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源氏物語ってこんな話だったんだ  作者: 紫月ふゆひ
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紅葉賀巻~藤壺の宮立后~

『さてその後、事あるごとに、この一件は言い争いの種となる。

 典侍(ないしのすけ)が依然として色めいた恨み言を言ってよこすのを、困ったことだと光る君は思い続けていらっしゃる。

 頭中将は、妹の君(葵の上)にも打ち明けない。ただ、何かのときに持ち出してからかってやろうと思っていた。


 高貴な方々からお生まれの親王たちさえ、帝のご寵愛がこのうえないので、光る君のことは避けていらっしゃるのに、頭中将は、決して負けまいと、些細なことも張り合おうとなさる。

 左大臣の御子の中で、この君だけが姫君(葵の上)と同腹であった。大臣とはいえ、帝が格別にご信頼なさる人と皇女から生まれて、きわめて大切に育てられたのである。光る君は帝の御子というだけで、自分は決して光る君に劣る身分ではない、と思うらしい。人柄も備わるべきものがすべて整って、何事においても理想的でいらっしゃった。

 このお二人の競争は、おかしいものであった。』



仲良しですね。

頭中将の考えは傲慢なようにも見えますが、光る君にとってはありがたい存在ではないでしょうか。誰もが遠慮して距離をおいたら孤独ですから。

ただ、頭中将は光る君より四歳以上年上のはず。ちょっと大人気ないですね。妹君はクールなのに。


さて、后というのは、太皇太后、皇太后、皇后(中宮)の三名のみ、ということは以前書きました。

どうやら現時点で后はいなさそうですが、ここで中宮が立てられることになります。



『七月に后が立てられるようである。源氏の君は、宰相になられた。

 帝がご譲位をお考えになられて、この若宮を次の東宮にとお思いになられるが、御後見をなさるべき方がいらっしゃらない。母方はみな親王であって、皇族が政務を執ることはできないので、せめて母宮だけでもしっかりした地位におつけして、若宮のお力にと、帝はお思いになっていた。


 弘徽殿の女御がひどく動揺なさるのも、当然である。しかし帝は、

「東宮の御世が近いのですから、貴女が皇太后の御位につかれることは疑いないことです。安心なさい。」

と申し上げる。

 東宮の御母として二十余年におなりの女御(弘徽殿女御)をさしおいて、先に他の方を后にお立てするのは難しいことだろうと、世間の人も穏やかならず申し上げていた。


 藤壺宮が后として初参内なさる夜の御供に、宰相の君(光る君)もお仕えする。

 同じ宮と申し上げる中でも、后腹の皇女で、玉のように光り輝いて、その上比類ない帝のご寵愛さえ得ていらっしゃるので、人々も特別な思いでお仕えしている。

 まして、光る君の抑えようのない御心は、藤壺宮がいよいよ手の届かない存在になるようで、落ち着かない。


 尽きもせぬ 心の闇に 暮るるかな 雲居に人を 見るにつけても

(尽きることのない思いで何も見えなくなってしまいましたよ。はるかな御位にいる貴女を仰ぎ見るにつけても。)

とだけ、独りで口ずさみつつ、しみじみと切なく思われる。


 若宮は成長なさるに従って、光る君と見分けがたいようにおなりなのを、宮はたいそう苦しく思われるが、気づく方もいないようである。

 光る君と若宮は、月と太陽が空に並んで輝いているようなものだと、世間の人も思っているのだ。』



光る君と若宮が親子ではなく兄弟だったとして、瓜二つなのはおかしいことじゃないと思うのですよ。お母さん同士がそっくりさんなんですから。

でも藤壺宮はうしろめたいので、ずっと苦しい思いを抱えていくのですね。ここまでくると、なぜ女性側だけ・・・と疑問に思います。光る君には、叶わない恋の嘆きはあっても罪悪感がないんですよね。


さて、藤壺宮が中宮になると同時に、光る君も宰相になりました。宰相って、王様に次ぐナンバー2のイメージありませんか?現在なら総理大臣を指しますよね。

紛らわしいことに、昔の日本は違ったんです。

この頃の行政の最高機関は太政官(だじょうかん)大臣(おとど)納言(なごん)・参議が政を行っていました。参議の別名が宰相で、八人いたんです。ナンバー2ではありませんでした。

でも、四位以上の有能な人が任命される官職で、若干十九歳で宰相になるのは、いくら皇子でもやはりすごいことなのでしょう。


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