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源氏物語ってこんな話だったんだ  作者: 紫月ふゆひ
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葵巻~喜びと悲しみと~

『このようなことがあった後は、内裏にも院にも、ほんのしばらく参る時さえ気持ちが落ち着かず、姫君の面影が浮かんで恋しいので、不思議なものだと、我ながら思われる。

 通っていらした方々からは恨みごとが届くので、気の毒とはお思いになるが、新妻(紫の上)のことが気がかりで、他所へ通うのがとても億劫なので、ご気分がすぐれないふりをして、

「世の中がひどく悲しく思えます。この時期が過ぎてから、お目にかかりましょう。」

とだけお答えになりつつ日々をお過ごしになる。


 今后(元弘徽殿女御)は、御匣殿(みくしげどの)(朧月夜)がまだこの大将(光る君)にばかり心惹かれていらっしゃるのが気に入らず、父右大臣が

「あのように高貴で重んじられていた方(葵の上)もお亡くなりになったのだから、そのような関係になったとしても、別に残念なことではなかろう。」

などとおっしゃるので、とても憎いと思い、朧月夜を入内させようと決意を固められる。

 光る君も、並の方とはお思いにならなかったので、入内は残念と思われたが、さしあたっては他の女性に気持ちを分ける余裕もなく、懲りてもいたので、

「何の問題があろう。これほど短い人生なのだから。このまま落ち着くとしよう。人の怨みは負わないことだ」

と思われた。


 あの御息所のことはたいそうおいたわしく思われるが、

「生涯の伴侶としたら、必ず気詰まりに思うにちがいない。今までのように大目に見てくださるなら、しかるべき折節にお話を分かち合う人とはなるだろう。」

など、完全に諦めようとはなさらない。


 この姫君(紫の上)を、

「どういう人と世間が知らないのは、身分の低い人間のようである。父宮にお知らせしよう。」

とお考えになり、広く人にお知らせにはならないが、御裳着(成人式)のことを並々でないさまにご計画なさる。そのお心配りは類のないものだが、女君(紫の上)はすっかり嫌がりなさって、

「長年、万事お頼み申し上げてお慕いしていたのは、情けない心であったこと。」

と、悔しくばかりお思いになって、はっきりと御顔をあわせることもなさらず、御冗談をおっしゃっても、ひどく苦しく嫌なものに思ってふさぎ込んでしまわれて、今までとはまるで違うようになられたその御様子を、おもしろくも愛おしくもお思いになる。

「長年思ってきた甲斐もなく、うちとけてくださらない態度が、残念なことですよ。」

と怨み言を申し上げているうちに、年も改まった。』



・・・どこをどうツッコミましょうかね、光る君。

一人でご満悦だったり、勝手なことを考えたり。

紫の上の反応は、今までの女君と違いますが、これが普通だと思います。当時の一般的な男性は、光る君と同じように感じたかもしれません。期待したのは朧月夜の君のような反応でしょう。きっと、帝に入内させるために余計な教育が行き届いた結果だと思います。その認識がおかしいです、ということを、女性作者の紫式部はここで書いてみたのかもしれません。

光る君が最も愛した妻とされている紫の上ですが、結婚生活の始まりは、ロマンチックさのかけらもないですね。光る君が一方的にときめいているだけで、紫の上は恋愛感情皆無。あらすじだけ読んだときには分かりませんでした。



『元旦は、例年のように、院にお参りになって、内裏、東宮などにもお参りになる。その後、左大臣邸へおいでになる。

 左大臣は、新年も祝わず、昔の事をお話ししながら物寂しく悲しいと思っていたところ、こうして光る君がおいでになられたので我慢しようとするものの、耐え難くお思いになっている。年齢を重ねられたせいであろうか、光る君は堂々とした雰囲気までも加わり、以前よりさらに美しくお見えになる。

 亡き方(葵の上)のお部屋にお入りになると、女房たちも涙を抑えることができない。若君をご覧になると、すっかり成長されて、にこにこと笑うのも、しみじみと胸を打つ。目や口元も、まったく東宮と同じ様子であるので、人が見咎めるのではないかと思われる。

 調度品なども生前のままで、衣掛の装束などもいつものように掛けられているのに、女君の衣だけがないのが、物足りなく見栄えがしない。


 大宮は、「今日は強いて堪えているのですが・・・」と言いつつ、

「ここ数ヶ月は涙で霧がかかったようで、いつものように仕立てました御装束も、色あいが悪く御覧になられるのではないか、と思いますが、今日だけは、やはりこの粗末な御衣にお召し替えになってください。」

と、たいそう手を尽くされた御衣裳を差し上げる。必ず今日差し上げなくてはと思っていた下襲は、色も織り方も特別であるのを、ご厚意を無下にしてはならないと、お召し替えになる。

 もし来なかったら、左大臣家の人々は残念に思っただろうと、心苦しく思われる。


「あまた年 今日改めし 色衣 着ては涙ぞ ふる心地する

(長年、正月ごとに着替えた晴れ着を、本日また着てみると、涙が流れ落ちる心持ちがいたします)

 悲しみを抑えることができません」

「新しき 年ともいはず ふるものは ふりぬる人の 涙なりけり

(新しい年であっても、降るものは、年をとった私どもの涙でございますよ)」


 言い尽くせない悲しみなのであった。』



喪が開けて新年を迎えても、数ヶ月程度で悲しみが癒えるはずもありません。

光る君、最近浮かれてたけど、このへん忘れませんでしたね。

寝込むほど落ち込んでいる中、もう婿ではない光る君に衣裳を用意した大宮もすごいと思いますが、元旦にきちんと挨拶に行った光る君も偉いです。こういう気遣いは、できるんですよね。

・・・惜しい。


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