは一口しか食べていない林檎を太郎君の中にもう一度しまう。

どうやら空の上らしいが能力おかげか浮いていることができた。


「やっぱり、さっきの誰かは≪神さま≫だったんだ」


ぶるぶぶるぶるぶと震えている。


「近寄るな!」


フェアナは黒い雷をユイの上に落としたが、ユイはソレを見向きもせずに歩き出した。


「来るな!くるなぁああああああああああ!!」


フェアナの抵抗は激しかったが、不思議と怖くなかった。それどころか攻撃の動きが読めようになった。能力はもともとこちらのほうが上だから攻撃も当たらない。難なくフェアナの目の前にたった。


「予言とか賢者とかじゃなくて、フェアナは≪神の書≫だよね」

「だからなんですか~?記録係りは大人しく見てろって言うんですか?」

「ううん、神さまのよき理解者だったと思う、だからあなたを傷つけたくない」


だから


「邪魔しないで」

「!?」


オーヴェンの力を使ってフェアナを別のところに飛ばした。そう遠くに飛ばしていないから早く終わらせないと……。

神さまにそっと歩み寄る……白い黒い赤い黄色い青い……コロコロ色を変えながら震える神様……その形は、馬だった。


「神さま……お願いアタシの話しを聞いてください」


震えるその背に話しかけるが、反応は無い。


「神さま、どうしたの?」


そっとその震える体に触れた。


「――――!!??」



死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない



死にたくないよ!



「怯えてたの?神さま」


死にたくない!死にたくない!みんなみんな死んだ

毒にやられて死んだ、死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ!


幾多も居た神様が今ではたった一人

死への恐怖と仲間のいない虚無が神を震わせるのだろう。


神は死んだら何処へ行くと思う?


どこへ?


神は死んだら、消える


何処にも行かない、行けない

どうしようもない悲しみに苛立ち恐怖し焦り狂う。


「死にたくない……?どうして?」


人間よりも長い時を経て長い時を生きて、誰もいなくなった場所で只一人生きて、何もできない大地を見つめ人間のおろかさを見つめ絶望しながら、人間に仲間を殺されて、ただなす術もないのに何故?


「どうして生きたいの?」


アタシの質問がおかしいことは分かってる。でも、聞きたかった。あたしは、そこまで……孤独と悲しみをこらえてまで、生きたいとは……死にたくないとは思わなかった。


「アタシは、死んでもいい……それがアタシの運命なら。そう思ってた」


朝起きて学校に登校するまでに不慮の事故で死なないかなって自分の死を軽々しく願っていた。

生きたいだなんて、考えもしなかった


「長い時を飽きるまで生きたんじゃないの?長い間失望させられたんじゃいの?なのに、どうしてそんなに生きたいの?ねぇ?!」


神が立ち上がりこちらを振り向いた。あぁ、なんて立派な馬……


≪死にたくない、生きたい、貴女は何故死にたい?≫


声が、ガラスに反響させたような美しい声が響いた。


「っ」


答えることができなかった。


≪短い時しか過ごせないのに、何故生きようと思わない≫

「生きようと思わないわけじゃない」

≪死を望むのならば、同じことでは無いのか?≫

「同じ……」


そうか、アタシは……死にたかったんだ……人知れず、誰もあたしを知らない場所で

でも、生きてる

神は人とは根本的に異なるが、全て万物における共通したものは持っている。


「これがないと生きていけない……」

≪これ?≫


これは、なに?同じ

生きていても死にたいと思っている死んでもいいと思っているあたしに

もうすぐ死期の近い、死んでしまうのを拒み生きたいと望む神様……


似ているようで違う


「そうか」


心が違うんだ


「アタシ、平気なフリしていたけど、傷ついてたんだ」

≪傷つく?≫

「そう、

アタシね父親は男色に走り、母親は叔父さんとできているらしいし、お姉ちゃんには彼氏を寝取られしかも家には夜な夜な遊びに行っているためめったに会わないし、お兄さんには家を出てからそれっきりだし、家はもう借金まみれだし、父方の祖父母はすでに他界してるし、母方の祖父母は縁切ったらしい……お友達はなんかいつの間にか仲悪くなってバラバラ……先生はきっと私のこと忘れてると思う、だって私にだけプリント回ってこない……。なんてしばしば」


そんなことがたった18年の月日でおきてアタシの心が耐え切れるわけが無かったんだ。

でも、アタシはソレに向かって戦わなかった。今も昔も、重要な……恐ろしいことがあったら、戦わずして逃げてきた。

それが、アタシがアタシを保つ方法だと思ってたから


「でも違った、ねぇ神さま貴女とアタシは違っているようで……やっぱり一緒だよ」


そっと神さまの頬をなでる。


「神さま、向き合おうよ。逃げずに……」

≪・・・・・・≫


太郎君から黄金の林檎を取り出す


「これ、一口食べちゃったけど、全部食べて?」

≪これは……不死の食物≫

「大丈夫、アタシ達は一人じゃない、仲間がいるから……」


まばゆい光がアタシ達を包み込んだ。

そして、何も見えなくなる直前に神さまの穏やかな声が聞こえた。


≪ありがとう……ユイ≫


見えないと分かっていても、アタシは微笑んだ……こちらこそ、ありがとう

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