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源氏物語ってこんな話だったんだ  作者: 紫月ふゆひ
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紅葉賀巻~様々に暮れる冬~

『藤壺の宮は、その頃ご実家に退出されたので、光る君は、例によってお逢いする隙をうかがうのに夢中で、足が遠のいている左大臣邸は騒めいていた。そのうえ、あの若草の君を見つけ出してお引取りになったのを、「二条院に女性をお迎えされたそうだ」と誰かが申し上げたので、ひどく不愉快に思っている。


(内々の事情をご存知ないから、そのように不愉快に思われるのも無理はないが、女君の性格が素直で、普通の人のように恨み言をおっしゃるのなら、自分も包み隠さずお話しするのに。思いもよらない取り方ばかりされるのが不愉快なので、しなくてもよい浮気事もしてしまうのだ。

 女君には、不十分なところも、我慢できないような欠点もない。誰よりも先に結婚した御方なので、格別に大切に思っているのだが、その気持ちをまだご存じないのだろう。いつかは思い直してくれるだろう。)

 落ち着いていて軽率でない女君のご気性を考えると、そのうちにはと期待できる点では、特別なのであった。』



知らなかった。

光る君は葵の上をそんな風に思っていたんですね。今までの流れの中で、特別大事に思っているなんて読み取れませんでしたが。

でも浮気の原因は相手に押し付けるんですね。それはダメでしょう。甘えた子供のようです。

あと、葵の上が素直だったとしても、包み隠さず話してしまうのは、どうかと思います。藤壺さまのこととか、若紫ちゃんのこととか、完全に愛想をつかされる案件ですよ。



『幼い姫君は性質も器量もたいへん良く、馴染んでくるにつれて、光る君にすっかり懐いておそばから離れないでいらっしゃる。

 光る君は、しばらくは邸内の者たちにも、この子を誰とは知らせまいと思われて、そのまま離れた対屋(たいのや)におくことにされた。調度品などをこの上なく立派に整えて、ご自身も頻繁に訪れて、様々なことをお教えし、手本を書いて習わせながら、まるで、他所で育った娘をお迎えされたように思っていらっしゃる。

 政所まんどころ家司けいしなどを始め、生活に必要な物を整える係の者を特別につけて、不便がないように仕えさせるのだが、惟光以外の人は、訳がわからないと思っていた。

 だからあの父宮も、このことを耳になさることは、ないのであった。


 姫君は、やはり時々、尼君を恋しく思い出されることがあった。

 君がいらっしゃる時は気が紛れるものの、夜はあちこちの女君の元に通われるので、日が暮れて出かけようとなさると後を追う時もあり、光る君はたいそう可愛らしいとお思いであった。

 ニ~三日宮中にいらしたり、左大臣邸にいらっしゃる折は、姫君はひどくふさぎ込んだりなさるので、かわいそうで、外出をするのも落ち着かなく思われる。


 僧都は、光る君と姫君がこのようであるとお聞きになって、妙な感じではあるが、実にうれしいことに思われた。

 亡くなった尼君の御法事なども、光る君は丁重に弔問なさった。



 藤壺宮がお下がりになっていらっしゃる三条邸に、ご様子を知りたいと思って参られると、命婦(みょうぶ)、中納言の君、中務(なかつかさ)などといった女房たちが応対した。他人行儀になさるものだと思われたが、気持ちを鎮めて、当たりさわりのない世間話をなさっているうちに、兵部卿宮が参られた。

 宮は、この君がいらっしゃるとお聞きになって、対面なさる。

 宮は、たいそう風情ある様子で、色めいた感じで物柔らかでいらっしゃるので、光る君は、この御方を女として見れば面白いに違いないと、人知れず御覧になるが、あれこれと親しみ深く思われて、親密にお話をなさる。』



若紫ちゃんのお父さんで、藤壺様のお兄さんでもあるから、なんかぐっと親しみを感じるよ!ということらしいですが・・・

娘を連れ去っておいて、お父さんを前に素知らぬ顔でいるのも、勝手に親近感もつのもどうかと思いますが、「この人が女だったらなあ。」とか考えてるのは、不謹慎としか思えません。

現代のお父さんたちは、これ、どう感じるでしょうね。



『兵部卿宮も、この君のご様子がいつもより格別に親しげなのを、とても素晴らしいとご覧になって、婿になっているなど思いも寄らず、この君を女として見たいものだ、と色めいた御心に思われる。』



あんたもか!

何なのこの人たち!

兵部卿宮(おとうさん)への同情心が薄らぎました。



『日が暮れると、兵部卿宮が御簾の内にお入りになるのを、うらやましく思う。昔は帝のおはからいで、藤壺宮のすぐ近くで直接ものを申し上げたのに、今はひどく他人行儀でいらっしゃるのが辛く思われるが、どうしようもないことだ。

「たびたび参上すべきなのですが、特に用事がございません時は、自然と怠っておりました。ですが、しかるべきことなどは、仰せ言をいただきますとうれしく存じます。」

など、きまじめに申し上げて、お下がりになった。


 命婦も取りつぎようがなく、藤壺宮は以前よりもいっそうお辛そうで、こちらが気詰まりなほどに気を許さないご様子なので、何のかいもなく月日が過ぎていく。

 はかない縁であるよ、とのお悩みは、光る君も藤壺宮も尽きることがない。』



藤壺宮が里下がりしているのは、そろそろ出産に備えてのことだと思われます。

そんなときに光る君は何がしたくてうろついているのでしょう。

妊婦さんに心労かけてはいけませんよ。



『少納言の乳母は、

(思いがけない幸運を見るものですよ。これも故尼上が、姫君をご案じになって、朝夕お祈り申し上げた、仏の御功徳だろうか。)

と思う。

(左大臣家の姫君は、たいへん高貴な方でいらっしゃるし、光る君があちこちで多くの女性と関係をお持ちであることは、本当に姫君が大人におなりの時には、厄介なことになるのでは・・・)

とも思われる。しかし、このように格別に扱っていらっしゃることは、たいそう頼もしい感じがするのだ。


 母方の服喪は三ヶ月ということで、月末には喪服ではなくなったが、尼君の他には親もなくお育ちになったので、派手な色ではなくて、紅、紫、山吹の無地の御小袿などをお召しになっている様子は、たいそう新鮮でかわいらしい。


 元旦の日、男君(光る君)は、朝拝に参上なさる前に、姫君のところへお寄りになった。

「今日からは、大人らしくしているかな?」

と、ほほ笑んでいらっしゃるさまは、たいそうご立派で、魅力的でいらっしゃる。

 姫君は、いつの間にか、人形を広げて、忙しくしていらっしゃる。

 三尺の御厨子ひと揃えに、さまざまな品を並べて、また、小さい家をいくつか作ってさしあげたのを、部屋中に広げて遊んでいらっしゃる。

追儺(ついぶ)(鬼祓い)をしようといって、犬君(いぬき)がこれを壊してしまったので、直しているのです。」

と、とても大ごとのように思っていらっしゃる。

「本当に、ひどく思慮の足りない人だね。すぐに直させよう。しかし今日は言葉を謹んで、泣きなさるな。」

といって、お出かけになられるご様子は、周囲が圧倒されるほどご立派である。女房たちとともに姫君も立ち出でてお見送りになり、雛人形の中の光る君を、参内などさせていらっしゃる。

「せめて今年からは、少し大人らしくなさってください。十歳もすぎた方は、雛遊びはいけませんのに。このように夫君をお持ちになられたのですから、奥方としてふさわしく、お淑やかなところを御覧に入れなければなりません。御髪をお直しする間さえ、嫌がられるのですから・・・」

などと、少納言は申し上げる。

 お遊びにばかり熱中されているので、気恥ずかしいと思うように申し上げたのだが、姫君は、

(それでは、私は夫を持ったのね。女房達の夫は醜いけれど、私はこのように美しく若い人が夫なのだわ。)

と、今になってお分かりになるのだった。やはり、お年を一つ加えられたからなのでしょう。


 このように幼いご様子が何かにつけて目立つので、邸の中の人々も不審に思ったが、こうも世間離れした添い臥し(妻?)であろうとは思いもよらなかった。』



尼君が亡くなったのが、九月二十日ころだったと思います。十月から十二月にかけて服喪期間で、大晦日に喪服から普通の服に変わったのですね。ちょうど年が改まる直前のタイミングで、新たな気持ちで新年を迎えることになるのです。

その頃に、末摘花さんから光る君へ、あの衣服が届けられたりしています。

そして年が明け、光る君は十九歳、若紫ちゃんは十一歳になりました(推定ですが)。

一つ年をとったと言っても、急に変われるわけではありません。

ただ、たしかにおままごとって、十歳くらいだともうしないですね。

当時は十一歳過ぎると、成人する人もちらほらいました。だから大人らしくと乳母殿は言っているのですが、現代感覚で言うなら、それは無理ってものでしょう。

一応ここで、光る君は親代わりでも遊び相手のお兄さんでもなく、夫だと教えています。正確にはまだ夫婦ではなくて、そうなる予定、なのですが。


乳母殿、もっとしっかり教えてあげた方がいいと思います。

若紫ちゃん、おままごとの延長のようにしか考えてない気がしますから。


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