第37話 エレイシアの記憶碑
イシュタルの美しい姿勢は憎しみと醜さに包まれ、その瞳から放たれるエネルギーは怒りと蔑視の光を放っています。彼女は新たに生まれた矛を手に、その力でアダムに立ち向かう決意を固めました。
イシュタルは矛を高く掲げ、その力を集中させます。アダムの光と太陽の攻撃に立ち向かいながら、彼女の憎悪と醜悪の力が矛の刃に宿り、それを強化していきます。
アダムの光の矢がイシュタルに向かって飛びますが、彼女は憎悪と醜悪の矛を振りかざし、それが光の矢を吸収し始めます。光と闇が交じり合い、矛の刃が光の矢を切り裂きます。草原には驚異的なエネルギーの波が響き渡りました。
アダムの目に驚きが浮かびますが、彼は決して諦めることはありません。彼の光と太陽の権能は更に強まり、新たな攻撃を仕掛けてきます。イシュタルの憎悪と醜悪の力を持った矛がアダムの攻撃と交錯し、空間には爆発的なエネルギーの波が広がっていきます。
イシュタル:アダム、なぜこんなことを…?
アダム:オリンポス12神の復讐が私の使命だ。この国も、貴様も、私の前に立ち塞がる障害に過ぎない。
イシュタル:あなたは復讐に溺れ、愛を見失ってしまっているのです…。
アダム:復讐こそが私の存在の意味だ。今の貴様なら少しは理解できるのではないか?
イシュタル:あなたの復讐心、私の憎しみと醜さ、私たちの力がどれほどに通じるか、試してみましょう。
二人の力が交じり合い、草原にはまるで宇宙のような光景が広がっていきます。アダムの攻撃が憎悪と醜悪の矛によって跳ね返され、彼の体には傷が付き始めます。同時に、イシュタルもその力の影響を受け、醜悪の感情が彼女を包み込んでいきます。
しかし、その中にも美と愛の力が存在し、彼女の意志が表れます。
イシュタル:本当の強さは愛と美、そして許しにあることを私たちは知っているはず…。
アダムの攻撃が一段と激しさを増し、彼の体は傷ついていきます。しかし、イシュタルの憎悪と醜悪の力が矛を通じてアダムに伝わると、その心の中にも微かな揺らぎが生まれます。彼は自身の感情に向き合い、その中に眠る何かを探ろうとします。
アダム:貴様が言うように、憎悪だけが力ではないことも、私は知っているかもしれない…
アダムの声が少し揺れます。彼は過去の記憶を思い起こし、レアと出会ってしまう前の記憶が刹那します。
イシュタルは微笑みながら続けます。
イシュタル:もし、あなたが内なる闇と向き合い、過去を許し、新たな力を見つけることができるならば…戦いではなく、平和が訪れるかもしれません。
アダムの攻撃が衰える中、彼の目には深い葛藤が映ります。彼は静かに自身の心の中を見つめ、その中にある希望の光を見つけようとします。イシュタルの言葉が、彼の内なる闘いを引き起こす種子を植えるのです。
イシュタルの言葉がアダムの内なる闇に触れ、彼の心に善なる気持ちを呼び覚まそうとしていました。アダムはその混沌とした心の中で、新たな可能性に向き合おうとしていたのです。
アダム:僕は…僕は復讐を…オリン……ポ…ス……??
イシュタルの目に希望の光が宿ります。
イシュタル:あなたの心には変わることができる力がある。もし、私たちが争わずに、共に平和を築く道を見つけることができるならば――っ!?
驚きと衝撃がイシュタルの瞳に宿りました。
アダムの刀が彼女を貫き、彼女の胸に深く突き刺さっていたのです。
彼女の声が震えながら響きます。
イシュタル:なぜ…?
イシュタルの体が静かに後ろに倒れ、草原の地面に倒れ込みます。彼女の美しい姿勢が血に染まり、その瞳には驚きと痛みが宿っていました。
アダムは醜い笑顔に歪む表情を浮かべながら、刀を抜き取ります。
アダム:平和な道など、存在しない。私の使命は変わらない。
愚かにも貴様は貴様の言葉が私を説き伏せたと思ったのだろうが、イアペトスとメーティスの権能でそう思わせたに過ぎない。貴様らオリンポスの継承者の言葉など私にはその雑草のさざめきにすら及ばない。
イシュタル:(あぁ…だめ……。彼らがくるまで……守らないと…私が……)
イシュタル!!!
ナンフルサグ、シン、イシュクルが同時に叫びます。
イシュタル:(あぁ…私は……間に合ったのですね…。)
イシュタルは思念で三人に話しかけます。
イシュタル:すみません、私はここまでのようです。私のアダムとの戦いの記憶をあなたたちに伝えます。どうかアダムを…。彼は危険過ぎます……。共存は…できないでしょう……。
シン:イシュタル!駄目だ逝くな!!お前が逝ったらエレイシアの民はどうなる!?
ナンフルサグ:イシュタル…。後は私たちに任せて、安心するといい。だが、シンの言うとおりだ。
この国は君にしか守れない。君の権能で保っているのだから君が逝ってしまうと国もまた立ち行かなくなってしまう。
イシュクル:イシュタル。エレイシアを記憶碑にするのだ。私たちが君の大切なエレイシアをクリスタル神殿まで持ってくと誓おう。
イシュタル:えぇ、そうですね…。私は私の愛する民たちを永遠に愛で続けましょう…。
私もまた記憶碑の中であなた方が勝利を得る時を待つことにします。どうかお願いします…。
イシュタルの輝く光が草原に広がり、彼女の存在が風に溶けていきました。その光がエレイシアの国中に届き、人々の心に温かな感覚を運んでいきます。草原から始まったこの闘いの結末が、新たなる始まりをもたらすことを、彼らは感じていたのです。
エレイシア中の人々が、その輝く光に誘われるように集まり始めます。光が国を包み込む中、イシュタルの存在が彼らの心に届き、彼女の愛と美の力が彼らを包み込んでいきます。人々は次第に、イシュタルの意志に導かれるように、一つとなって集まり始めます。
「イシュタル様の愛が私たちを包む。イシュタル様と共に記憶碑となることを、心から受け入れよう。」一人の声が街中に響き渡り、それが次第に広がっていきます。人々はそれぞれが自身の想いを胸に抱きながら、イシュタルの意志に向かって歩み始めるのです。
エレイシアの中心広場には、人々が集まり、その手を繋ぎ合いながら、一つの輪を形成しています。彼らの心がイシュタルの愛に触れ、記憶碑となる覚悟が強まっていきます。愛と美の力が彼らを包み込み、一つの意志となって広がっていくのです。
その集合意志が一つの輝く光となり、エレイシア全体を包み込んでいきます。そして、その光が次第に高まり、イシュタルの存在を讃える賛歌が街中に響き渡ります。
イシュタルの輝く存在が消えた草原から、新たなる愛と記憶の結晶が生まれ、エレイシアの記憶碑が誕生しました。
月の光に照らされ、一層美しく輝いていたのでした。




