ヲタッキーズ178 自由蒸気協会
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第178話「自由蒸気協会」。さて、今回は裏アキバの公園で200年前の弾丸で射殺されたパンティ1丁の死体が…
捜査線上にスチームパンク愛好家の秘密クラブが浮上、クラブに集うパンクス達の奇怪な行動に、事件は危うく迷宮入り?その時、現れたのは…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 パンティ1丁の女
夜明けの裏アキバ芳林パーク。オレンジ色の朝陽を浴び騎馬警官が逝く。木陰に死体。駆け寄る警官。
死体だ…パンティ1丁の女w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて朝から常連が沈殿。売上は低迷w
「さぁ今朝の"世界のヲタク飯"は、卵の上にグラハムクラッカー1枚とマシュマロ6コ、さらに板チョコを搭載し…」
「テリィ様。ソレってオムレツですか?」
「違う。オムレツじゃなくて"相撲烈"だ。メイド長、お味見は如何?」
何しろ、オーナーの僕自身が御屋敷のキッチンで実験料理?をしてるから収益率のUPは夢のまた夢?
「あ。私は、さっきパンケーキを…」
「そっか。スピアはどうする?この至福を味わう覚悟はアルか?」
「モチロンょありがとう!ところで、今日ヲ友達のシュリが来るの。会ってくれる?」
ん?交換条件?望むトコロだ。
「良いとも!」
スピアに皿とフォークを突きつける。ナゼか目を瞑り1口ほおばる…困惑の表情。ナプキンに吐き出すw
「コレ、まさかマシュマロ?」
「YES。まさに美味礼讃だろう?」
「あと国民的チョコバーのブラックパンダーも?」
何で?と逝う疑問を全身で表すスピア。
「そうさ!ソレが"相撲烈"だからね」
「…もう行くわ。じゃね」
「いってらっしゃい、御嬢様」
カウンターの中から声をかけるミユリさんは笑顔←
「ミユリさん。とにかく傑作ナンだ。"チョコチミチャンガ"に次ぐ美味さだな…ほら、スピアが戻って来た。やっぱり食べる?クセになるだろう?最初に舌が拒んでも、そのうちナゼかカラダが求めてしまう。ヲタク飯の"二郎ラーメン"だ!」
「いらない。忘れ物。じゃ行ってきます」
疾風の如く吹き抜け、姿を消すスピア。
「…ミユリさん。スピア、何かボーっとしてたけど?何かな」
「わかりませんか?」
「何?」
愉快そうなミユリさん。
「テリィ様。アレは恋ですょ」
「スピアが?」
「そうです。いつまでも"テリィ様の元カノ"のママじゃありません」
ミユリさんは、ナゼかドヤ顔w
「でも…恋してるなら、真っ先に元カレの僕に話してるハズだょ」
「テリィ様、ソレが彼女がホンキの恋をしてる証拠です。実はスピア、私には話してくれたので」
「ええっ?!相手は誰だょ?」
元カノの恋を今カノに問い質すw
「存じません。語りませんでした。ホントです。名前も知らないわ」
「何で先にミユリさんに話すんだ?僕は、イケてる元カレなのに!」
「モチロンです。だから、落ち込まないで。ただ、コレはテリィ様と別れて初めての恋、いわばハシカみたいなモノです。理屈じゃありませんから」
不愉快だ…ココでスマホ鳴動。ミユリさん微笑む。
「あ。ラギィですね?きっとスゴーいスーパーヒロイン殺しですょ。私、新コスチュームに"変身"しようかしら」
あのセパレートの奴?僕は、笑顔でスマホを抜く。
「テリィだけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバに開いた"リアルの裂け目"の影響で超能力に覚醒した腐女子のスーパーヒロイン化が相次ぐ。
南秋葉原条約機構はヒロインなど"裂け目"関連の脅威に対抗する組織でヲタッキーズも傘下に置く。
「スピアがマッチングアプリに手を出した時、僕が彼女の代わりに相手を選んだ。その後、初めてのデートの時に"キスは次回!"と叫んだのも僕さ」
「何なのソレ?未練?」
「元カレとしての責任感だ」
ラギィは万世橋警察署の敏腕警部。僕とは彼女が前任地で"新橋鮫"と呼ばれてた頃からの付き合い。
「…その時、スピアが最初にしゃべった言葉は…」
「私が当てるわ。"巨乳"でしょ?」
「何だソレ?"結末"だ。SF作家として常に起承転結を考えてる僕の影響だね。とにかく不安なんだ。僕達の元カレと元カノとの特別な関係が終わるような気がして」
芳林パークをコーヒー片手に2人で歩きながら現場に向かう。目の前をアキバ名物の騎馬警官が通るw
「大丈夫よ。スピアは今でも貴方が大好き。でも、きっとテリィたんに似た男とお付き合いしたがるから大変ょ」
「え。マジ?」
「マジ。ルイナ、IDはあった?」
緑の木立ちの中に黄色い規制線が張られている。制服警官が立哨し、鑑識の男女が右往左往。そして…
「IDは未だ。で、私のコーヒーは?ラギィ達より先に働いてるのょ?」
「僕のコーヒー、残ってるけど飲む?」
「テリィたん。私はコーヒー飲めないの。でも、マチガイダの納豆ドッグをUperしてくれても死なないわょ?」
超天才のルイナは、僕のタブレットをハッキングして、ラボから"リモート鑑識"で手伝ってくれる。
「死ぬって言えば、彼女は胸を音波銃で1発撃たれてる。殺人音波じゃなくて、音波で弾丸を飛ばすタイプの銃ょ。かなり大きな弾痕だから、多分45Hz口径ね。死斑による死亡推定時刻は午前0時頃」
「被害者は、スーパーヒロインか?」
「YES。"blood type BLUE"」
ココで僕の素っ頓狂な叫び。ホント、驚いてw
「あれ?ソレは…僕、同じパンツを持ってる。トマス・ナシュ。ヨーロッパの高級ブランドで生地が柔らかいんだ」
ラギィ&ルイナの鋭い視線が僕を貫くw
「つ、つまり、彼女は恋人に抱かれるような心地良さに包まれて死んだろうってコトさ」
「被害者は、夜中にパンティ1丁で何をしてたのかしら」
「妙な妄想はヤメて。銃槍から繊維片が出たわ」
ラギィは即反応。
「つまり、撃たれた時はスーパーヒロインのコスプレをしてた?」
「うーんヒロインを射殺して、その後コスプレを脱がす…まさか、犯人はヒロピンAVヲタクか?!」
「…コスプレに犯人が誰かがワカル証拠が残ってると思ったのね」
ココにヲタッキーズのエアリ&マリレが駆け込んで来るが2人共メイド服だ。ココはアキバだからねw
「ねぇゴミ箱からお財布ゲットょ」
「免許証が"パンティガール"と一致したわ…いや、えっと。あのヒロピンAV、甥っ子が大好きで」
「ダニエ・ゴルド。25才。佐久間河岸SOHO在住」
ラギィがビニールの証拠品袋に入ってるIDを読み上げる。お財布と免許証を交互に示すヲタッキーズ。
「ピーマン&ロースト社の社員証も入ってた。外資系の大手ヘッジファンドだわ」
「住まいもオフィスも東秋葉原なのに、何で裏アキバまで来た?」
「とりあえず、鑑識に回して」
立ち上がるラギィに、僕は食い下がる。
「僕はトランクスだ。ラギィは?Tバック?チーキー?僕は申告したぞ。ブルマ?デカパン?」
思わズ息を呑む僕w
「まさか…ノーパン?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。被害者の妹レチェ・ゴルドが来訪。署のラウンジでお話を伺う。
「姉はコスプレを脱がされてた?何のために?」
「捜査中です。お姉さんは、なぜ芳林パークに?」
「わかりません」
妹は混乱スル。因みに彼女は"覚醒"してナイ。
「遺体が発見された場所から考えると麻薬の可能性も考えられますが」
「まさか。お酒もダメな姉でした」
「誰かと揉めたり、敵がいたりしませんでしたか?アンチ・ヒロインの連中とか?」
とりあえず、定番の質問をぶつける。
「いいえ、そんなコトありません。危険なコトに巻き込まれるナンて姉らしくないわ。姉は12才の時、両親の事故死が契機で"覚醒"しました。弱度のテレパス。ソレ以来、姉は全てに慎重になりました」
「恋人はいましたか?」
「いません。社交的なタイプじゃないからヲタ友もいなかった。"覚醒"こそしましたが、基本的にインドアな腐女子で、仕事ばかりしてました」
仕事熱心な腐女子をヲタクとは呼べないなw
「ピーマン&ロースト社では何を?」
「金融派生商品の開発です。姉は数学が得意で、アキバ工科大学の博士号を取ったから絶対に教授になると思ってた。でも、ヘッジファンドが法外な年俸を提示して来て…まだ25才なのに、私に億ションを買ってくれたんですょ」
「ラギィ」
メイド服のマリレが割り込む。
「ちょっとすみません…どうしたの?」
「鑑識がお財布から指紋が出たって」
「え。容疑者は?」
取調室を指差すマリレ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室に海坊主。
体重が200kgはありそうな巨漢。長い白ひげ、図太い腕。素肌に黒い防弾?ベスト。対照的に細い目w
「ココ1ヵ月で3件の加重暴行事件を起こしたわね?ラドレさん。被害者は、骨を折られたり、眼球をえぐり出されたり、耳をかじられたり…貴方がスーパーヒロイン殺しを犯したのは明白だけど、なぜコスプレを剥いで裸にしたの?」
「俺じゃねぇ」
「被害者のお財布に貴方の指紋がついてた。彼女がお財布を落として、貴方がタマタマ拾ったとでも言うの?ソレにナゼ貴方の部屋に45Hz口径の音波銃があったの?」
証拠品袋に入った45Hz口径を示すラギィ。
「被害者を撃った音波弾と恐らく一致スルわ。ソレに無実なら、なぜメイドを投げ飛ばしたの?」
マジックミラーの向こうにいる誰かを振り返る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「大丈夫ょエアリ。タートルネックを着れば、多分誰も気づかないわ」
首ギブスをつけたエアリがユックリと振り返るw
「…スカーフでも隠せるし」
マリレに肩を叩かれ悲鳴をあげるエアリw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「俺じゃねぇ」
「ウソはいずれバレるわ」
「とっくに死んでた」
ようやく歌い出す巨漢。攻め時だw
「そしたら、お財布が近くに落ちてたとでも?」
「おい!ココでウソをつくなら、せめて信憑性のあるウソにしとけ」
「俺じゃねぇよ!」
唸るように叫び、突然立ち上がるラドレw
ちょっち煽っただけなのに!背後のマジックミラーに背中をぶつける僕。深呼吸してクールダウンだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室から出て来る僕とラギィ。隣室から出て来るのは首にギブスのエアリとマリレのメイド2人組。
「ラギィ!アイツ、絶対に死刑にして!」
「僕も賛成。わぁビビったぁ」
「わかったわかった。ただし、あの銀の弾丸が45Hz口径から撃たれたと証明出来ればね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「45Hz口径じゃなかったわ」
「え。マジ?」
「マジょ」
万世橋の検視局は地下にアル。スーパーヒロインの遺体を前にしてルイナの"リモート鑑識"を聞く。
「じゃ38Hz口径?」
「違うわ。44でも357でも22でも9mmでもナイ。私も見たコトがナイわ」
「え。新型?」
超天才は、コレも否定w
「いいえ。全然新しくない。見て」
モニターに顕微鏡の画像が出る。恐らく、相棒でハッカーのスピアがシステムをハッキングしている。
「音波で発射された銀の弾丸だけど…丸いわ」
「しかも、表面が黒いな」
「酸化してるの?」
さすが"新橋鮫"だ。うなずくルイナ。
「正確には硫化。硫化銀ょ」
「銀の錆?」
「うーんサビじゃナイんだけど、めんどくさいからサビだとしてサビの量を見ると…約200年前」
絶句スル僕とラギィ。辛うじて返す。
「200年前…となると、考えられるのは…犯人は、過去から来たタイムトラベラーだ!」
思い切りヲチャラケてみたがラギィは死んだ魚の目で歩き去り、ルイナはモニター画面から姿を消すw
第2章 タイムトラベラーを追え
捜査本部。エレベーターの扉が開くや、僕を振り切るようにスタスタと出て逝くラギィ。背中に力説w
「ポイントは"時空の歪み"だ。犯人は"時空の歪み"から現在にやって来た。つまり"時空の歪み"を探せば良いんだ!」
「もう"時空の歪み"って言わないで」
「あぁ確かに変な言葉だょな。でも"時空の歪み"が、もし閉じてたら?タイムマシンが必要になるぞ。"時間ナヂス"の出番だ」
"時間ナヂス"は、1945年、陥落寸前のベルリンから現代へタイムマシンで脱出して来た人々だ。
実はヲタッキーズのマリレも"時間ナヂス"w
(あ、因みに彼女は国防軍。プロイセン軍人の家系)
「とにかく!現代ではラドレが容疑者ょ」
「あぁうーん。でも、彼は余りタイムトラベルって感じじゃ無いンだょなー」
「犯人は現代人ょ。時空を超えて来たとしたら、銀の弾丸は新品のハズでしょ?」
僕は反論スル。
「時空を旅してる間に錆びたんだ」←
「テリィたんの脳味噌も錆びちゃった?銀の弾丸について、妹さんには聞いた?」
「彼女は何も心当たりがないって。だから、サドチさんを呼んだ。ベイブ・サドチ。アンティークな武器の専門家ょ」
ヲタッキーズに付き添われて入って来た専門家は、青い背広に紺のシャツ。気難しそうな初老の男だ。
「うーんナゼかサンドイッチを食べたくなったな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
会議室。虫眼鏡で銃口を調べるサドチ。
「45Hz口径はホントに良いな。絶妙な角度で撃てば1発で頭が吹っ飛ぶ。でも、この音波銃は凶器じゃナイ」
「ナゼです?」
「この音波銃じゃ銀の弾丸は撃てない」
淡々と断言スル老人。説得力がアル。
「じゃラドレは、ホントに財布を拾っただけ?」
「つまり、犯人は、コスプレを脱がせた時に財布だけ落としたってコト?じゃ銀の弾丸を撃てるのは、どんな銃です?」
「フリントロック式の銃で18世紀の火打ち石銃なら大抵撃てるだろうね。音波は関係ナイ。銃メーカーは色々だ。いずれにせょこの銀の弾丸が使われたかどうかは、銃を見ない限り特定は出来ない」
アッサリお手上げポーズのサドチ。
「そのアンティークな銃を所有してる人は、この秋葉原に何人いますか?」
「わからんな。コレクションが目的だから、登録が不要ナンだ」
「うーん人を殺すには、うってつけの銃だ」
すると、老人は大きくうなずく。
「その通りだ。確かにアンティークだが、人は充分殺せるぞ」
彼とは話が合いそうだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部に入ると首ギブスのエアリが立ち上がる。
「ラギィ!犯人はラドレで決まりね?」
「うーん違ったわ」
「何で?ナゼ私はこんな目に遭ったの?」
地団駄を踏む妖精メイド。
「だが、メイドを暴行した罪で逮捕ょ。最高刑を負わせてやりましょ」
「thank you」
「少し休んで映画でも見てきたら?」
僕も熱心に薦める。
「僕のSFをジックリと読む良いチャンスだ」
「読まない。休暇の必要もナイわ」
「まぁそー言わズに」
肩を叩こうとして…軽く触れるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
午後。ホワイトボードの前に全員集合。
「現場周辺を徹底的に調べたけど、結局、被害者の服は見つからズ」
「持ち去るほど特別な服だったのかしら?」
「だ・か・ら!犯人は、裸でタイムトラベルして来たから服が必要だったのさ」
全員に無視されるw
「ねぇ!ターミネーターもそうだったょ!」
「…ソレ、実は今のトコロ、ベストな仮説カモね。反論も出来ないわ」
「おおおっ」
ヲタッキーズとハイタッチ(させるw)。
「どーしてロケットサイエンティストがこんな目に遭うのかな」
「テリィたんと会社に行ってくる。ヲタッキーズはアンティーク銃のコレクターを秋葉原のクラブで調べて。被害者と関係のある人が見つかるカモ」
「ROG」
エアリとぶつかり怒られるマリレw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヘッジファンドに向かう覆面パトカーの車内。
運転はラギィだ。僕はペーパードライバーでw
「ねぇテリィたん。ワカンナイんだけど、犯人はダニエ・ゴルドを撃って、コスプレ奪ってパンティ1丁に脱がしたのに、お財布は要らなかったのかしら。どうも納得いかないわ…多分、モスラが彼女を殺してコスプレを食べちゃったのね」
「カモな」
「テリィたん!」
上の空で聞いてたら"新橋鮫"に怒られるw
「テリィたん。興味がナイなら帰ったら?」
「違うょ。実は、スピアからの連絡を待ってルンだ。ミユリさんには好きな人が出来たと話しておいて、なぜ僕に黙ってルンだろう?気になるから直接聞いてみよう」
「ダメダメ。彼女のタイミングがアルのょ」
ラギィは僕のスマホを取り上げるw
おまわりさん、片手ハンドルです!
「あのさ。僕は、イケてる元カレだぞ」
「私も同じコトされて、結局タバコ臭いグランジロッカーと7ヶ月も付き合った。"思春期ホルモン"は厄介ょ。多分テリィたんの手には負えない。放っておけば?」
「うーん確かにヤメとこう…かな」
スマホを取り返す。
「モスラが何だって?」
「別に」
「沢尻エリカ?」
プイと明後日の方を向くラギィ。
おまわりさん、よそ見運転ですw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
摩天楼の中の外資系のオフィス。
デスクに腰を下ろし眉を顰める。
「パンティ1丁?ダニエはウチに来て2年だったけど…なぜ芳林パークにいたのかワカラナイわ。いわゆるアウトドア派ではなかったし」
「アンティーク銃について興味は?」
「アンティーク銃?アンティーク自体、彼女の趣味じゃなかったわ」
"チーフ何ちゃらカンちゃらエグゼクティブ"なる偉いのか偉くナイのか良くわからヌ女子、アダミw
「アダミさん。昨夜、彼女は何時まで働いていましたか?」
「そーね。いつも大体9時半ごろかな」
「失礼します」
お茶くみ男子?お茶くみ自体が今どき絶滅危惧種w
お盆いっぱいの紅茶セットをソロソロと持ち歩く。
「あぁ手伝いましょう」
「手伝い無用。茶坊主のユリヲです。こちらラギィ警部とSF作家のテリィたんょ」
「こんにちは」
爽やかに挨拶される。
非ヲタクで普通に清潔。イケメンだけどNo.1じゃナイ。乃木希典坂46の男子版?腐女子の憧れ男子だw
「昨夜は貴方も残業を?」
「モチロンです。ダニエが残業スル時はいつも…」
「仕事の後、彼女はコスプレして何処へ?」
ラギィの引っ掛け質問だw
「コスプレ?普通のスーツ姿でしたが、OLのコスプレだったのかな?…お疲れ様と言われただけで」
「昨夜の彼女の様子は?不審な電話はなかった?」
「いつもと同じです。怒れる投資家からのクレームばかりでしたが。でも…」
小首を傾げる…仕草も爽やか←
「でも、何です?」
「"lower tide fund"ね?」
「何ソレ?美味しいの?」
アダミが語り出す。
「ダニエが開発した金融派生商品です。CDをキューブドの…つまり、債務担当証券です」
「わかりやすくお願いします」
「ハイリスクな博打商品」
わかりやすいw
「彼女は、ソレで一晩で何100億円もの大損を出しました」
「ソレはいつ?」
「3ヶ月前です」
数100億の損害も何処吹く風だ。どーゆー人達?
「じゃ大勢の投資家が怒ったでしょ?」
「まぁクレームはソコソコ」
「何方も頭カンカンでダニエを火を噴くように責め立てていました」
ユリオの補足にうなずく僕達。
「では、ファンドで損した"怒れる人達"のメッセージリストをいただけますか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。"怒れる人達"リストを見て張り切る、今回はデスクワーク専門の首ギブスをしたエアリ。
「エアリ。アンティーク銃のオーナーの中に"lower tide fund"に投資した人間はいる?」
「今のトコロ、いないわ。でもね、ラギィ。今、逆にアンティーク銃の愛好家サイトからダニエに関係しそうなオーナーを探してる」
「なになに?"アヴン「早撃ち」フィケ"?1870年レミントンの"アウトロー"所有か。こりゃかっこ良い銃ね」
ホームページを見て唸るラギィ。首ギブスのエアリがソロリソロリと振り返って…同じ様に感心スル。
「あぁコレはカッコ良いわ。当時は、きっと芸術品だったのね」
「人を殺せる芸術品だ」
「"lower tide fund"での損失は、リストに載ってる全員が1億円以上ょ」
溜め息つくエアリ。
「最低1億円?金が余ってる人はタンスの中に隠しておくのが1番ね」
「ラギィ、見て。また勘違い系ガンマンヲタクのサイト発見ょ。ヨセミ・ポトキ?」
「待って。ポトキ?」
PCを叩くエアリ。
「ビンゴ!投資家で銃のオーナーだわ」
「うーん何処か渋沢栄一に似てますねぇ」
「ツイてない時の?」
さらにデータを読み込む。
「アンティーク銃のコレクターであるヨセミ・ポトキさんは…おお!"lower tide fund"で4億円以上の損を出してますね」
「ファンドで大損した日、ダニエに宛てたメッセージが残ってるわ。はい、再生」
「"これが江戸時代なら、お前みたいな奴は鉄砲隊が処分してた"」
泣けるフレーズだ。僕はつぶやく。
「江戸時代も撃つ前は目隠しスルのかな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「"これが江戸時代ならお前みたいなやつは鉄砲隊が処分してた"」
取調室で録音を止めるラギィ。
「警部さん。状況を察して欲しい。私は4億円をスッたんだ」
「4億円も?そりゃ無理ナイな。だから、ダニエを脅したのね?」
「ヨセミさん。昨夜の23時から夜中の1時までの間、何をしてましたか?」
ヨセミ・ポトキ氏は、不貞腐れ急に大人しくなる。
黒と白のピンストライプの背広に真っ青なシャツw
「寝てた」←
「そのコトを証明出来る人は?」
「私だ」
バカな答えだw
「そりゃ鉄板だな」
「確かに誤解されても仕方がナイが、全て説明出来るコトなのだ」
「どんなコトなのですか?」
辛抱強く合いの手を入れるラギィ。
「数ヶ月前、ダニエに会った時、彼女はシャーロック・ホームズの銃について聞いて来た」
「おいおいおい。まさか犯人はコナン・ドイルとか言うなょ」
「彼女がアンティーク銃に興味があったと言うコトを指摘している」
おぉクールな視点だw
「OK。だから、何?」
「そのせいで殺された可能性もアルってコト」
「…ヨセミさん。貴方の銃のコレクションを弾道分析にかけても良いですか(ダメと言われても令状取るけどw)?」
「ヤメてくれ!貴重銃イコール貴重なアンティークナンだぞ」
早々に切り札を切るラギィ。
「殺人として逮捕される方がマシですか?」
ヨセミ・ポトキ氏は沈黙w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。早速、ホワイトボードにヨセミ・ポトキ氏の写真が張り出される。いかにも悪者な写真だw
「ポトキ氏の銃の分析結果は明日だって」
「やっぱり逮捕は嫌ナンだな。コレクションをいじられる位なら、逮捕された方がマシだって気骨のあるヲタクはいないのか?」
「よっしゃー!」
場違いなガッツポーズで本部に入って来るエアリ。
「昨晩、被害者の車が駐禁を切られてるわ」
「おいおいおい。まさかコレ…冗談だろ?」
「どーしたの?テリィたん」
勝手に盛り上がる僕w
「デロリアンだょ!"バック・トゥ・ザ・未来"でタイムマシンとして使われた車さ。コレは、決して偶然じゃナイな」
「駐禁を切られてるのは午前2時。場所は、東秋葉原82丁目」
「和泉パークから2ブロック先ね」
素朴な感想を差し挟む。
「どーせなら、もっとパークの近くに停めれば便利だったのに」
「テリィたん。恐らく彼女はパーク以外の場所に用があった。過去に3回同じ場所で駐禁を切られている。全部が東秋葉原82丁目ょ」
「ホボ通ってるね」
たちまち仮説が飛び交う。
「不倫だわ。恋人がいたのね」
「きっと献血ょ。AB型が不足してるの」
「いや。ソコには"時空の歪み"があるんだ」
両手でシッカリと耳を塞ぐラギィ。
「とにかく!その車を調べて来て」
「ROG」
「"その車"じゃなく"そのタイムマシン"ね?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「冗談でしょ?」
「マジ?」
「テリィたんのお友達?」
デロリアンの後部に、後ろ向きに、大きなロケット噴射口が付いている。コレは…昭和の暴走族かなw
「確かにダニエ・ゴルドの車だわ…いや、車じゃなくてタイムマシンかも」
「確かに次元転移装置がついてるわねクスクス」
「で、こいつは"お面ライダー"のサイクロンも真っ青なプルトニウム原子炉を搭載してるワケ。テリィたんが言う通り、ダニエ・ゴルドは未来の秋葉原にタイムトラベルして来て殺されたのかしら。でも、なぜ秋葉原?」
現実的なマリレ。さすがは元軍人。いや、元タイムトラベラーか。何しろ唯一の時間旅行の経験者だ。
そのマリレはスマホを抜く。
「レッカーしてもらお?…バディ、被害者の車のレッカーをお願い。東秋葉原82丁目238。車は81年式のデロリアン…型のタイムマシン」
ソコへ血染めのシャツに中世風の茶色ジャケット、シルクハットの男がベビーカーを推しながら登場。
ベビーカーにはゴミが満載だ。ホームレス?
「エアリ、見て。あのシャツは…事情聴取!」
「すみません。ヲタッキーズのマリレとエアリです。少しお時間いいですか?」
「ん?」
ホームレスの顔がパッと輝く。上機嫌で応える。
「コレはご機嫌よう。メイドさん諸君。ワシはヘンリー卿でアル。どうぞなんなりと」
「どうも。そのお洒落な血染めのデザインのシャツはどちらでお求め?」
「喜んでお答えしよう。公園の向こうの服飾店にて購入したモノでアル。ソレではメイド諸君、良いかね?失礼スルょ。良い1日を。さらば」
突然この場を去ろうとスルw
「ちょっと待ってください。その服は…」
「さらばと言っただろう?さ、ら、ば!」
「ちょっと警察署まで…」
突然ゴミ車をエアリにぶつける!エアリは尻餅。杖を振り回すヘンリー。マリレが避け取り押さえる。
「無事?」
「た、立てナイわ!」
「この悪党め。ワシはヘンリー卿だぞ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視局は地下だ。スマホを切るラギィ。
「ありがとう、マリレ」
「エアリは?」
「御屋敷で休んでるって」
机上に血染めのビクトリアンなコスプレw
「で、例のヘンリー卿だけど、やっぱり服は拾っただけだった。和泉パークのゴミ箱にアスコットタイも捨ててあったそうょ。彼は精神的な疾患を抱えてて、どーやら犯人ではなさそうだけど…なぜダニエ・ゴルドはこんな服を着てたのかしら?」
「だ・か・ら!ビクトリア時代からタイムトラベルして来たンだ。ソレで全て辻褄が合うだろ?」
「そうかしら…あぁ不思議だけど、何だかだんだんテリィたんの妄想を否定出来なくなって来たわw」
モニターに赤いスクラブを着たルイナ。
「ルイナ。解剖結果はどう?」
「その前にテリィたん。具体的には言わないけど、そのコスプレを着てたヘンリー卿だけど、カラダにはホームレスならではの色々バッチイものが山ほど付着してたから!」
「わ!」
ぱっと手を引っ込める僕。
「で、そのコスプレの右手の手袋と右の袖から興味深い物質が検出されたわ。硝酸カリウムと硫黄」
「硝煙?銃を撃ったってコト?」
「あれ?ダニエ・ゴルドって、パンティ1丁じゃなかったっけ?」
モニターの中のルイナはドヤ顔。
「パンティ1丁どころか、相手に発砲してるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
芳林パークの芝生の上を金属探知機で走査。断続的に鳴るブザー音の間隔が狭まり、やがて連続音に。
青いウィンドブレーカーを着た鑑識が叫ぶ。
「ヲタッキーズ!何かあります」
マリレが"飛んで来る"。ピンセットでつまむ。
「またアンティーク銃の丸い弾丸だわ」
「被害者を撃ったのと同じ。文字通り丸い弾丸」
「やっぱり…全く同じか」
その瞬間!閃く。マリレを芝生の上に立たせる僕。
「ねぇ!仮に犯人がココに立っていたとして、被害者のダニエはアソコで撃たれたンだょね?」
通行止めの青い柵の真ん中に赤いコーンが置かれ、その外周に黄色い規制線が張られ警官が立哨中だ。
"Police Line Do not cross"
そう描かれた黄色いテープをかいくぐり僕は真っ直ぐスタスタ歩く。呆気にとられるラギィとマリレ。
「2人の間に障害物はなく地面は平らだ」
「犯人とダニエは何かのゲームをしてたってコト?」
「ダニエは19世紀のレトロなコスプレで、彼女も犯人も、恐らく同じアンティークな弾丸を発砲している。きっと同じようなアンティーク銃で…19, 20, 21」
歩数を数えながらスタスタ歩く。
「ルイナの死亡推定時刻は午前0時だっけ?あそこに見える尖塔は、洪水教団の妻恋坂教会だ」
再び黄色い規制線をくぐる。さらに歩く。
「すぐソコだ。きっと教会の真夜中の鐘の音がココまで聞こえたコトだろう…39 40。2人の間の距離は約40歩。コレは、ゲームなんかじゃない。決闘だょ!」
すると、ラギィの顔がパッと輝いて、ホレボレと僕を見上げる。マリレは指鉄砲で僕をバーンと撃つ。
第3章 自由蒸気協会
真夜中の御帰宅。ふと扉の前で思いつき、借りて来た証拠品のアンティーク銃を抜き…大声で突入!
「我が名誉を汚す者は…あ、あれ?」
「撃たないで!」
「シュリ、大丈夫ょ。落ち着いて…何なの?テリィたん!」
御屋敷のソファから、髪も化粧も大乱れのスピアの顔がピョコンと飛び出し火を噴くように怒り出すw
「おいおいおい。ソレはコッチのセリフだ!コレがシュリか?」
「コレって誰?銃を向けないで!」
「あぁゴメン」
慌てて銃口を下げるw
「シュリ。元カレのテリィたんょ。何でカリビアン海賊みたいな銃を振り回してルンだかワカンナイけど」
「お会い出来てウレシイです、テリィたん」
「シュリ。僕が銃を持っているコトには理由がアル。話せばわかるょ男同士なら」
すると、僕とシュリの間に割り込むスピア。
「シュリ、ちょっとごめんね…何やってんのょテリィたん!」
「スピアが、も少し正直に話してくれれば、こうはならなかったんだ!」
「何が言いたいワケ?」
ナゼか僕は悪者になってるw
「僕は何も隠してない。説明スルのはソッチだ」
「元カノは男の子とキスしちゃダメなの?」
「スピアはどう思う?」
唇を噛むスピア。
「シュリに御帰宅してもらったのは、テリィたんに会わせたかったからょ!ソレなのに」
「僕に会わせるために、そんな口の周り…どころか顔中をグロスでベタベタにしてたのか!」
「あの…僕、帰らないと」
実に、気の利く野郎だ。
「大丈夫。いてょシュリ」
「あ?銃が気になるか?失礼。どうぞ、頼む。シュリ。君はいてくれ」
「でも…え?」
アンティーク銃の銃床をシュリに向ける。
「コレ、自由に見てくれ。銃を持ってみるかい?」
「トンデモナイ!結構です」
「…シュリ、後で電話して?」
スピアから脱出命令が出てシュリは遁走モードw
「わ、わ、わかった。銃が、じゃなかった、テリィたんがOKなら…」
「僕はモチロンOKさ」
「テリィたん。僕はスピアを尊敬してます。その点だけは心配しないで。彼女ほど尊敬に値する人はいません。もちろん、テリィたんも尊敬してます」
100点満点だ。この男は当たりw
「ソレは良かったょ。じゃ悪いけど」
出口を指差す。
「はい。さようなら、スピア。テリィたん」
僕のお腹とスピアのスイカ級巨乳の間を器用にカラダをS字に曲げ通り抜けるシュリ。扉から消える。
「良い奴だな。気に入った。挨拶スル順番が違うけど…尊敬の念を知ってる。なぁスピア?」
スピアは明後日を向く。僕は銃床を唇に当てる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"秋葉原マンハッタン"の摩天楼がオレンジ色の朝焼けに染まる。捜査本部の徹夜組の憔悴した面々。
「わかったわ、ありがとう… ヨセミ・ポトキがコレクションしてた全ての銃の弾道検査が終了した。彼が所有するアンティーク銃は、犯行には使われてなかったわ」
「やれやれ。弾道分析をやってた連中は、一晩中アンティーク銃を撃てて、さぞかし楽しかったろうな」
「被害者ダニエの妹さんとヘッジファンドの同僚達は、ビクトリア時代のコスプレや深夜の決闘、東秋葉原82丁目については、何も知らないそうょ」
とりあえずホワイトボードからヨセミ・ポトキの写真を外し全員ギャレーに移動しコーヒーを淹れる。
「何か裏の顔があったンだね」
「そして、そのせいで決闘になった」
「決闘だから、何か名誉を汚されるコトでもあったのかな。きっと異性の問題だ。そーいえば、昨夜、女っぽい名前のスピアの新カレを撃ち殺しそうになったょ」
コーヒーをカブ飲みしながら眉を顰めるラギィ。
「何やってンの?マリレ、エアリは?」
「ミユリ姉様のトコロに御帰宅。動けないみたい」
「誰か!東秋葉原82丁目に何があったかわかった?」
ギャレーでも捜査を進めるラギィw
「未だだけど、被害者ダニエの車内、と言うか、タイムマシン内に、恐らく確定申告に出す予定だったと思われる大量の領収書を発見。その内の1枚、3週間前のメイドカフェの領収書に"トロワ・ケワスとお茶"との裏書きがあった。で、その名前に聞き覚えがあったワケ」
「怒れる"lower tide fund"で最低でも1億円損した人の1人?」
「ブ、ブー」
え。違うの?
「惜しい。1億円損したのは彼女の母親。1.7億が泡と消えた。そのせいで母親は家を失い、離婚して家族は離散、世を儚み2ヶ月前に自殺してる」
「トロワ・ケワスに前科は?」
「母親の死後、バーで喧嘩して4回逮捕されてる」
ラギィのまとめ(ギャレー編)。
「復讐は、小説なら殺しの最後の動機ょ。母親のメンツを潰され、名誉を汚されたと思ったのね。その責任をダニエに取らせたンだわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マジックミラー越しの隣部屋は満員だw
「私がママの遺体を発見しました」
「ママはショットガンで自殺を?」
「はい。掃除が大変だった」
僕もソロッと混ざる。マリレが振り向く。
「ラギィだけ?テリィたんは、今回は取調室には入らないの?」
「YES。ラギィが女子トークのノリで落とす作戦に出てる。男性ホルモンNGナンだ」
「まぁ珍しい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ママの死体を見てショックだった?」
「YES。しかし、なるべく考えないようにしてる」
「わかるわ…でも、その後4回も暴行事件を起こしてるわね」
腹の探り合いが続く。
「酒が止まらなくなったの」
「でも、バーにいた人達は関係ナイでしょ?その人達に貴方は暴行を加えたわ。でも、ダニエならどう?ママに"lower tide fund"を薦め、全財産をなくさせ、自殺に追い込んだ当の本人ょ。責任はアルと思わない?」
「確かにそうだけど…実は、彼女はママには分散投資を薦めてくれてた。そもそもウチの両親は以前から離婚しそうでモメてた。破産は、ママの自殺の原因の1つでしかナイわ。ママは、私のハイスクール卒業をキッカケに離婚を踏み切った。でも、直ぐに家賃もロクに払えなくなって…自殺した」
ヤタラと整理された供述だw
「だから、ダニエに会ったの?」
「YES。ママの口座にお金が残っていないかを聞きに行ったの」
「ソレでダニエは何と?」
悲しげに首を振るトロワ。
「何も残ってない。全部消えたと」
「怒りがこみ上げたでしょ?」
「わかってる。でも、おまわりさんは疑うだろうけど、私は、彼女と出逢って前向きになれた。その後は飲んでないし、生活も安定した。来期からは大学に戻るわ。全てダニエが仕事を紹介してくれたからょ。実は、事件の夜も私は働いてた」
流れるような供述だ。
「ピーマン&ロースト社で?」
「いいえ」
「紹介されたのは、どんなお仕事かしら」
初めて言葉に詰まるトロワ。
「言えません。秘密保持契約を結んでる。クビになっちゃうわ」
「あら?ソレじゃ逮捕されても良いのね?…ところで、その職場だけど。もしかして、東秋葉原の82丁目にない?」
「え?何でソレを?」
動揺するトロワ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原82丁目。古い雑居ビルが猥雑に並ぶ通り。煉瓦壁の鉄扉の前に立つ僕と赤いコートのラギィ。
「真っ赤?勝負コート?」
「だって、秘密クラブなんでしょ?」
「服装チェックとかアルのかな」
鉄の玉を掴んだ手首型のドアノッカーで鉄扉を叩くと小窓が開き…金色のゴーグルをつけた男が出現w
「"80日間世界一周"でフォッグはいくらかけた?」
「2万ポンドだ」
「正解。"地底旅行"で地球の中心まで続く火山の名前は?」
面食らうラギィの背後から援護射撃をしたは良いが確かアイルランドの溶岩洞窟でヴァッツヘットリ…
「えーと?ソレは…」
「万世橋警察署ょ。(どーでも)いいから鉄扉を開けなさい!」
「アキバP.D.?」
バッチを見て、慌てて鉄扉を開ける金色ゴーグルw
「わぉ!一体どーなってるの?」
「スゲェ!」
「"自由蒸気協会"にようこそ!」
大画面に顔面に模した月面に弾丸がぶつかるレトロSF映画が流れ、シルクハットをかぶり大きな自転車に乗って手を振る男。ん?全員がシルクハットを?
「ココは何処?何かのテーマパーク?」
「ビクトリア朝時代のロンドン。時は1892年」
「スチームパンクか?!レトロなものにロマンを求めるサブカルチャーだ。当時、思い描かれていた、クールでレトロフューチャーなデザインのテクノロジーに溺れる世界観だ(ミユリさんの受け売りw)」
ラギィは呆気にとられる。
全員が蒸気仕掛けの機械を装着し、ゴーグルをつけて、真空管が明滅するバックパックを背負ってるw
ヤタラ古ぼっタイ背広とチョッキ。女子は後ろに広いスカートのビクトリアン調ドレスのコスプレだ。
「自由蒸気協会は、スチームパンク同好会です。蒸気推進の自転車"ペニーファージング"に乗ってるのがヲベン会長」
「そうか。見ろょ"時を飛んで"のタイムマシンのレプリカだ!大好きなレトロSF映画だょ。何度も見た」
「ヲベン会長!詩を詠んで!」
ヲベン会長は、フロアに降り立つ。
「"愛しのドリー
君はクローンなのか?
ドリー大歓迎
大勢いた方が楽しいw
メェー"」
ヒドいな。だが、パンクスには大ウケw
「ヲベンさん。すみませんが…」
「会長、その自転車に乗せてください!」
「テリィたん、ヤメて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
クラブのカウンターでヲベン会長の話を聞く。
「ダニエ・ゴルドの件は聞きました。一昨日もこのクラブに来てくれてたのに…」
「でも、お友達とこんなに盛り上がってるトコロを見ると、そんなに悲しんではいないようですね」
「警部。我々はロマンチストです。現実が気に入らズ、好きな世界を作った。ココでは科学は正義。人間の妄想力のオアシス。死にさえ、意味を見出せるのです」
ラギィは、話しの半分も理解出来ない。コスプレに至っては全く理解不可能だ。ヲタクの次元が違う。
「…彼女は、何時に帰りましたか?」
「23時半頃です」
「何処かに寄ると言ってましたか?」
ジョジョに聞き込みの勘を取り戻すラギィ。
「さぁ。特には聞いてません」
「芳林パークに行ったのょ。決闘をしに」
「決闘ってどんな?」
興味がアルのか身を乗り出すヲベン。
「お互いに10歩歩いてから振り向き撃ち合う奴さ。アンティークの銃を使ってる。心当たりは?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
決闘用の銃セットを見せるヲベン。木箱を開けると2丁の銃が向き合って収まっている。弾丸もアルw
「協会の所蔵品です。実は展示用で、元は悪魔退治のハンターのモノでした」
「なるほど。悪魔退治だから銀の弾丸だったのか!黒く変色してるのは、酸化じゃなくて硫化だ」
「うーん最近発砲されてるわ」
ハンカチで持ち、銃口を嗅ぐラギィ。その時…
「アダミ?…アダミ!待て!」
偶然バーに入って来た黒い革コートのスチームパンクスと目が合ったラギィが叫ぶ。アダミ?まさか…
「アキバP.D.!止まれ!」
「何だって?アダミ、君とダニエは…」
「追え!タイムマシンで逃げられたら厄介だ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、クラブの外では、聞き込み中のヲタッキーズのメイド2人がようやくフリースチームに到着だw
「ココで12軒目ょ?エアリ、休んでれば良いのに」
「私は大丈夫。サクサク終わらせょ?」
「また空振りかな。こんにちわ」
ドアノッカーで鉄扉を叩き、小窓にバッチを示す…
「誰か止めて!」
ラギィの声?マリレがバッチを示す真横を何かが飛び出しエアリと激突!路面に押し倒し覆い被さるw
「あぁ!エアリ。まさか、ソンな…」
直後に飛び出した僕とラギィの目の前で…エアリは黒革のコートに覆い尽くされて、手足をピクピクw
「エアリ…首の調子は?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の取調室。アダミ・アタミの取調べ。
「実は…ダニエの決闘の相手は私でした。ダニエが倒れた時、てっきり冗談だと思った。駆け寄れば、彼女は直ぐに起き上がると思った。だのに…ダニエは寝たママで、血だらけで、動かなかった。ユリヲが悲鳴を上げて、私は動転して、ソレで怖くなって逃げたの。彼女のコスプレを脱がせ、パンティ1丁にすれば、スチームパンクは疑われないと思った」
「待って。ユリヲ?ユリヲって、貴方達のイケメン茶坊主の?」
「ダニエは…ユリヲが好きでした」
キッパリ断言するアダミ。
「いつから付き合ってたの?」
「いいえ。ダニエは1度キスをしようとして…でも、彼の方に興味がなかった」
「まさか…貴女の恋人だったとか?」
三角関係?女の勘で突っ込むラギィ。
「未だ恋人と言うワケでは…でも、先週ユリヲとギャレーでイチャイチャしてるトコロをダニエに見られて」
「ソレで決闘で決着を?イケメンを賭けた女同士の決闘だったワケ?ねぇ決闘で決着する以外は考えられなかったの?」
「私達は、ロケットサイエンティストょ?何度も計算して、絶対に安全だと確認した。ダニエも自分で検算して安全性に合意してる!」
あのハイリスクファンドといい、この決闘といい、この人達の計算って、全くアテにならナイと思うw
「あのね。銃で打ち合うのょ?」
「だから、何度も計算した。40歩離れていれば平気なの。私達はロケットサイエンティスト。でも…18世紀の銃はライフリングが施されてなかった」←
「じゃ確認スルけど、決闘の目的は?」
仕事柄、腐女子の恋愛感情に詳しいラギィが確認。
「一般ピープルのイケメンを腐女子に振り向かせるためでした。"覚醒"しない腐女子は秋葉原のゴミ。でも、自分をめぐって決闘する姿を見せれば、2人の内どちらかは、きっと…」
泣き出すアダミ。意外に乙女。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
泣き出すユリヲ。確かにイケメン。別の取調室で、ホボ同時に泣き崩れてる。マリレが出て来て報告。
「決闘の現場にいたのは3人だけだったそうです。呼ばれたのはユリヲだけで、外には誰も決闘のコトは知らないと言ってる」
「家に帰してあげて…狙って撃って、そもそも殺す気は無いって。銃口を向けたのょ?」
「恋で計算が狂ったンだろ」
プロとして失格の表現w
「弾道計算もファンドも…ロケットサイエンティストは算数は苦手みたいね」
「でも、お陰で事件は大団円だ。悲劇だけどね」
「困ったわ。検事になんて報告すれば良いかしら?殺意の有無を見極めないと。また、テリィたんの学生時代の同棲相手に怒られちゃうわ」
僕の学生時代の同棲相手、最高検察庁ミクス次長検事が怒るのは、実は別の理由ナンだがマァいいやw
「謀殺は、殺意があれば終身刑。過失なら数年。そもそも、アンティーク銃ってそんなに正確に撃てるモノかしら?」
「お?確かめる方法は1つアルな」
「あ。ヤメて。テリィたん」
もう遅いょラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
耳ガードをしたアンティーク銃の専門家ベイブ・サドチが銀の弾丸を先込めしている。
彼は、明らかにウレしそうに金具の汚れを拭き、うやうやしく僕とラギィに銃を渡す。
「1発必中だ」
「任せて」
「撃て!」
地下射撃場に銃声が轟く…が、まるで当たらないw
「テリィたん!正面の的を狙え。アンタが撃ったのは、俺の的だ!」
教官が僕の耳ガードを持ち上げ怒鳴る。僕は、大いにうろたえ、再び慎重に狙うがまるで当たらない。
因みに、お隣のラギィも全く当たらないw
「あそこだ。よーく狙って撃て!」
教官が置いた小さな砂袋にアンティーク銃を載せて撃つ。お次は銃の固定機だ。次はレーザー照準器…
全く当たらない(お隣のラギィ含む)w
「ダメだわ」
「完全に"過失"のようだな」
「そのようね。殺人ではなかった。とにかく!コレで事件は解決ょ」
第4章 リスの死でフィナーレ
アキバが萌え出す前から池袋でメイドやバンギャをやってたミユリさんからは色々と学ぶコトが多い。
実はスチームパンクもそうで、早速ゴーグル付き探険帽を借り蒸気駆動の鉄腕装置を右腕に装着スルw
ミユリさんの着付け?を"潜り酒場"のカウンター席から、スピアがニコニコ微笑みながら見ている。
「テリィたん!」
「スピア。僕の大事な元カノ会の会長。この前は悪かった。どーかしてたンだ。さぁハグだ!悪い。待って、アレ?そのまま。ミユリさん!スピアの服が鉄腕の金具に引っかかって…取れたw」
「私こそ。シュリが男子だって話してなかったわ」
謝罪の儀式は終了。本題に入る。
「テリィたん。1つ聞いてもOK?ちょっと恥ずかしいけれど」
「ソレは楽しそうだ。元カレに聞きたいコトがアルなら、何でも聞いてくれ。なるべく元カノが恥ずかしくならないように答えてあげるさ」
「さすが。自慢の元カレだわ」
すると、シャワーのように…
「テリィたん!恋って何?きっと激しい感情だょね。うん。説明が難しいのワカルわ。でも、今まで経験したコトがナイ不思議な感情って気がスル。お腹とか喉とか耳とかに不思議な感覚を覚えるの。ねぇ!コレがつまり恋ょね?シュリと一緒の時にしか感じない感傷。ねぇ!絶対コレが恋だょね?今まで理解出来なかった詩や歌の意味が、とても良くワカルの。今なら、今までにナイ視点で、その素晴らしさを理解出来るの!ソレは、私が恋をしてるからだょね?どう思う?ずっと彼のコトを考えちゃうの。だって、世界で1番素敵な人ナンだモノ。スゴく幸せなの。ありがとう。テリィたん大好きょ!愛してる。やっと、気分が晴れたわ。とても元気になって来た。話し合えてホントに良かったわ!」
一方的に語り、笑い、走り去る(何処へ?) 。呆気にとられる僕。傍らで推しのミユリさんが微笑む。
「話し合えた…のか?ミユリさんは、いつ恋したって思う?」
「確かに歌の歌詞に共感出来た時でしょうか…ところで、テリィ様。私、犯人はアダミ・アタミじゃナイと思うのです」
「え。でも、本人が自白したンだぜ?」
しかし、ミユリさんは思案顔だ。
「本人も自分が犯人だと思い込んでるから厄介ですが、恐らく違います。未だ間に合いますか?」
「この件は、警察とSATOの合同捜査で、ウチにも捜査の主導権が半分アル。だから大丈夫だけど…どーゆーコト?説明してょ」
「アンティーク銃ですが、運動音痴なテリィ様ならともかく、"新橋鮫"が全弾外したのでしょ?ソンな不安定な銃でヲタクに人が殺せるかしら?」
僕のツボを突くミユリさんw
「つまり、陰謀説ってコトかな?!」
「あぁテリィ様、ソッチには逝かないで…でも、仮説ではなく事実を語りましょ?きっと犯人は別にいます」
「え。でも、事件は解決したんだぜ?ラギィは、もう報告書をまとめてるし」
突然まばゆい光に包まれミユリさんは"ムーンライトセレナーダー"に変身!セパレートのメイド服w
「推しが変身したスーパーヒロインと真夜中の公園デートは如何ですか?TO特典ってコトで?」
蒸気駆動の鉄腕がピョコンと挙手w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中で無人の芳林パーク。満開の桜が街灯映え。ロケットパンツで空中を浮遊するセレナーダーが…
「テリィ様。コチラの桜の幹が二股になってるトコロに黒い弾丸を発見しました。リスが即死。スゴい確率ですね」
「え。多分ソレはアダミが撃った銀の弾丸が硫化した奴だ。つまり、彼女が殺したのはダニエじゃなくて公園のリスだった?」
「確かに、リスも裸ですね?パンティ1丁ではありませんが…」
"着地"したミユリさんと現場検証だ。
「ダニエが立っていたのは、ポールの立ったいるココですね?その時、アダミは正面にいた。で、真の犯人は2人から見えない場所に立ってたハズだから、きっと…」
「あそこか。あの満開の桜の横」
「テリィ様。その木に服の繊維がついてます」
ムーンライトセレナーダーが差す先に赤い繊維片。
「この色に見覚えはありませんか?」
「なるほど。ワイン色のベルベットか」
「スチームパンクでは、お約束の色です」
僕はピンと来る。
「凶器がわかったょミユリさん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「え。ミユーリ?久しぶり!」
「"地底旅行"に出て来る火山なら"スネフェルス"でしょ?」
「ビンゴ!」
自由蒸気協会の鉄扉が勢いよく開かれ、常連達の満面の笑みが(ミユリさんを)歓迎スルがバーへ直行w
バーテンダーのトロワが営業スマイル。
「どーやらハマったようですね?ご注文は?」
「そうね、トロワ。犯人をお願い」
「出してもらわなくても、もう見つけたけどね。ママのショットガンをアンティーク銃の銀の弾丸が撃てるように改造したのかい?」
カウンターの中でバーテンダーはトボける。
「え。何の話ですか?アダミが全てを自供したって聞いてますが」
「ソレがね。アレから色々証拠が出て来て、万世橋が念のためにアダミの弾道分析をしたら、殺したのはアダミじゃナイことがワカッタの。しかし、決闘と同じタイミングで、母親のショットガンを撃つとは賢いわね」
「そして、アダミに自分は犯人だと思わせるコトに成功した。午前零時の教会の鐘が鳴った時に撃ったんだろう?」
肩で荒く息をし出すトロワ。やがて…語り出す。
「あの女は、毎晩ココに来たわ。あのふざけたコスプレで。そして、金を湯水のように使いまくってた。ママは死んじゃったと言うのに…こんなコトが許されるの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の中を連行されて逝くトロワ・ケワス。スチームパンクのバーテンダーのコスプレのママだ。
「ムーンライトセレナーダーから提供のあった繊維片からトロワが犯人だと判明したわ」
「トロワは、カウンターで話すダニエ達の決闘について盗み聞きをして、犯行を思いついたンだな」
「アリバイも崩れました。殺害の前後30分間にクラブの中でトロワを見かけた人は皆無」
溜め息をつくミユリさん。
「イケメンを賭けた女の決闘だったのね」
「あと親の仇とね。ロマン溢れる話だ」
「いいえ、テリィたん。コレは悲劇なの」
淡々とした口調のラギィ。ミユリさんが切り出す。
「悲劇的と逝えば…エアリの話は聞いた?」
「え。知らないわ。どーしたの?」
「あぁエアリなんだけど…」
振り返ると、車椅子に頭固定用ギブスのエアリw
「ま、まさか…そんな」
「ウソだろ?タイヘンだ。おい、どーした?」
「私は…終わったわ」
神妙な顔して車椅子を推すマリレ。泣きそうな顔のエアリに駆け寄ると…
全ての防具を脱ぎ捨て大声で歓声を挙げるエアリ。イタズラは大成功だ!
みんなでハイタッチ?
「全部お芝居!ゴメンね、ラギィ!テリィたん!」
「スゴい顔だったね!特にテリィたん」
「テリィ様、すみません」
ミユリさんから謝られる。他の連中は大笑いw
「ミユリ姉様お見事でした!」
「ホントにヲタッキーズときたら」
「まぁ無事で良かった」
エアリの肩を叩こうとしたら睨まれる。
「まだ完全には治ってナイの」
「今、ギブスで固定するトコロょ」
「慎重にね…」
首にギブスを巻く。その時…
「ラギィ!」
聞き慣れない声に、僕達は振り向く。
「ジョジ。なぜココに来たの?」
「メールを見たからさ」
「私から迎えに行くって描いたわょね?」
黒のライダージャケットに青いシャツ。イケメンw
「近くまで来たからさ」
「…紹介してょラギィ」
「ジョジ・キュブょ。コチラはテリィたんと…」
だから誰?とりあえず、敬礼しとくw
「ソレとヲタッキーズのエアリ&マリレ。ヲタッキーズを率いるミユリ姉様」
紹介された順に全員が不審な顔になって逝く。
「どうも諸君」
「諸君?」
「今日は逮捕したかい?」
何?この上から目線?
「毎日してるけど…」
「そっか。ラギィ、行く?」
「荷物を取って来るわ」
イソイソとバッグを取りに逝くラギィ。
「ソレで?君とラギィって…」
「はい?何でしょう?」
「コチラこそ?」
すると、ハハーンという顔のジョジ。
「アンタがSF作家か」
「YES。ソレで…君は?」
「おや?何も聞いてないのか?」
ニヤリと笑うジョジ。
「って何を?」
「ねぇ行けるけど!」
「じゃあまた」
後から声をかけるラギィはヘルメットを肩に担ぐ。
「お先に」
ラギィの肩を抱くジョジ。ジョジの腰に手を回すラギィ。ヤタラと親密だが…残された僕達は思案顔。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。目を瞑って御帰宅スルと…
「スピア、今宵は1人か?目を開けるぞ」
「えぇ大丈夫ょ。テリィたん、昨夜は相談に乗ってくれてthank you。気持ちが軽くなったわ」
「何だって話してくれ。いや聞くだけでもOK」
ソファの隣に座る。
「テリィたん、大丈夫?何だかボーッとしてる」
「いや、スピアのコトに集中してるだけさ」
「良かった。今宵はデートに行きたいの」
またかょ。内心ウンザリする僕。
「もちろん良いさ。逝って来い!」
「違うの。テリィたんとデートに行きたいの。いつだってテリィたんが元カレNo.1ナンだから。あ、ミユリ姉様にはチャンと話を通してアルから」
「ってか、ミユリさんの作戦だろ?」
力一杯トボけるスピア。
「何のコト?」
「義理デートか。上等さ!タマにはお出掛けだ」
「ミユリ姉様がどーかした?」
抱きつくスピア。スイカ級の巨乳をすりつけ、幸せそうな笑顔を浮かべる。僕だって悪い気はしない。
「みんなウソが下手だな」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"スチームパンク"をテーマに、外資系ヘッジファンド勤務のスチームパンクス、上司、アシスタント、真っ先に犯人に疑われる巨漢、アンティーク銃の怪しい愛好家達、スチームパンク愛好家の秘密クラブに集う怪しい面々、スーパーヒロイン殺しを追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公の元カノ、敏腕警部の新カレ騒ぎなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、同じく世界中からのインバウンドでゴッタ返す秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。