復活空振り
いつもいつもあたしはこんなんばっか……
エリフ族のワンワン坊と一緒に駆け出していく、彼らは威勢こそはいいものの丸っこくて硬そうな図体はやはり重いらしく、ちょっと走れば簡単に撒けた。
「ゴブラ族ってなんなの?」
「姿こそはあれですけど、この世で最も賢い種族です」
背後から声がした。
幼い少女の声、驚いて振り返ると利発そうな着物のような服を着た少女が頼りなさげな木の枝一つだけ持ってこちらにやって来た。
「えっと君みたことあるような~」
「えぇ、遠目でちらっとだけ」
「巫女~」
ワンワン坊が嬉しそうに少女に飛びついた。
「サァヤといいます、現神人様にお会いでき、光栄です」
とても少女とは見えない完璧な御辞儀をされると、こちらまで畏まってしまう。
あ、そんなことより
「太郎君!」
「あぁ、そうですね。テナ返しなさい」
「ん?あい」
返事と一緒に太郎君をリュックから出すと返してくれた、でもそれは巫女のほうに
何故?
おぉい、アタシに返せよ~
「あの~」
「取引しませんか?」
「へ?」
こんな少女からこんな難しい言葉が出るなんて……だれだ!教育法間違えてるぞ!ゆとり教育万歳!
サァヤは微笑んだ。
「現人神様が我ら『マヤ族』に栄光と繁栄をもたらさんことを」
「つまり……どういうこと?」
分かるように説明プリーズ
「簡単な話しです、扉の話は聞きましたでしょう?」
「え……………うん」
覚えてません
「神がこの世界と別つために地獄の門を開ける、『変革』のために」
「何で開けるの?変革って?」
「どのようにして世界が変わるのは知りません。一説によれば神が死に眠りにつくために地獄に向かうとか」
つまり、お墓に入ります?
……なんか違うな~
「神が死んだとき現れるのが貴方なのです」
マ ジ ス か ?
「なんで?」
もうわけ分からないのですが?
「ソレハ知りません」
しらんのかーい
「一時的な神、貴方は選ぶことができるのです。この世界の行く末を……」
「アタシすげぇ、マッハでスゴイ……凄すぎてトイレ行きたくなっちゃった」
「お願いします」
「アタシお願いだからトイレ行かせてください」
最近近いんです
「この世界を人と魔物の共存、和解の世をおつくりください」
「素晴しい世界だけど!アタシにそんな力ないと思うよ!?」
自分の身も守れてないしね!
「でないと、こんなもの」
太郎君の顔が横に伸びる
「あぁああああああ!!暴力反対!!!」
「人形ジャン」
「犬が言うか!?」
「い!?犬じゃない!テナだよ!」
「いいのですか~~」
「巫女が脅していいのか~!?」
もともと不細工だった太郎君がもっと不細工に
あぁ、ダメだよそんなぁ~
「く、中々硬い……」
「無理に破壊しようとしないで!?」
この世界の女の人って自己中多くない?!しかも地味に残酷じゃないですか!?どんだけですか!まじで!!酷すぎる
「もう少し猶予ちょうだいよ!アタシ色々忙しいからさ!マルクムとヘイムとかも助け出さなきゃいけないしさ!」
さっきまで若干忘れてたけどさ!
「……分かりました。脅すなんてダメですよね」
「そうそう」
「でも、保険にコレは預かっています」
「ヒド!太郎君居ないと安心できないのに!?」
ないと落ち着いて物事を判断できないのに、落ち着かないのに~
「……そこまで、顔を真っ青にして体中プルプルと震えるなら、返す」
気持悪かったようだ。
「はぁぁうぁああああ、太郎君や~」
会いたかったぜ
「いずれ答えを持って帰ってくると、誓ってください」
「ついでにマルクムやヘイムも連れてこいよ~」
「ワンワンのクセに態度でかいな!」
「テナだって!!」
サァヤが物凄く心配そうにこちらを見上げているので微笑んだ。
その心細く不安な気持は、分かるよ、だから
「ちゃんと、またココに戻ってくるよ……多分」
言い切れなかったあたしを許してください
「やっぱり人形を」
「よっしゃぁあああああああ!救出しにいこぉおおおおお!!」
太郎君パワーで暴走しながら先のことも考えずに走り出した。
森の中勢いだけで駆け回る
その後、彼女の空振りの気合は彼女が崖から落ちたことで落ち着いたのであった……。
「あちゃー」
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