太郎くんと記憶
雨の日だった。
天気予報を信じて持ってきていたはずの傘は、誰かに盗られていた。
高校入試も終わったし、制服がくさくなってもいいかなって思って、雨をやむのも待たず、土砂降りの中を歩いていた。
出会ったのは、人形
「・・・・・・」
買ったばかりで包装の取れていない状態で、捨てられていた新品のお人形。
ゴミの中に埋もれていた。
そこで
「運命の出会いを果たしたのでした……」
「あのさ、あなたのこと聞きたいとはいったけど……ソレハいらなかったわ」
え?
「コレが一番美しい出会いなのに」
三人はいやいやと、手をふった。
「なぁ、ユイ外に散歩に出ないか?」
「逃げる気ですか?」
「誰から、だ?」
睨み合う二人の若者、どうしようかとエイルを見れば楽しそうに微笑んでいた。コップ片手に行ってきたら?とウィンクしてくれたので、行くことにした。
聖女様の家に近くは木々が沢山植えられていて、ぱっとみ清々しい。
今日は天気も良くて……
「眠たい……」
「よし、ユイ」
トリューが楽しそうに雪衣の手を握った。
「うん?」
「逃げるぞ!」
は い ?
「え、さっき逃げるとか何とかの会話……してなかった?」
「逃げるって誰からだ?って聞いただけでこっから消えないとはいってないぜ?」
屁理屈だろうケド、笑ってしまった。
「そうだね、アタシも死にたくないし」
「行こうぜ」
握られた手に導かれるように走り出す。
懐かしい
思い出す……あのころの記憶
あぁ、そうだ
「ねぇトリュー」
「なんだ?」
「何処連れて行ってくれるの?」
彼はあのときのように優しく微笑んだ。
「楽しいところさ」
そうだったね、そう
貴方は私の初恋の人だったわ……
「ごめんね」
太郎君、忘れたわけじゃないの、今だけ少し余韻に浸らせて
恋焦がれた記憶に、縋り付くのも悪くない。




