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代償に太郎君


荒れ果てた荒野に兵士は身を守りつつ安息の無い睡眠をとっていた。

お互いはなれた位置にはそれぞれの信じる御旗が立てられており、模様も違って主張していた。


白と青を光と象徴とした赤薔薇の軍団。たぶん、教団側だ。

緑色と青色が入り混じるような模様のこの国旗はどこのだろう?マヤ族にこんな騎士たちはいなかったはずだ。


アル陣の中からサァヤが長老と一緒に現れた。

そしてもうヒトリ


赤茶色の禍々しい気配のする隻眼の男


彼から何か嫌なものを感じた。

太郎君、ご苦労様。



「おいで」


手のひらを広げれば何も無かったはずの手のひらの中に太郎君が出現した。

うん、この能力便利。もっと早く気がつけばよかった


「ねーねー」

「おきろー」


クロクナにベットの上ではねられた。起きてたんですけどー


「おはよう」


階段を降りていくと不機嫌そうな飛鳥がいた。


「委員長不機嫌だね?もしかして……お風呂場で鼻血だした?」

「出すわけ無いでしょ!」


え、じゃああそこを突破したの?さすが委員長……


ふわふわパンを二個とサラダを食べ終えた頃ぐらいにマリミアが皿を片しお茶をかわりに置いた。

お母さんみたい、いやクロクナの母だけど


「クロクナ学校へお行き、分かってるだろうケドこの二人のこというんじゃないよ」

「はーい」

「いってきまーす」


二人……アタシと委員長


「マリミア、トリューとお爺ちゃんは?」

「なんか調べものって朝方ででったよ」

「ふーん?あ、ゴメンね巻き込んで」

「何そのついでレベル!」


ばん!と机を叩いた。

どうやら不機嫌の理由はこれらしい


「ゴメンね本当、帰れる保障ないけど」

「そこは保障しましょうよ嘘でも!」

「いやぁ」


無理かな?


「私今日塾でテストだったのよ!?」


あ~はは、ざまぁみろ


「何?その微笑」

「あぁぁぁ~ぅ、いやぁ~はは」


首、首絞まってます……ちぬ


「それに、うち親五月蝿いのよ、連絡も無しで……警察呼ばれてないといいんだけど」

「大変だねぇ優等生さんは」

「何言ってるのよ」


他人事でごめーんね


「貴女だってそうでしょ」

「はい?」


なんで?


「はい?……じゃないでしょう、貴女何日ここにいてたの?一日や二日じゃないでしょこれ」

「うん、三週間ぐらい?」

「連絡は?」

「音信不通」


親が


「……あんた、それでいいの?」


コロコロ呼び名がかわるなぁと心の中だけでのんびり思うユイ

しかし彼女……委員長の顔が穏やかではなさそうだ。


「あは?」

「笑って誤魔化そうとするんじゃないわよ!親がどれほど心配すると思って……っ!?」


途中で何かに気がついたらしい委員長は苦々しい顔になった。


「こんなこと聞くのって失礼だと思う、でも教えて。いやなら答えなくても、いいから」


聞いてくる内容は先に分かった。だから腕の中の太郎君を強く抱きしめた。


「家族仲……上手くいってる?」


もちろんだよ。

いつものようにちょっとした笑顔でそういうつもりだった。

だって同情なんてうっとおしいし、自分が不幸ですなんて主張してもそれこそうっとおしいだけじゃない?


「も」

「ほらまた」


頬をつねられた。


「ピエロみたい。辛いの、隠さなくて良いよ」



笑顔が崩れた。


「あ、はは……隠してないよ?家族仲なんて……もちろん普通だよ」

「本当に?家誰も帰ってないんでしょう?」

「何で知ってるの?」

「町内で噂よ、おじさんは男色に走ってオバサンは実家に帰ってお兄さんは家出お姉さんは裏にいっちゃったって」


おしい、母はおじ様とランデブーだよ


「……アタシはなんていわれてるのかな?人形の持ったおかしいコ?」


太郎君持って普通に学校行ってたから、かなりひかれてただろうなぁ。それとも精神異常者?それとも忘れ去られてる?


「ヒトリでずっと家で待ってるって、かわいそうな空っぽの家でたった一人で待ってるんだよって」

「可哀想?」

「私がいったんじゃないのよ?近所のオバサンの話を立ち聞き……じゃなくって、耳に入ったのよ」

「そうなんだ」


アタシって可哀想だったんだ


「知らなかった」


空っぽで可哀想なアタシ

ぎゅっと太郎君を握り締める。


「何歳からなの?」

「小3に崩壊」


もう癖かな微笑んでしまう。ちっとも楽しくないのに、まいったなぁハハ


「……その人形、最後に買ってもらった奴とか?」

「ううん、ゴミ捨て―――」


ばっしん

太郎君、打ち落とされたり。


「あの、痛い」


手も一緒にはたかれたんですけど


「ばっちい!」

「洗ったよ!」


しかも拾ったとき新品だよ!


「子どものときって、親から十分に愛情をもらえなかったら『退行』『暴力』『自閉』など起こしたりするらしいけど」


床に落ちた、というか落とされた太郎君を指差した


「貴女『代わり』で誤魔化してるんじゃない?親の愛情の変わりをこれに変えて」

「太郎君を親の代わり?」

「そう、だから『執着』するのよ、これに」


上から太郎君指差すのはやめて、せめて拾ってください。

拾ってくれそうに無いので自分で拾い上げた。


「うーん、よく分からないなぁ。寂しいなんて思ったこと無いよ?いたらいたでうっとおしいなって思うし、どうせいずれかは独り立ちするし、いい機会じゃないかなぁって」

「そう」

「うん」

「じゃあなんで」


委員長の白い細い腕が伸びてユイの顔を優しく撫でた。


「なんで辛そうなの?」

「さぁ?」


戻りたいの?昔のあの頃に?もう戻らないのに?分かっているのに縋るの?

やめよう考えるのは

疲れるよ


「貴女、辛そうなのに泣かないのね」

「辛くないから泣かないんだよ」


そういって彼女は微笑んだ。

だからいってるのよ、まるでピエロみたいねって

見えないお面の下で必至に堪えてる部分を隠して、笑って誤魔化して


「……そう」


私じゃダメなのね、そうね……私じゃ貴女を理解することができないものね


「それはそうと、・・・・・・」

「?」


ばしん


「それ持ち歩くな恥ずかしい!」


太郎君を叩き落す


「あああああああ!太郎君!酷いよ委員長二度も!」

「ふ、あーすっきりした」



鬼がいた。

彼女は彼が嫌いらしい。何故?!


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