お留守番の太郎君
若葉雪衣です。コレはむさいっくな……噛んだ。不細工な亀の人形太郎君です。
どうでもいっかぁ
「ユイ姉おきぃ」
「起きろよ」
二人かがりでお布団の上で乗っからなくても、危うく吐くところでしたよ内臓六腑をね
「おはよう、クナクロ」
階段を下りていくと沢山のお客さんがいっぱい居て女将さんと昨日はいなかった頭にパンダなつけたさえないお兄さんやひょろいお姉さんが一生懸命働いていた。
これは、働かないとダメ的なパターンですか?
「あ、ちょっとユイてつだっちょくれん?」
ですよねー
「喜んで~ってクロクナは何処行くの?」
『学校』
二人そろってうれしそうに……学校あるんだ~へ~そりゃそうか~
「俺おっきくなったら騎士学校行くんだ!こんな辺鄙な店の跡なんか継がないぜ」
「とかいいつつ戻ってくるだろうクロの代わりに一応お留守番する予定なの」
この二人なんか大物だなぁと思いつつ行ってらっしゃいと声をかけ二人と別れた。
アタシ馴染んでいる場合じゃないんだよな~
「で・つ・だ・え・っつ~の」
うお、魔王の殺気が怖いからさっさと手伝おう。
夕方になった。
「うへ~つっかれたぁ、でもこういう疲れもたまにはいいよね」
「ここに居る限り毎日味わえるよ」
「たまにはっつたじゃんかよぉ」
毎日はお断り
遅い昼食を口の中に頬張っていると女将は外を見ながらユイに声をかけた。
「居候ちょっとクロクナの帰り遅いから迎えに行ってきてくれないかぇ?多分坂の上のへべの大樹の近くにいるだろうからさ」
「……もおぐもぐ、ごっくん。いいよ!任せてよ!」
居候って暗に言わなくても行ってやるさぁ~
ちょうど行きたいと思ってたからさ、あの木にもういちど会いたかったんだ
並木道を上っていく……ふふ、ココ意外と急斜面疲れた
「ふぁぁあいい空気」
あくび出ちゃった
上りきると見事な風花が迎えてくれた。真っ白で雪吹雪のよう……ごくたまに青色も混ざっているからイルミネーションのような幻想さがあって、綺麗
「……」
今だけは、誰も邪魔しないで
アタシの……
この大切な時間だけは……
「うわぁああああああああああ」
邪魔された―――~~~って、この声ってクロ?
大樹の向こう側のほうを向くと、マントで姿を隠しているいかにも怪しい集団、の目の前には5・6人の立派ななりをした青年団がいた。おそらく彼らは騎士団
「二人ともつかまってる?!」
推測するなら
騎士団が何らかの敵まぁ、あのマントの二人組みを捕らえようと試みるも失敗、のうえマントの二人にたまたま遊んでいたクロクナが人質としてつかまったと
まぁ~分かりやすい
助けなきゃ
「……運動神経よくないんだけどな」
こそっと、木に隠れるように見守る。
今なら背後取れてるしアッタクすれば……その後斬られそうな可能性あるけど……まぁいっか
「卑怯だぞ!」
「ウルセェさっさとどきやがれ!!」
「ん?……ぐあ!?」
クナを掴んでいた男の背中に思いっきり体当たりをする。それにあっけに取られている隙にクロも自分で脱出を試みた。いやぁ、成功するもんだね。
しかし、ココの人たちってカラフルな髪と瞳だよな。逆に黒色の髪の人居ないんじゃない?
「捕まえろ!」
えらそうなのっぽが下っ端にそれだけ命令する。
マントの人たちはあっさりと捕まった。よっわぁ~
「大丈夫?ちび」
「さっすが姉!影薄すぎて分かんなかったぜぇ」
こいつ、感謝してないよね~
二人にしがみつかれていると、のっぽがコッチをじーとみつめていた。
「えっとぉ~好みじゃないんだけど~ちがうか」
「貴様たち、この女を捕まえるのだ!」
「えぇえええ!?」
この状態はなんていうの?『お手伝いありがとう賞』とかくれるとかではないよね!?そういうパターンではないよね?!逃げたほうが良さそうだ。あ、囲まれた。
「要領悪かったくせに~!」
「五月蝿い!『漆黒の毒婦』教皇様のところへ連れていぇげはぁあああ!?」
最後まで言う前に誰かに蹴り飛ばされた。のっぽ弱~けっこう飛んで行ったね。
助けてくれた人と眼が合う。
綺麗な白銀から灰色に変わる髪……そしてその瞳は濃いグレイ
「……」
しかし、この人も私睨んでませんか?
「騎士隊長になにする!反逆者として捕まえろ!」
若者は鼻で笑うと両手を広げて見せた
「オレはただか弱いおちびさんが苛められてるのを助けただけだぜ?」
「その女はな!」
「しらねぇな相手が誰でアレ、さっきの奴逮捕に貢献してくれた奴に対して、お礼も無くその上手荒に捕まえようとするのはどうかと思うぞ」
「うぐぐ」
「それともそれがオタクら騎士の『騎士道』なのか?」
「ぐぐぐ~!只の平民風情が!覚えてろ」
隊長らしきのっぽを三人で抱えてココよりも上の坂道を上っていった。今思ったけどココって段々畑みたいに町の層ができてるんだね~
「あ、えっとそこの人、助けてくれてありがとう」
なじぇ~?なじぇ睨まれるのデスカー?
「トリュー兄ちゃん」
「いつ帰ってきてたの?」
トリュー?聞いたことあるナー
とか思っていると双子に目にくれずコッチに真っ直ぐ歩いてきた。
え?何?
「馬鹿野郎!!!」
おもいっきりほっぺを掴まれてぶにぶにぶにぶにされる。わっかんないかなぁ~こう、ほっぺの肉をこねられる感触。
「うへぇえええ~~~?」
ア、この人身長高いな
「あのマントの二人は強盗殺人の常習犯だったんだぞ!たまたま油断していたからうまくいったけど、本当なら~」
「ぇあ~~ぅ、もう分かりましたぁあ、すみまひぇんでったぁ」
やっと解放された。
「ア、もう夕刻だ帰らなきゃ」
「トリュー兄ちゃんも来るよねぇ?」
「泊まらせて貰うわ」
「え?この人も来るの」
トリューと目が合う
「嫌なのかよ」
意地悪な笑みを浮かべながら手をもぞもぞと動かす。
「わ~い、うっれし~なぁぁ」
「なー?嬉しいな~よっし、行くかチビ共」
そういえば漆黒の毒婦ってなんなんだろう?
マリミアに聞けばいっかな
それがこの人の、不幸だった。